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3,夢の中?

後の話で矛盾が生じるため修理の文言を復元に変更しました。

 頭がボーとして意識がハッキリしない。 俺は光が一切差さない闇の中で裸で浮いていた。 体が立っているのか横になっているのか判らない。 そんな状態でただただ暗闇の先を見つめていた。 その寝ている俺の丁度お腹の真上に突然、青白く光るハンドボール位の大きさの球体が出現した。 その球体は六角形の面の繋ぎ合わせで構成されている。 けど球体は何かに抉られたような凄く大きな傷を追っていた。 その大きな傷口と繋ぎ目が規則正しく、そしてとても弱々しく青く明滅している。


(なんだコレ? 俺は夢を見ているのか?)


 球体はノイズ混じりで何か言葉を発していた。


『……次元…………フィールド…展開。  コレより目標………アクセス開始』 


 次の瞬間、球体から俺に向けて無数の金属製の線が俺のお腹に一瞬で刺さる。


(え?)


 痛みは全くない。 けど、何かが体の中を這い回る感じがして気持ち悪い。


『…………カウント……3…2…1…アクセス完了。 ……生体へ…同期………確認……問題…無し』


 いやっ !? 問題ならあるよ! ありまくりだよ! 何かお腹に刺さりまくってるよっ!! 


『……生体…同調……開始………………………………カウント…3…2…1…完了……同調…確認……問題…………』


(ちょっ!? 問題あるの? ないの? どっちだよっ!?)


『同化開始』


(うおっ!? お、お腹がっ!?)


 何かを開始と共に金属線が刺さっていたお腹に真っ黒な穴が空き、その穴に金属線に導かれながら青白く淡く光る球体が吸い込まれて行く。 球体が完全にお腹の穴に収まった後、お腹の穴は塞がり元通りの状態に戻った。 暫くするとお腹の中が熱を持ち、球体が体に融けて行くのを感じる。 融けた球体は血液と混ざり合い溶けながら体の細胞の隅々まで行き渡る。


『……並行……ノーマル…アストラル…イッセリアル…調整………アクティブ……同化完了…………。 同化によるデータ復元率一〇〇%。 完全同化成功。 同化によるトラブル………問題検出されず。 これより《アストラーシュ》のマスター登録のシークエンスを開始します。 パーソナルデータのスキャン開始。 スキャン中………ノーマルパターン、アストラルパターン、イッセリアルパターンスキャン完了。 データ書き出し中………登録完了。 ………最終シークエンス開始』


 球体が俺の体に溶けて混ざり合い完全に一つになった頃から球体から発せられていた声が頭の中にハッキリと伝わってくる。 それにしても《アストラーシュ》とはなんのこっちゃ。 


(あ、駄目だ……。 すんごく眠い……)


 頭に聞こえる訳がわからない意味の言葉が段々遠くに遠ざかる。 そして俺の意識は闇に包まれた。



「ん……」


 瞼の裏に光が差す。 それが刺激となって俺の意識を覚醒させた。 もぞもぞ動きながら上体を起こす。


「あ! お目覚めになりましたか」


「え?」


 上体を起こした視線の先には女神様が居た。


 亜麻色の髪を結い上げた均整の整った顔立ちに側面の髪から飛び出す細長い耳。 そして何より目を奪われたのは抜群のプロポーションを包み込んだ服装、ハイレグレオタードスーツだ。 


 すっ、すっげーっ! むむむむ、胸の先端までクッキリと形が判る! あれって、ち………だよな!!


 思わず声に出そうになったのを、彼女から顔を逸して口を塞ぐ。


「あの、どうかしましたか?」


 彼女は首を傾げて不思議そうに聞いてくる。


「あっ!? い、いやっ! なんでもないです! ……ところで此処はどこですか?」


 俺は今更ながら自分の置かれた現状を疑問に思って目の前の女性に訪ねた。 確か俺は健康診断を受けに行ってマナ器官を開放するナノマシンを医師から打たれて、それで……ええっと、……どうなったんだっけ?


「貴方は健康診断の会場でマナ器官開放の為のナノマシンを体に投与された直後に意識を失い倒れられたのですよ。 そんな事は本来起こり得ない筈なので会場に居た医師の判断でエノスの医療船に緊急搬送されたのです」


「あ、そうだったんですか。 ……それで、俺が倒れた原因って」


「貴方はマナ器官が封印されていた割に地球の他の方達よりマナ器官が発達していて。 なのでナノマシン投与後、封印されていたマナ器官が直ぐに活動を開始してマナ器官がマナを急速に吸収したのが原因で体がマナに馴染む前にショックを起こしたのです。 ですが、あれから一日経ったのでマナも十分に体に馴染みましたので命の危険はありません。 ご安心して下さい」


 彼女は人を安心させるとても優しい微笑みで答えてくれた。


「そうですか……。 すみません、ご迷惑をお掛けしました」


「いえいえ。 でも、念の為に此処エノスの病院船で一週間、様子を見ますので入院して頂きます」


「えっ!?」


 俺は思わず頓狂な声を上げてしまう。


 どっ、どうしうよう! 俺、金持ってないよう! 貯金はとっくの昔に使い果たしたし……。 エノスの治療費ってどれくらい掛かるんだろ? 


「ど、どうかされましたか?」


 俺の上げた声に彼女はビックリお目々で慌てて俺に訪ねる。


「い、いや……その、お金が……」


 言いにくいが仕方がない。 此処は素直に答えよう。


「ない、ん……ですっ!」


 くっそ! 恥ずかしい! 金持って無くて恥かいたの、これが初めてだ!


 またもビックリお目々で俺をマジマジ見る彼女。 そして――


「プッ! クスクスッ!」


 何故か思い切り笑われた。


「あ、あの?」


「あっ! す、すみません! その、あなたにしてみればとても深刻な問題ですよね……。 でも、ご安心下さい。 この船は元々HES連盟の援助の下、ボランティア活動をしている医療船ですから。 その為無償で医療を受けられるんです。 だからお金の心配はいりません」


「あっ、そうなんですか……」


 くっそ! 要らん恥かいたっ!


「申し遅れましたが、私が貴方の担当医のミスティ=ローゼスと申します」


「俺は飛鳥 覚(あすか さとる) と言います。 一週間お願いします」


 こうして俺はエノスの医療船での入院生活が始まった。


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