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8,俺の宇宙船、装甲は岩石でした

 病院船の艦内全体でけたたましい警報音が鳴り響く。


「大丈夫、ですか?」


 俺は起き上がり、二人の無事を確認する。


「あっ、 はい。 私は大丈夫です」


「すまぬ。 しかし、貴殿。 まるで予測していた様に見えたが?」


「え? あ、いや、その……」


”旦さん気い付けてや! 出て来るで!”


 俺はパラスさんの疑問にどう答えていいか解らず戸惑っていると、ましてもノアから注意が頭の中に発せられる。


 ノアの忠告通り、揚陸艦の隔壁ドアが開かれ中から武装したレプト兵が十人とその後からカメレオンの見た目の偉そうなレプトが出てきた。


「いやいや、こんにちわ! 貴方がサトル=アスカですな! 私はグラメルと申すしがない地球方面軍司令官です! 貴方を迎えに参りました!」


 グラメルとか言うレプトの自己紹介でローゼスさんとパラスさんの顔が真っ青になる。


「なっ! レプトの司令官が何故!?」


「串刺しグラメル!? 貴様あぁぁぁ!!」


「ちょっ!? パラス止めなさい!!」


 パラスさんはローゼスさんの静止を振り切り白いコートを脱ぎ捨てながらグラメルに突撃する。 その姿はローゼスさんの際どいハイレグボディースーツを鎧にした感にだった。 そのパラスさんはグラメルを守る兵士達を何処から出したか判らない剣と盾を持って兵士達を薙倒す。


「おやおや! 貴方様はリトル・ジャイアント最後の生き残り。 姫騎士ヴィオーラ=パラス様ではありませんか! これはこれはお懐かしい!」


「良くもぬけぬけと! 一族の敵、打たせて貰う!」


 何やら因縁がある二人。 しかし、グラメルは飄々とした態度でパラスさんの気迫と怒気を受け流す。


「いやはや、すみませんな! 時間がないもので貴方の相手はまた後日!」


 そう言うとパラスさんの相手は部下の兵士に任せて俺の元へとジャンプ。


「退いて頂こう!」


「きゃっ!」


「ローゼスさん!」


 着地した勢いを利用し、ローゼスさんを腕一本で弾き飛ばした。


「ささっ! アスカさん、此方へ! 我々、RL帝国は貴方を歓迎しますぞ!」


 グラメルは特徴的なカメレオン突き出た目を忙しなく動かしながら俺に近づく。


「な、何なんだお前は! こんな事してHES連盟が黙ってないぞ!」


「ンフフ! 我々の身を案じて下さるので? しかし、ご心配には及びません! HES連盟は我々RL帝国を糾弾できませぬ!」


「!? そんな事!!」


「あるんですね~。 なにせ、貴方は現在、何処にも所属していない宙ぶらりん状態。 その為、あなたはHES連盟及び我々RL帝国との交渉でどちらに帰属するのか決められるのですが――HESはその事を我らRL帝国に知らせず、交渉権を取り上げたのです! 何と卑劣で卑怯なHES連盟!」


「俺は日本人――」 


「残念ながら、お国は貴方の身を既にHESに売り渡しておるのです! いやはや、お可哀そうに!」


 グラメルは頭を横に振って同情を装う。


 俺はローゼスさんに顔を向けるが、ローゼスさんは顔を逸らす。


「そんな……」


 俺は茫然自失し、体の力が抜けてその場にへたり込む直前――


『旦さん! アンタにはウチがついとる! 例えアンタが国に裏切られて行き場なくしても、ウチがアンタの居場所になってアンタをずっと愛したるさかい、しっかりしい!』


 ノアが俺を叱咤激励してくれた。 俺はノアのお陰で折れそうになった心を何とか持ち直す。


「と言っても、この状況でどうすればいいんだか……」


 苦笑いでノアに尋ねる。 それにノアが答えてくれた。


『大丈夫や。 アストラーシュ呼んださかい直ぐに来るで。 それで外宇宙に脱出や! 旦さんの私物はウチが全て回収しとるし、水と食料の備蓄も予め用意しとるさかい心配無い! 大船に乗ったつもりで安心しい!』


