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6,肉体改造されてました

 またあの夢を見た。 真っ暗闇の中で裸で浮いている夢だ。 そして、俺の目の前にはまたしても球体が浮いていた。


 ただ、今回の球体は以前の青とは違い赤い光を発していた。 なんだかこの球体、俺に語り掛けてる様な気がする。


『はじめまして、(だん)さん。 ウチ、ノア言います。 末永う宜しゅうお願いします』


 訂正。 ”語り掛けている様な”じゃなくて語り掛けて来た。


(えっと、なんだ? 俺、ハンドボールに知り合いなんて居なかった筈だけど……)


 俺は頭の中で言葉を思い浮かべると、それを読み取ってハンドボールは会話する。


『ウチ、ハンドボール違います! ノアです! 旦さんの可愛いお嫁さんです!』


 球体――もといハンドボールは幾分強めに発光し、抗議の声を上げながら俺の周囲をくるくる回る。


(ちょっと待て!? 俺はハンドボールを嫁に貰った覚えはないぞ!)


『しゃあないやん。 《クアルーン》が旦さんを選んだんやから』


 ハンドボールはずいっと俺の顔面に当たる寸前lで停止する。 赤い光がちょっと眩しい。


(クアルーンてなんだよ! 俺はそんなの知らんぞ!)


『クアルーンはウチと対になってるサブコアの事や』


 ハンドボールは俺の顔から少し距離を取る。


(サブコア?)


『そや。 ウチは《アストラーシュ》のメインコアなんよ』


(アストラーシュ? なにがなんだかさっぱりわからん)


『アストラーシュ言うんは今あるHES連盟やRL帝国が宇宙超文明て呼んでる遥か大昔に栄えた人らが建造した、当時としては超高性能な最新機能を仰山搭載した最新鋭宇宙船の事や。 ウチらを作った人らは《欲邪(よくじゃ)》が原因で文明が崩壊し掛かってたんやけど、なんとか逃げ延びて再起を図ろうとしたんやな。 其処で作られたのが《アストラーシュ》なんよ。 で、ウチこと《ノア》はアストラーシュを制御する為に生まれたパーソナルAIで《クアルーン》はアストラーシュの持ち主――マスターを認証するマスターキー兼アストラーシュの付属戦闘ユニットでもあるんよ』


(欲邪?ってなんだ? そのアストラーシュって宇宙船とお前がどう関わっててなんで俺の嫁になる?)


『邪欲言うんは知的生命体が発する欲望の波動エネルギーを糧にして生き続けるアストラル生命体や。 ただ、判明してるんはこれだけで何処でどうやって生まれたとか、その辺の詳しい事情は全然判ってない謎の生命体なんよ。 その邪欲に取り憑かれた大勢の人らが暴走してもて文明が崩壊し掛けてたんや。 んで、いざアストラーシュが起動した際、最初のマスターは既に邪欲に取り憑かれてしもてたんやな』


(そのマスター、どうなったんだよ?)


 俺は自然と思った事が口をついて出た。


『ウチが殺した』


(お引き取り願おうか!?)


 冗談じゃない! 主人を殺すAIなんてゴメンだ!


 ハンドボールは俺に詰め寄り抗議の声を上げる。


『もうっ! 話は最後まで聞いてぇなあ! ……ウチにはな。 第一級優先命令がプログラムされてて欲邪に対して防衛システムが働くようになってたんや。 それは欲邪に取り憑かれたマスターとて例外やない。 なんせ、欲邪に一度取り憑かれたら最後、助ける方法は無いんよ……』


(だからって、なあ……)


 もし欲邪とやらに取り憑かれる事になっても、やっぱり殺されるのは勘弁だ。 どうにかして助けて欲しい。


『そんな旦さんに朗報や! 旦さんが欲邪に取り憑かれる事はないで!』


(なんで?)


『クアルーンが旦さんと同化したからや。 それでクアルーンが常にそうした脅威から旦さんを守ってくれてるから安心して』


(ほ~、それは良かった)


『次いでに言うとくと旦さん、寿命無くなったで。 良かったな!』


(良くねえよ! それって成長しないって事じゃないのか! 永遠の十歳児って、どんな罰だよ!)


『安心しなはれ。 旦さんの場合は変化に多少時間は掛かるけど、身体の見た目の年齢は自由に変更可能やから。 それに寿命が無うなった言うても不死やないんやで。 クアルーンの自己回復能力があるけど、それでも体内のマナが枯渇した状態で致命傷追ったら余裕で死ねるから其処は気い付けてな』


 ハンドボールは真剣味を帯びた声で俺に忠告する。


(お、おう!)


 其処はホントに気を付けよう。 命に関わるからな。


『それともう一つ。 クアルーンと同化する事で旦さんがクアルーンの戦闘ユニットとしての能力をギフトとして使える様になったからな。 ……少し変質してもたみたいやけど、旦さんやったら大丈夫やろ?』


(大丈夫じゃねえよ! 何だよ能力が変質って!)


 『本来は《ボット》言う機甲機械――まあ、旦さんに解りやすく一言で説明するとロボットやな。 を作ったり、それをドローンみたく遠隔操作で操ったりする能力やったんやけど、旦さん自身がボットに変身する能力になってもうたみたいやねん。 いやー、やったやん! 旦さん、小さい頃の夢叶ったで!』


(やったやん!じゃねえ! それは飽く迄も小学一年の頃だ! 今の俺は成りたいんじゃねえ! 乗りたいんだ!)


