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20,三人のお嫁丼ぶり(母娘丼、姉妹丼)

 覚達が冒険者ギルドから追手の冒険者達を振り切った後。 冒険者ギルドステーションのオペレーター室では痩せ型で目が落ち窪んでいるが双眸が飛び出した神経質なエルフの男――冒険者支部長のゲッチ=ヒュデラーは右手の親指の爪を噛みながら、オペレーター達が座る後ろの通路で右往左往していた。


「くそっ! 一体どうなっているんだ!」


『ステーションの損害、軽微。 係留索と係留橋の破損のみ』


 抑揚のない声でサノスのオペレーター、ミュエルはゲッチに報告する。


「そんな事はどうでも良い! このステーションには転移や亜空間航行が出来ないようECMが働いていたは筈なのにあの船は転移した! どうしてだ!」


 ステーション内でまかり間違って転移や亜空間航行すれば大惨事が起きる。 故にステーション内ではそれらが出来ないようECMが設置されていた。 だが、アストラーシュが本気を出せばそんなものは簡単に出来る。 宇宙超文明によって建造された船にはそれだけの性能が備わっていた。


「しかも捕獲の為に上級クラス以上の冒険者を全て向かわたにも関わらず捉えるどころか返り討ちだと! この船は一体何なんだ!」


 オペレータ室の大画面モニターに映し出される映像。 それはたった一隻の巡洋艦クラスの船が四十隻もの船に対して遠距離から一方的な攻撃を加えていた。 しかも狙い違わず全て推進機の不噴射口――ノズルに命中させて船の動きを封じた映像だった。


「まさか、あの船は宇宙超文明の遺跡船? いや、あり得ない! そんな筈はない! あのような遺跡船はデータにはない。 教団からの連絡も無かった。 だとしたら……」


 ブツブツと独り言を繰り返すゲッチ。


『支部長、船の推進機が破壊された冒険者達から救助要請が来ています。 どう致しましょう?』


 ゲッチは映像モニターを再度見て頭を描きながら嘆息する。


「ギルドから人を出して助けてやれ。 ただし、救助料金として百万クレジット(地球の日本円にして約百万円)請求しておけ。 冒険者ギルドは其処までお人好しではない。 上級クラスの冒険者ならそれ位の金は払えるだろう」


『支払いを拒否した場合はどう対応しましょう?』


「放ておけ。 そのうち音を上げて借金してでも金を差し出す」


(勿論その金は私の懐に入るのだがね)


 ゲッチは青白い顔で口角を釣り上げる。


 ゲッチはハイエルフでありながらその容姿はかなり劣っていた。 そして見た目の通り正確も歪んでいおり、上に立つ者としても人望なぞ欠片もなかった。 その反動からか、金に執着し、欲深かった。 ”地位や権力は金で簡単に買えるのだ”、とは本人の談。


 人はゲッチの事をその見た目と金に汚い性格から皮肉を込めてこう呼んだ。


 ”リッチのゲッチ”、と。


☆ 


あれから俺達はサキュロス船団に合流、クリスティナさんに連絡して冒険者ギルドであった出来事を話した。 すると、今度はクリスティナさんから――


「長老様からアスカ様に大事なお話があるそうです」


 サキュロス船団のトップ、長老さんの話を聞く為にマザーシップに呼ばれた。 ただ、呼び出された先がマザーシップの中に収納されているサキュロスの母星だったのには俺もノアも驚いた。


 そして今、俺は母星にある長老宅の客間で座布団に座り、出されたお茶――玉露を啜っていた。


 この惑星に軌道エレベーターで降りる時も遠くから見えた建物も大正や明治時代を連想させる日本風のモダンな建物であったが、長老さんのお宅は何と言うか、昔の日本の武家屋敷を三階建てにした豪邸であった。