「おお! お前、マジいい女!」


『惚れ直したか?』


「おう!」


『フフフ……。 おっ、来たで!』


「――て、おい!」


 確かに飛んで来た。 だがそれは、どこからどう見ても岩の塊だった。


『言いたい事はウチにも解る。 でも、しゃあないやろ。 クアルーンの修復作業の所為で四十億年以上地中で寝てて全くメンテ出来んかったんやから』


「にしても、これはないだろう……。 こんなんで大気圏突破できるのか?」


「見た目はこんなでも中央ユニットは無事やから問題ない。 ほな、行くで」


「ちょっ!? うわっ!?」


 一瞬、体が浮いたかと思ったら、別の場所に居た。 どうやらアストラーシュとやらの中に転送された様だ。 其処は簡素な作りの座席や計器類が並んでいて、岩の外見に比べて中は新品同然だ。


  ノアがハンドボールから出て説明してくれる。


「此処がアストラーシュの艦橋や。 操縦や制御はウチがやるから旦さんは何もやらんでいいからな。 ほな、こんなとこさっさとオサラバや」


 ノアはこんなとこというが俺にとっては生まれ育った故郷だ。 正直、離れがたい。 しかし、俺の原因でこんな大騒動に発展した以上、此処には居られない。 何より世話になった両親にこれ以上の迷惑は掛けたくない


 そんな事を考えているうちにあっという間に宇宙に出た。 だがしかし、俺達の眼前には行く手を阻む無数の大艦隊が鎮座していた。


「あ、あかん。 どないしよ」


「どうした?」


「ウチとアストラーシュはHESやRLの奴らが宇宙超文明いう文明築いた超高度知性体がおった時代に作られたんやけど、そん時にウチと同じ設計思想で建造された軍艦がおる。 中でもあの金ピカに輝いとる航空戦艦は厄介や。 兵装が無いウチじゃあ余裕で勝てへん。 逃げるんも足速い駆逐艦やフリゲート艦に追いつかれてまうし」


「じゃあ、どうすんだ?」


「諦めよ」


「おい!」


「冗談や。 でも、これ突破すんのに旦さんの力が必要やねん」


「俺の力?」


 はて? 俺には戦闘力は無いぞ。 自慢じゃないが喧嘩ですら一度も勝てた試しなんて無いし。


「せや。 旦さんと同化したクアルーンはこの船アストラーシュの付属戦闘ユニットなんよ。 旦さんがその能力使って道開けてくれたら何とか逃げ切れる」


 ノアに初めて会った時、確かそんな話を聞いた様な気がするけど。


「でも俺、使い方が解らんぞ?」


「大丈夫や、使いたい思たら使える筈。 現にミスティさんらを庇うた時に旦さんが床に固定されとった邪魔なテーブルへし折って蹴り飛ばしたやろ? そん時の要領でやればいいねん」


「……わかった、やってみる」


 何事も挑戦だ! 熱血な元テニスプレーヤも言っていた! ”何事もやれば出来る! 気合だ!”と。


「ほな、外に出すで」


「外に出すって、ちょっ――!?」


 いやいや! 流石に宇宙空間に放り出されたら気合があっても軽く死ねる! 宇宙服プリーズ!


 そんな俺の切なる願いをノアは無視して生身のまま俺を宇宙空間に転送した。

 

「ぐっ! くる……し…くない?」


 あれ? おかしいな? 俺、普通に息出来る。


”旦さんはクアルーンと同化しとるから裸で宇宙空間に出られるで”


 頭の中でノアの声が響いて説明してくれる。


「そういういう事は先に行ってくれ……たくっ!」


 でも流石に宇宙空間でマッパで放り出すのは止めて欲しい。 俺は露出狂の変態ではないのだから。


 さて、もう一つのギフト《ボット》を試そうか。 クアルーンというあの青く光ってたハンドボールの能力は戦闘方面らしいから俺にも何らかの戦う力があると思いたい。 俺は深呼吸して心を落ち着け精神を集中する。


「《ボット》!」


 ギフト名を叫び、ポーズを取った! ……しかし、何も起こらなかった! だよね~! そんなんで使えたら苦労しないっつーの! ただ一度やってみたかったんだよね、変身の掛け声みたいなの。 宇宙空間は声出しても空気がないから聞こえないし、此処じゃあノアにも聞こえないだろ。


”……旦さん、こんな時に余裕やな。 でも、流石にそれは恥ずいから止めて。 ウチの方が居たたまれん”


「げっ! 聞こえてたの!?」


”今更やん……。 ウチと旦さんはクアルーンを通して繋がっとるからな。 離れとっても会話出来るんよ。 それよりそろそろ本気で真面目にやらな手遅れになるで”


「はい、すみません……」


 俺は気を取り直して精神を再び集中。 おや? これはなんだろう? 俺の中に何かあるのを感じる。 これがクアルーンだろうか? 俺は俺の中にあるクアルーンに触れてみる。 すると頭の中に様々な情報が流れてきた。 その中の一つ、ボットについて記述された解説を見る。 どうやらこの解説文に触れた事で俺は《ボット》の能力を開放し使用可能になる様だ。 俺は《ボット》の能力を使った。


