22,これがラッキースケベってやつですか?
一時ゆっくり休憩してから俺は夕食の前に先に風呂に入る旨を四人に告げて露天風呂にやって来た。 ただそうなると当然四人も露天風呂に一緒に入リたがる訳だが、何やら四人で少し話があるとかで後から来るそうだ。
「じゃあ旦さん、後でな~!」
「わたくし達も後から参りますわ」
途中、迷って廊下ですれ違った仲居さんに露天風呂の場所を訪ねて漸く露天風呂の脱衣所まで辿り着いた。 脱衣所は日本の昔ながらの銭湯のように男女別に分かれており暖簾に書かれた文字で男女の別を示していた。
脱衣所の中に入り、壁に備え付けられている棚のカゴの中に部屋から持ってきた浴衣と湯上がりの時に体を拭くバスタオルを入れ、着ていた服を脱ぎそれも一緒のカゴの中に入れる。 そして、前を隠す為に腰にタオルを巻いて準備完了。
俺は他に女性客が入っていないことを出入り口から頭だけを出し、周囲を伺ってから露天風呂に足を踏み入れた。
「誰も居ないみたいだな……。 おお! デッカイ露天風呂だな~」
この露天風呂、大きいとこでは百mはあるんじゃやないか? しかも露天風呂の所々に大岩が幾つか点在している。
体に掛け湯をして露天風呂に入り、気になっていた大岩に近付くと大岩には上り階段があり、階段を上がると大岩をくり抜いて床には滑り止めのタイルが敷き詰められた空間があった。 其処にはテーブルと椅子だけでなく個室のトイレも設置されていた。 まあ、この露天風呂広いからトイレは必要な気がする。
何気なくテーブルに近付くと、テーブルの上に小さいモニターが浮かび、この宿の女将の娘で仲居の美咲ちゃんの顔を映し出した。
”お客様、何かご入用……あ、覚お兄ちゃんだ!”
「あれ、美咲ちゃん? このモニターって……」
『露天風呂の中の岩の休憩所では軽食もとれるようになってて、テーブルに人が近付くと端末が起動するようになってるの』
美咲ちゃんが説明してくれたのだが、一昔前まではこの宿でも露天風呂の中にお酒を置いたお盆を浮かべて飲めたらしいが、近年では酔っぱらっての事故や喧嘩等のトラブルが起きないようアルコール類は全面禁止になったのだとか。
最近の日本とサキュロスのアルコール問題は似ているな。
俺の場合はお酒は忘年会の付き合い程度でそれ程飲まないし、家で飲んでもウイスキーの水割りを二、三杯位しか飲まないので困らない。
軽食か……確かに小腹が空いてるから何か少し食べたい気分だ。 モニターに映し出されるメニューからお米で作られたライスミルクと言う飲み物とヤマモモの実を一皿、計百五十クレジット(日本円で約百五十円)を注文する。 ヤマモモとは甘酸っぱい果実が沢山成る木で、近くの山に自生していた。 それを子供の頃、親父と良く一緒に取りに行った。 姉弟? 勉学にスポーツにそれぞれ忙しくて一緒に過ごした覚えはない。 お米の飲み物――ライスミルクとは初めて聞く飲み物だ。 どんな味なんだろう?
「それにしても四人共遅いな。 何してるんだろ?」
「おや? 待ち人来たらずかえ?」
「え?」
後ろから声が聞こえたので振り向くと、白髪の長髪で色白の美女がいつの間にか後ろに立っていた。 この宿に宿泊している他の泊り客だろうか?
「あの、あなた……わっ!?」
この場所を考えれば当然といえば当然で、その美女は全裸であった。
「すすっ、すみません!」
その美女に悪いと思い、俺は直ぐにその美女から視線を逸らす。
「このような場所でその態度は逆に失礼ぞ。 ほら、もっとワッチの裸を見るでありんす」
「なっ!? うっぷ!?」
その美女は俺を振り向かせると自身の豊満な胸の中に俺の顔を埋めた。
いっ、息が! このままだと窒息……
「あああぁぁぁ~~~っ!? 葛の葉さん何やってるんですか! ウチのお客様にチョッカイ出さないで下さいよっ!!」
丁度其処へ美咲ちゃんが俺が注文した品と共にピザ配達員が乗ってような小型の浮遊する乗り物に乗ってやって来た。
「おやおや、厄介な娘に見つかってしもうたでありんすな。 残念、此処で退散させてもらうでありんす」
そう言うと白髪の美女――葛の葉さんは俺の拘束を解いて飛び立つ。
「――て、飛んだ!?」
「主様はニニギ様のとこの婿殿で御座いましょう? 今度ワッチの寺へ来て下さいませな。 お願いしたき儀がありんす」
「葛の葉さん!! 今度という今度は逃しませんよ!!」
美咲ちゃんが葛の葉さんに何かをしようとした直後――
「遅いでありんす」
「へ?」
美咲ちゃんは突如真横に現れた葛の葉さんに乗り物から突き落とされてしまった。
「危ない!」
俺は咄嗟に岩の端っこに足を掛けて美咲ちゃんを空中で受け止めたまでは良かったが、着地をしくじり美咲ちゃん共々露天風呂に無様に落下した。
「ぷはっ!? だ、大丈夫! お兄ちゃん!」
「あ、ああ……」
俺は湯船に落ちた衝撃で少し頭がフラつき、立ち上がろうとしたが足がもつれて美咲ちゃんの着物の胸元に手を掛けてしまい、そのまま湯船でコケてしまった。
俺は露天風呂の床石に手を突き湯船から顔を出したら其処には着物をはだけさせ大事な所丸出しな美咲ちゃんの姿があった。
「~~~~~~~~~~~~っ!?」
「あ……」
☆
「ごめんなさい!」
岩場の休憩所で俺は何度も美咲ちゃんに頭を下げた。
「……もういいです。 覚お兄ちゃんに悪気があったんじゃないし。 助けてくれた訳だし」
美咲ちゃんは端末から他の仲居さんに替わりの着物を小型ドローンで届けて貰い着物を着替えた。
「所で、見ました?」
「えーと……」
美咲ちゃんの質問の内容、自身の体の大事な所を見たかと言う質問だろう。 その質問を正直に答えるのであればYESだ。
美咲ちゃんの思春期特有のまだ膨らみ始めた双丘にその頂きで自己主張する小さくて可愛らしいアカスグリの実。 普段なら視界が歪んで見えない筈の、その時だけ何故かハッキリ見えたお湯の中の乙女の秘密の園。 おっと、鼻血が!