「何故に武家屋敷? そして玉露がどうしてあるんだろう?」


「旦さん、このお茶請けのお団子美味しいで」


 サキュロス船団で生活し始めた頃から、サキュロスの文化は日本ポイなあ似ているなあとは思っていたが此処まで来ると偶然では済まされない。 地球の俺の故国日本とサキュロスには繋がりがあり、大きな秘密があるのではないか? そのような予感が俺の中で生まれている。 まあ、そう簡単に話してはくれないだろうが。


「実は儂、ニニギって言う名前なんだけど、地球では瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)って呼ばれてたんよ」


 紺色の着物を着て上座に座ってた長老さんが何気なく口を開いたと思ったら、行き成りとんでもない事をブッコミやがった。 一瞬意味分かんなかったけど、理解したら飲んでたお茶を気管に詰まらせて思い切りむせちゃったよ!? 


「けほっ、けほっ!? そうなんすか!?」


「そうなんよ。 そう言えば名乗ってなかったね。 なんせ儂、教団の所為で此処数百年は孤立してて名乗る相手も居らんかったし」


 確か教団て敵認定したら滅ぼすまで攻撃を止めないんだっけ。 んでもって、教団から逃げ切ってるのって今んとこサキュロスだけ。 周りはそんな物騒な連中に狙われたら堪らんと、サキュロスと交流を断ち、他のコミュニテイからハブられてヨトゥ――つまり何処にも”所属なし”に成った。


 ヨトゥになると後ろ盾がないから人権もない。 結果、ユリナさんみたいに誰も助けてくれず奴隷にされても文句が言えない。


 HES連盟や宇宙人類連合は取り締まりたくてもお偉いさんの子弟が大勢教団に所属しており、おまけに利権やら何やら絡まって下手に手出し出来ない状態で警告止まり、と。


 役に立たんな、HES連盟に宇宙人類連合。


「あ~、旦さん、長老――ニニギさんの言う事ホンマみたいや。 パーソナルパターンがデータベースに残ってて、今それと照合したらドンピシャやったわ」


「おや? ノア殿はもしかして地球に?」


「ウチ、地球が誕生した頃から居ったもん。 まあ、その頃は堆積物に埋もれて土ん中やけど」


「そうでしでしたか」


「そうなんよ」


「「ははははは!!」」


 ニニギさんと一緒に笑いあうノア。 どうやら二人共、気が合うみたいだな。


「大事な話って、ニニギさんの事でしたか」


「それは次いでね。 本題はまた別」


 そう言うと上座から俺達の正面に移動して座り直し行き成り頭を下げられた。


「アスカ殿、ノア殿、我らサキュロスの窮地を幾度も救ってくださり感謝の言葉もない。 そればかりか儂の孫、イオナとユリナをも偶然とは言え助けて下された。 サキュロス代表として、また、イオナ、ユリナの祖父として礼を申します」


「え?」


 ユリナさんとイオナさんがニニギさんの孫? 俺は思わずノアを見た。


「そうなんよ。 ユリナさん、イオナさんてニニギさんの孫でクリスティナさんは娘さんなんよ。 旦さん知らんかったん?」


「全然……」


 そんな重要な話、一っ言も聞いてねーよ!? 


 「ホントにありがとね」


 ニニギさんはおもむろに顔を上げて再度礼を言われた。 そしてニニギさんが真面目な顔になる。


「それで話は二つあってね。 一つは我々サキュロスはこの宙域から離れて未開の宙域に向かう事にしたんだよ。 理由は――君達も知っている通り、教団の攻勢がこれまで以上に強まった上に冒険者ギルドが完全に敵に回ちゃったからね。 さすがにこれ以上は凌ぐの無理だから、いっそ誰も行った事ない場所に行こうってなってね」


 確かに。 サキュロスが現状取れる手立てはそれ位だろう。


「それで君達に確認したいんだけど、どうする? 我々の所為で君達も冒険者ギルドから目を付けられたからね。 放り出すなんて恩知らずな事、儂もしたくない。 我々と来るかい?」