生身の体が機械の体に入れ替わる。 最初は指先、足先、頭の天辺から徐々に体の中心に向けて変換されていく。 体が機械の体に完全に変わった時、俺の全長は十mくらいの大きさになり、声にエコーが加わった。 これについて問題はない。 問題があるとすれば――


『うおっ! なにこれ! フレーム剥き出しで火花バチバチーって!』


 体がロボの内部骨格――装甲が施されていないフレーム剥き出しでしかも電装部品が所々火花を上げてショートしている。 なに、コレ!?


”あ、多分それクアルーンが直りきってないんやわ。 でも大丈夫! 旦さんやったらやれる!”


『やれねえよ! 何だよ! この壊れかけの状態! 耐久力一ポイントであと一撃攻撃喰らったらお陀仏じゃん! 無理ゲーやん!』


”はいはい、文句は後で聞くから。 取り敢えずその状態で使える兵装確認して”


『兵装と言っても……スラッシャー?』


 視覚に投影されている兵装の全てにバツ印が付いていた。 あ、いや一つだけグリ-ンで表示されている兵装が在った。 《スラッシャー》。 手を手刀の形にして使う近接武器で、ある程度間合いが離れていてもブレードを飛ばして攻撃できるみたいだ。


”スラッシャーか……離れとる相手には威力が低いんよね。 でもしゃあない。 背に腹は変えられん。 スラッシャーで攻撃対象をウチが決めるからそれ攻撃して。 標的は逐次旦さんの視覚に投影するから”


『判った』


”そんじゃ、データ送るで”


 視界に標的が表示される。 あれ、なんだろう? 俺の視覚に投影されている性能を表すデータではまだまだ全然余裕がある。 これくらいなら余裕でやれそう。 いや、出来る。  いや、もっと出来るよ? もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと――


「ちょっ、旦さん!」


 俺はノアから送られてくる目標以外の標的を自分で決めてマークする。 気付けば目標のマークはは目の前の艦隊全てに付けていた。 問題ないからそのまま攻撃行動に移る。 マークした目標全てに向け、片手を手刀の形にして横一線――


 俺の眼前にあった大艦隊は一瞬で紅蓮の大輪を咲かせ儚く散っていった。


”……旦さん取り敢えず中入ろか?”



「まさか十万の艦隊を一薙で殲滅するとはウチも思わんかったわ……。 クアルーンの戦闘力はウチと同世代の空母一隻分に相当するんやけど、旦さんはそれ以上や。 多分、ダンさんのギフト《マナ生成》の相乗効果で《ボット》の戦闘能力がとんでもない事になったんやね。 でも、流石にこれはやり過ぎや。 今度からはちゃんと手加減しいよ?」


「判った」


 つい調子に乗ってやり過ぎた。 しかし相手は人を奴隷や食料としてしか見てないあのレプト。 だから後悔はしてない!


「取り敢えず、アストラーシュと旦さんを修理すんのに資材が必要やねん。 旦さんのマナ生成能力が高かったら量子変換で資材が自前で作れるけど、まだ目覚めて間もないから無理やし。 ダマスカス、ミスリル、アダマンタイト、オリハルコンとか、この辺の鋼材は欲しいな」


「なにそれ!? 凄くファンタジー感一杯なんですけど!?」


「言っとくけど、地球のファンタジーは元は宇宙の知識や技術が話の出処やねんで」


 ノアの口から衝撃の事実が判明した。 そうだったのか! 道理でエノスにエルフやドワーフと言った馴染みのある名前だなと思っていたけどそれなら納得できる。


「HES連盟のデータベースで調べたら、今の旦さんの持っとる知識にあるファンタジー世界そのものやで。 次いでに言うと冒険者ギルドなんかもあるよ」


「よし! 俺は冒険者になる!!」


 俺は今後の目標を即決した、 憧れのファンタジー世界の冒険者に現実になれるとは! これで俺も無職を脱出できるぞ!


「目標はそれでいいけど、アストラーシュの修理とメンテが先や。 先ずは資材調達できる星に行くで」


 という訳で、先ずは近くの手頃な資材を調達可能な星へとアストラーシュは進路を取った。


 補足するとクアルーンはHPが限りなく0に近くて死に掛けていたのが、覚と同化する事でHPが1になりかろうじて死なない状態に戻ったんですね。 ですので覚が《ボット》に変身すると体がまだボロボロな状態なのです。

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