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pueblo ― 村 ―

 かつて、ヨーロッパの大半を影響下に置いたフランス皇帝ナポレオンは、大航海時代以降のスペインの凋落を揶揄して「ピレネー山脈から西は欧州ではない」と言ったとか。



 私がその村に対して最初に抱いた印象は、


「スペインの地方町村のライフスタイルって、中世からほとんど変わってないんじゃないのか」


 というものだった。



 さて…… ここは一体、何処なのだろうか。



 ヒッチハイクを乗り継いだ末にたどり着いたのはスペインの北西部、ガリシア州沿岸部のうら寂れた漁村。


 いま私は、その中心部、小さな教会前の広場にどさりと荷物を下ろした。正直、こんなところで降ろさなくても……と、さっきのドライバーを恨めしく思う。


 視線を向けて確認するまでもなく、海が近い。眼前を吹き抜ける冷たく湿った風から、潮が強く匂っている。



――――――



 教会前の広場から海へと下る舗装路を視線で辿ってゆくと、ほどなく小さな船着場が目に入った。


 数隻の漁船が所在無げに波に揺れている。

 残りは漁に出ているのだろうか。



 周囲に視線を走らせる。


 十数戸の古びた民家が、教会前の広場を囲んで肩を寄せ合っている。


 教会の背後は小高い丘になっていて、その中腹に長方体の石が雑然と並んでいるのが見えた。墓地だろう。



 海風になぶられながら、ただ黙して林立する石群。



 その光景は、旅行地図に決して載ることのないこの漁村に、いかにもふさわしい。


 私は暫時、視線を引き剥がせずに佇んでいた。

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