 そう、俺は小学校一年の頃、スーパーロボのゲッ○ーロボに成りたかった。  しかし、今の俺はV2やインパルスみたいな機動兵器に乗りたいんだ!


『でも、有人のボットの操縦って物凄い難しゅうて適性が必要なんよ? しかも、旦さんやったらV2やインパルスにも成れるし、自分の体やから操縦も必要ないんやで』


(ならいいや)


 俺は大人だ。 現実を見れる男だ。 だから無理なら諦めて代替えを探す。 そして代替を既に俺は手にしていた。


『そんな柔軟な考えが出来る旦さん、好きやで』


(褒めても嫁にせんからな)


『いけずやな。 でも、そんな旦さんも好きやで』


 照れてくねくね動いているハンドボール。


(ええい、気色悪い動きをするな! それに話が進まん! それで、どうしてお前が俺の嫁になるんだ?)


『そやった、そやった! あのな、さっきも言うたけどウチ、最初のマスター殺したやろ?』


 物騒な事を平気で言う。 流石AI。


(それで?)


『その時、クアルーンも一緒に攻撃して壊してしもてん。 しかも、その壊れ方が修復困難な程な。 それで、ウチはこの星、地球で機能停止してクアルーンの修復に長い間務めてたんやけど』


(ふんふん)


『修復するどころか消滅寸前まで破損が進んでもてん。 クアルーンはウチと対になってるからクアルーンが消滅してもたらウチやアストラーシュも消滅してまう。 其処でクアルーンはなんとかして自分で修復方法を模索したんや。 それで旦さんが持つギフト《マナ生成》の能力に目付けたんやな』


(ギフト? マナ生成能力?)


『そや。 ギフト言うんは”神様の贈り物”と呼ばれとる所謂チート能力の事やな。 旦さんは《マナ生成》いう能力を持っとるんや。 本来、生命体いうんはマナを貯める事は出来ても作り出す事は出来へんのやけど、極稀にそれが可能な生命体が生まれるんや。 それがマナ生成であり、旦さんなんやな。 マナ生成できる量はHES連盟のデータベース覗いた限り、今までは多くて星一つ分が限界なんが旦さんはその気になればグレートウォール(銀河の塊の塊の塊が大きな壁の様に集まって出来た銀河の塊)一つ分生成出来るんやで。 しかも、子孫に対して《マナ生成》の継承能力のオマケまで付いとる。 いや~、流石ウチの旦さん、凄いわ~!』


 規模がデカ過ぎてよく解らないが。


『ウチらはマナさえあればある程度量子変換機能を利用した修復機能が使えるさかい、クアルーンは危険を承知で一か八か旦さんと同化するいう無謀な賭けに出たんやな。 そして賭けに勝って見事修復出来た訳なんや』


(おい。 同化が危険で無謀ってどういう事だよ?)


『……実はクアルーン、マスターとの同化機能は元々備わってたんやけど、まだ完璧や無いねん。 マスターとの同化を実行した場合、どんなに頑張っても成功確率は0,0001%やったんやな』


(……仮に失敗した場合、俺はどうなってた?)


『そりゃあ、ウチら共々塵も残さず綺麗さっぱり消えて無うなる』


(ふざけろ! お前らの所為で俺は死に掛けたのか!)


『しゃあないやん! クアルーンに人格は無いもん! 最低限のAI機能しか積んで無かったんや!  ウチが起きとったら絶対他人様を巻き込んだりしいひん!』


(本当か?)


『ホンマや!』


 俺は一つ溜息を付いて。


(で? お前の嫁発言はクアルーンとやらが俺をマスターにしたからか?)


『せや』


(まあ、お前の嫁発言は実際には例えなんだろうな……)


『ううん、違うよ? 直接的な意味や。 ちゃーんと旦さんとエッチ出来るし子供も作れるよ?』


(あのな……。 だからハンドボールがどうやって人間様とそんな事出来んだよ)


『それはな、こういう事や』


 (え……?)


 球体を形成している六角形の面の繋ぎ目同士が切り離され、可憐な花の蕾が大輪の艶やかな花を咲かすが如く、中から裸体の美しい容姿を持つ人間の成人女性が現れた。


 頭髪は金と銀の中間色の白金色。 髪質は髪の先端が少し巻き毛気味。 前髪は少し長めで中央で少し巻き毛になっている。 後ろ髪の長さはお尻まであり、髪型は後頭部で一纏めにしたポニーテール。 揉み上げは左右方から胸まで垂らしている。 肌は雪を連想させる様に白い。 頭の形は逆卵型。 紫水晶の様に透明感のある紫色の瞳。 眼と眉は切れ長でクールな印象を与える。 高めの鼻梁は細長く美しい。 唇と乳輪は小振りで淡い桜色。 胸とお尻は大きく張りがあり美しい。 胸は形が最も美しいと言われる釣鐘型。 桃尻の安産型。 それらが絶妙な調和をもたらし美しい造形を生み出していた。


 その姿はまさに俺の理想そものと言って良いだろう。

 

「クアルーンが旦さんのパーソナルデータを読み込んだ時に旦さんの好みの女性の容姿、髪型、性格、言葉遣いなんかも取得してたんや。 それを元にウチはパーソナルデータとサイバーボディを設計構築したんや」


 腕を胸の前で組みながら俺に向かって片目を瞑り、ウインクするノア。


「これから宜しゅうな。 旦さん♡」


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