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24,反省会

「一昨日はエロい目――もとい、えらい目に遭ったよ……」


 あの露天風呂での一件で俺は精根尽き果て、食事も満足に取れずに一日を体力回復のために布団の中で過ごしてしまう。


「旦さんごめんて~! もう許して~な!」


 頭に瘤を作り涙目で許しを請うノア。


 復活した俺がまず最初に行ったのが悪乗りしたノアに拳骨を落としクリス達と纏めて説教した事だった。


 そして、罰として――


「初夜延期!!」


「「「「えええぇぇぇ~~~っ!?」」」」


 くっ! これは俺自身にもダメージは大きい。 しかし! 此処で甘い顔をして許してしまうとノア達は付け上がるだろう。 それではダメだ。 それはお互いのためにならない。


 朝、宿泊している部屋にて配膳された食事を四人が食べながら大粒の涙をポロポロ零して食べている。 その姿に少しやりすぎた気がしてきた。 それでも許してしまいそうになる気持ちをぐっと抑えて心を鬼にする。 その光景を配膳に来たお銀女将が見てやれやれといった感じで溜息を零していた。


「事情は美咲から聞きましたわ。 こればかりは飛鳥様の言い分が正しいです。 しかし、このままでは夫婦間で禍根を残してしまいますね。 ですので飛鳥様、こういうのはどうでしょうか?」


「うん? 何です女将さん?」


「夫である飛鳥様、妻であるノア様やクリス様方は何分まだお若い。 ですので経験者も交えてお話するというのは? 幸いこの大和村の尼寺に住んでいる村長、葛の葉様の所に男女の機微や営みについて相談にのって頂ける御方がおりますわ。 先ずはその方に夫婦の在り方についてご教授――つまりお話を拝聴に行くというものです」


 まあ、お銀さんの言わんとしている事は何となく解る。 要は俺達が経験不足だから男女の考え方の違いから来るすれ違いを、経験者の知恵を借りて補完しろって事なんだろう。 でも、葛の葉って村長の名前、何処かで聞いたような気がするな。


「その人の御名前は?」


胡蝶(こちょう)様ですわ」


「胡蝶様?」


 お銀さんの口から出た名前をオウム返しで呟く。


「その、胡蝶さんてどういう人なんですか?」


 ニッコリ微笑んで答える。


「胡蝶様は尼寺の庵主様で長老の葛の葉様のお世話をされている方でもあります。 ただ、日本生まれの飛鳥様ならば濃姫と、呼んだ方がお分かり頂けるのではないでしょうか」


「濃姫だって!?」


 俺は座っていた腰を浮かして叫んでいた。 それにビクッと反応する嫁さん達。


 《濃姫》


 それは第六天魔王と人々から呼ばれた歴史上の人物、織田信長の正室だった人の通称。 でも、確かその人は夫である信長の死後、天寿を全うした筈。


 「でも、どうして濃姫がこのサキュロスに?」


 「胡蝶様は流行病で死に掛けた事が遭ったそうで。 その折にマナ器官が開放されフォースが覚醒されたとか」


 お銀さんは其処で形の良い眉を寄せて目を瞑り、何処か悲しげな面持ちで話しを続ける。


「ですが、そのせいで周囲の人達から気味悪がられ化生の類として暗殺されかけたそうです。 その時、ニニギ様と出合い命を助けて頂いたそうですわ」


「その時、旦那さん――信長さんはどうしていたんですか?」


 周囲の変化に奥さんの命の危機。 織田信長という歴史に名を残す人物はそれに気づかない愚物では無い筈だ。 まあでも、光秀の裏切りを読めなかったのだからその可能性は無きにしも非ずだが。


「ニニギ様に織田様が直接お会いに成り、胡蝶様を助けて下さるよう頭を下げられたそうです」


「でも、歴史上の逸話からしたら胡蝶さんて旦那さんから離れるような人じゃないと思うんですが。 それに別にニニギさんとこじゃなくても実家に帰れば済むんじゃ」


 織田信長に腰入り前、父である斎藤道三に”噂通りのウツケなら殺して帰ってこい”と言われて懐刀を渡された時に濃姫が返した答えは”私は織田家に嫁ぐのです。 これで父上を刺すかも知れませぬ”と言った程だ。 素直に離れるとも思えないんだけど。


「勿論、胡蝶様本人は拒否されました。 しかし、織田様が一計を案じ薬を一服盛ってからニニギ様に引き渡されたとか。 それとご実家の方ですが、父である道三様は既に亡く、兄弟は正室の唯一の娘でもある胡蝶様を疎んじられていたので、もし実家に帰せば恐らく……」


 暗殺、か。 命の危険があるのなら実家にも帰せないな。


「そういう訳でして、現在はこのサキュロスで今は亡き二人の旦那様の菩提を弔う為、尼僧におなりに成られたのですよ」


「ん? 旦那が二人?」


 あれ? 濃姫って織田信長が初婚じゃ無かったっけ?


