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4,45歳が幼児に戻ったよ! でもニートなんです……

 俺、飛鳥 覚の体はこのエノスの病院船のこの個室に入院して三日で縮んでしまった。 正確には体が子供に退行してしまったのだ。 大体十歳前後に。


「うおっ! 視界がハッキリ見える!」


 長年愛用していたメガネの度が合わない。 近眼も治っていた。


 病室内のホログラムの設定を弄り鏡に変える。


 容姿が子供時代のそれと違う。 俺の担当医師ローゼスさん曰く、マナ器官が使えない状態が長期間続いていて、それが突然使えるようになった時、マナにより体が活性化され若返り、よりマナに適した身体構造に作り変えられると。 特にその現象は俺の様にマナ器官が発達している者に起こり易いと言う。


 体格は以前の子供時代と同じく細身。 その時より骨格や筋肉が発達して、顔も幾分見た目が良くなっている気がする。 嬉しさ半分といったところだ。


 退院した後どうしよう……。


 俺の実年齢は四十五歳。 とっくの昔に成人を迎えている。 当然、食い扶持を稼ぐ為には働かなくてはならない。 しかし、この十歳前後の体で雇ってくれる会社が果たしてあるのだろうか?  このご時世ではかなり難しいだろう事は想像に難くない。


 俺がこれからの人生に思い悩んでいたら、不意に病室の扉が開いた。


「おはようございます、アスカさん。 お加減は如何ですか?」


 朝の診療に遣ってきたローゼスさん。


「おはようございます、ローゼスさん。 そうですね……特に問題はありません」


 俺ははにかみながら答えた。


「……もしかして、退院した後の事をお悩みですか?」


「顔に出てました?」


 俺は困ってしまい後頭部を軽く掻いて場を誤魔化す。


「あまり悩み過ぎると心が病んでしまいますよ」


 そう言いながらローゼスさんは俺の身体に聴診器を翳す。


「うん。 身体に異常はありませんね。 あれから成長退行も完全に止まりましたし、問題ありません」


 俺を安心させる様に微笑むローゼスさん。 彼女の笑顔は俺の落ち込んだ気分を癒やしてくれる.。

 まさに女神の微笑みだ。


「ああ、そうそう! アスカさんに大事なお願いがあるんです! 今度お話を聞いていただけないでしょうか?」 


 ローゼスさんが必死な顔で腕を間に手を合わせ、祈る様なポーズで俺に懇願する。


 む、胸が……。


 彼女の豊かな胸が両腕の間で潰れて盛り上がる。 最近、特にそっち方面は歳の所為で枯れ始めていたのかとても鈍くなっていたのだが、成長退行で再び活力が漲り元気になってしまいました。


 俺はそれがバレない様、ローゼスさんから顔を逸して頷く。


「わっ、分かりました!」


「良かった‥‥! じゃあ、後で詳細な日時をお知らせしますね!」


 ローゼスさんはホットとした顔で病室から出ていった。



 (さっきのはあざと過ぎたかな?)


 ミスティ=ローゼスは自身の豊かな胸を見ながら先程の覚に対しての行為を回想して心の中で悶ていた。


 (でも、仕方ないよね。 任務だもの)


 彼女は医師免許を持ってはいるが医師ではない。 いや、正確にはこの病院船のスタッフですら無かった。


 彼女、ミスティはHES連盟の軍属である。 それもかなり高い地位にある。 では、何故彼女がボランテイア活動をしているの医療船に乗り込んでいるかというと、地球人のギフト所持者を調査する為である。 ギフト持ちは宇宙単位で見てもかなり希少な存在。 その持ち主の特定は必要不可欠であり急務である。


 今はレプトと微妙な軍事バランスが成り立っているが、元々軍事に関して言えばレプト達RL帝国がHES連盟の上を行く。 兵力も兵器技術もその量産体制もRL帝国には敵わなかった。


 理由はロストテクノロジーで作られたオーパーツにある。 RL帝国は古代宇宙で知的生命体が最も栄えた時代に存在したと言われている超文明の遺産を数多く手にしている。 それを元に軍事力を盤石なものにしていた。


 そんなRL帝国に対抗する為の手段がギフトなのである。 ギフトとは神の贈り物と呼ばれる特殊な能力の事を指す。 常識では考えられない途轍もない強力なチート能力で世間一般では力持ちと呼ばれる。 ギフト所有者に関して言えば種類、数はRL帝国を遥かに上回る。 その理由は彼らレプトの習慣にあった。 レプトの世界は弱肉強食。 強者が生き残り、弱者は強者に殺され食料となる。 それは高い知性と技術力を獲得した今でも続いていた。 故に例え有用なギフト所有者が存在していたとしても、そんな過酷な環境では生き残れない。 その為、ギフト所持者が少ないのだ。 だがその分、個体の能力はとんでもない。 レプト一体で地球人類なら一個大隊で千人、ヒュノスでも一個小隊の六十人に匹敵する。


 その為のマナ器官開放であり講習会でもある。


 ギフトはマナ器官が完全に開放された状態でなければ覚醒しない。 故にマナ器官開放後、しばらく期間を開けてマナとフォースについての講習会と言う名目で人を集め、ギフト持ちを識別出来る能力者を使って選別するのだ。


  通常、ギフト所有者は一つの惑星で千人前後。 多くても千人を少し超える程度の人数。 しかし、この3年間で日本人を調査した結果、千人近いギフト所有者が見つかっている。 およそ惑星一つ分。 他の数少ない海外のHES連盟加盟国ではまだ一人も見つかっていない。 大国になら居るかもしれないが、残念ながらRL帝国の管轄であるので調べようがない。 その為、これが地球人類特有なの日本人特有なのかは判らない。 だが、海外では発見されていないところを見ると、どうやら日本人特有の様だ。 偶然ではあるが日本を抑える事が出来たHES連盟にとって行幸と言える。


 もう直ぐその調査が終わる。


 その矢先に事件は起きた。


 エノスにとって――いや、HES連盟全体にとって喉から手が出る程欲しい人材が発見された。


 それが飛鳥 覚である。


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