お互いの心の平安の為に俺は誤魔化そうとして。
「み、見なかっ――」
「見たんですね」
「はい……」
真っ赤な顔で俺の顔を睨む美咲ちゃんに誤魔化せる度胸は俺には無かったよ……。
「それじゃあ、私のお願いを聞いてくれたら許してあげても良いよ」
「えっ!? 聞く聞く! 俺で出来る事なら喜んで聞くよ!」
こんな事、ノア達にバレてたまるか。 これは俺の沽券に関わる。 俺はロリコンでは決して無いのだから!
「私のお母さんに手を出さないと誓約してくれますか?」
「するする! だからノア達には内緒に……」
「うん! 良いよ!」
おっしゃ! これで、バレる心配は無くなった。 ホッと一安心する俺。
「今から誓約書作るね」
そう言うと美咲ちゃんは手を合わせると指と手を色々な形に素早く流れるように組み替える。 これってもしかして印ってヤツか?
すると美咲ちゃんの正面に白く光る長方形の一枚の紙のような物がフッと突然現れた。 その現れた紙?に美咲ちゃんは指をなぞる。 最後に着物の袖から裁縫道具を取り出し、更に其処から針を一本取り出し、針の先端を親指に押し当てる。
「んっ! これで良し、と」
その紙?を今度は俺に向けて。
「じゃあ、此処に血印押してね。 ハイ、針」
そう言って針を手渡された。 いや、ハイって……
「これ何なの?」
「これは《誓約公証》と言ってお互いの約束事を必ず守る術なの。 この場合は覚お兄ちゃんが私のお母さんに邪な気持ちを持ったら触れないよう約束をするの」
一種の呪いのようなものかな? しかし、こんなものを持ち出すなんて余程お母さんの事が心配なんだろう。 でもなー、お銀さんは確かに魅力的だが俺の好みでは無いのだ。 ましてや俺には嫁さんが四人も居る。 結婚した早々お互いの愛を育む前に浮気なんてしないぞ。
「流石に出会ったばかりのお銀さんにそんな事しないよ」
「念の為だよ。 お父さんは私が生まれる前に死んじゃってお母さん独身だし、サキュロスの男の人達にも凄く人気なの。 お兄ちゃんもお母さんに惚れないとは限らないし」
「もしかしてお銀さんには好きな人が居るの?」
美咲ちゃんは首を傾げ、眉毛を八の字にして悩ましげに答える。
「う~ん、それは私も良く分からないの。 でも、そうなら良いなって感じの人は居るよ」
「だれ?」
「ニニギ様の息子のホデリさん。 寡黙なイケメンさんなの。 でも、ホデリさんの方は間違いなくお母さんに惚れてるから悪い虫を付けたくないから」
「成る程――え? 俺、悪い虫なの?」
俺は自分に指を差す。
「そう成りそうな感じがする」
コクリと頷き半目で俺の事をジーと見つめる美咲ちゃん。
「ヒドイ!? 幾ら俺でも無節操に女性に手は出さないよ!」
「ノアさんやクリスティナ様達は?」
少し考えてみると四人共、出会って直ぐに嫁になった。 あれ? もしかして言い訳出来ない?
「……ごめんなさい」
思わず美咲ちゃんに謝っていた。 いや、でもまだ手は出してないよ? その予定はあるけど。
「素直で宜しい。 そんな覚お兄ちゃんにはご褒美をあげます。 先ずは血判を押してね」
「ご褒美?」
「それは秘密です! でも、誓約が完了した暁――ホデリさんが私のお父さんになった時に良いものをあげます」
そう言う美咲ちゃんの顔は若干紅く染まっていた。