「実は織田様に嫁がれる前に土岐 頼純(とき よりずみ)という方に一年だけ輿入れしていたそうですわ。 でもその方が僅か一年後に急死なされてその為、胡蝶様はご実家に戻りその後に織田様に輿入れされたのですよ」


「そうだったんですか」


 濃姫って、織田信長に嫁ぐ前に結婚してたのか。 四十五年生きてて知らなかった。


 にしても、濃姫か。 確かに会ってみたい。 俺はノア、クリス、イオナ、ユリナの四人を見る。 既に泣き止んでいる四人だが、俺に見られて決まり悪そうにしている。  


「は~……。 もうあんな巫山戯た事しないと約束するなら許すよ」


 途端、四人は物凄居速さで何度も頷く。


「旦さんゴメンな! 少し調子に乗って悪乗りしてもた」


 ペコリと頭を下げて俺に謝るノア。


「分かったから頭を上げろ。 ……もう、あんな事するなよ?」


「うん! 分かってる!」


 俺に許されて嬉しそうに満面の笑みを浮かべるノア。 畜生! 可愛いじゃねえか!


「わたくし達もちょっと焦っておりましたの。 サトル様の下へ強引に嫁入してしまいましたから……」


「私はサトルと会ってそれ程時が経っていない。 それに私は軍に席を置いていたので女性として感覚が一般人よりずれているかもと心配になって……」


「モノアイの私は見た目がサトル君と違って一つ眼だし、サトル君が私の事を気味悪がってないか、なって、思って……」


 と、クリス、イオナ、ユリナがそれぞれの心情を吐露する。


 それぞれ事情は異なるが共通しているのは三人共、結婚生活に不安を抱えている事だ。


「確かに初めは三人を嫁に貰うのに戸惑ったけど、クリスやユリナとは以前から接していたからそれ程違和感なく受け入れられたよ。 クリスは俺とノアのサキュロス船団内でのサポートを良くしてくれてるしね。 細かい所も良く気が付いてくれてとても助かっているし。 これからも俺を助けて欲しい」


「まあ♡ サトル様のそのお言葉、わたくしとても嬉しく思いますわ!」

 

 それにクリスはとても美人である。 サキュロス特有の白く透き通る様な肌に、長い前髪をセンター分けにして膝まである長髪を後ろで毛先を一本に纏めて編んでいる薄灰紫色の髪が流れる様にとても綺麗で、プロポーションも抜群。 胸囲に至ってはこのメンバーの中では一番抜きん出ている。 にも関わらず、その形は型崩れしておらずとても美しいお椀型である。


「ユリナは確かに俺達と違って一つ眼――モノアイだけど、気味悪くなんてない。 それにとても優しいし。 寧ろその大きくて円な瞳が可愛いくて女性としても魅力的だから。 俺の自慢のお嫁さんだよ」


「あ、ありがとう! サトル君! そう言って貰えて私、とても嬉しい……」


 瞳に涙を浮かべて喜ぶユリナ。


 実は俺、地球に居た頃からモンむす耐性が高かった。 なので良くその手のゲームや、漫画等を読んでいた。 それに俺、モンむすの中ではモノアイ娘が好きだったのだ! 只、リアルでモノアイの女性を嫁に貰うとは夢にも思わなんだが。


「それにイオナ。 イオナとは確かに出会ってからの時間は皆の中で一番少ないけれど、俺はイオナの事、とても好みだし異性として惹かれている。 イオナがとして俺の所に嫁いでくれたのは素直に嬉しかったよ」


「サトル……有難う……。 私も、サトルが…その、好き……」


 顔を俯かせてはにかみ、衝撃の告白をしてくれたイオナ。


 一見クールに見えるが、実はとっても恥ずかしがりやなイオナ。 そのギャップが堪らなく、俺の心を掴んで離さない! それにイオナも俺の事を好いてくれている様だから問題ない!


 そうしてこの部屋の中でイチャラブ空間が出来上がった。 その光景を見ながら朝食の配膳を片付けた女将と仲居さん達は。


「これなら心配なさそうですわね」


 苦笑いしながら部屋から出ていった。


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