 俺達はこのサキュロスで生活基盤を整えた。 それをまた別の場所また一からってなったらとても大変だ。 それにニニギさんの言う通り、冒険者ギルドからも目を付けられたし。 う~ん、正直な所断る理由がないんだよな。 ただ、両親には俺の無事だけ伝えたい……


「どうする、旦さん? ウチは旦さんに従うで」


「――ノア、両親にだけ俺の無事を知らせる事って出来るか?」


 そう、両親にだけ。 親父やお袋には心配掛けたからな。 姉貴や弟には――全然心配してないどころか俺に対して完全に無関心だったからな。 必要ないや。


「うん? それやったらメッセージカプセル地球に飛ばして旦さんのオトンとオカンにだけ伝わるようにして、その後自壊するように設定すればウチらの痕跡消す事が出来るへ」


「……ああ、それで頼む。 ニニギさん、俺達も一緒に付いて行きます」


「そう言ってくれると我々としても助かるんよ。 此方こそよろしくね」


 ニニギさんは微笑んで俺達の答えを受け入れてくれた。


「……それでもう一つ、アスカ殿にお願いがあるんよ。 此方はアスカ殿が我々サキュロス離れる選択をした場合、話さんつもりだったんだけどね」


「はい」


「儂の娘クリス――クリスティナ、それに孫のイオナとユリナをアスカ殿の嫁にして欲しいんよ」


「はい。 ――はあっ!?」


 つい流れで返事したけど、頭が意味を理解した瞬間、時既に遅く。


「おお! 良かったんよ! 三人共、入ってくるんよ」


「いやっ! ちがっ――」


 ――うんです!と、否定を口にしようして三人が客間に入って来たその姿に言葉を失った。 三人共、白色に薄っすら紫色の着物姿でクリスティナさんの薄紫の髪、イオナさんの灰紫の髪、ユリナさんの黒紫の髪に普段と違う髪型で着物の色と合っていてとても清楚で美しかった。


「旦さん、旦さん、鼻の下伸びてる」


「ハッ!?」


 ノアが半目で俺をニヤついて笑ってた。 イカンイカン! 俺にはノアという妻が既にいるのだ。 三人には悪いが断らねば――


「因みに、奥方のノア殿には既に了承を得ているのね」


「何で!?」


「旦さんはウチ一人に縛られる人やない。 ウチ以外の奥さんが出来るんは覚悟してたんよ ……まあ、まさかこないに早う出来るとは思わんかったけど」


 何とも言えない苦笑いで答えるノア。


「ノア……」


「それに旦さんも三人の事は憎からず思うてるやろ? 特にイオナさんは」


「グッ!?」


 図星を突かれ言葉に詰まる俺。 クリスティナさんとユリナさんは微苦笑して、イオナさんは照れて耳まで真っ赤になっている。 クッ! 可愛いじゃないか!


「ホントは他種族の男と子作りできたら良いんだけどね。 実はサキュロスって他種族と性交禁止してるのね。 理由は――他種族との性交は余りに相手に掛ける負荷が大きいから。 一言で言うと気持ち良すぎてやり殺しちゃうのよね。 だから儂ら、昔地球の日本に行ったんよ。 子作り相手を見つける為に。 なんせ、日本人とインセクターのDNEを掛け合わせて儂ら生まれたから。 だからあの地域はサキュロスと相性が良い相手が見つかり易いのね」


「じゃあ、日本人はサキュロスの先祖に当たるんですね」


「そうなのね」


「でも、サキュロスと相性がいい相手は他にいなかったんですか?」


「地球以外ではティルナノグ――妖精の星と呼ばれてたエノスとサノスが住んでた惑星ね。 でもね、RL帝国の影響が明治後期辺りから強くなったのね。 その上、教団の追撃が激しくなってきたから近寄れなくなったのね。 だから最近は地球にもティルナノグにも行ってないのね」


「成る程。 だから日本にはニニギさんの話が神話として残っていたんですか。 となると、高天原はサキュロス船団の事ですか?」


「そうなのね」


「ならニニギさんは天皇のご先祖様なんですね」


「それは違うのね」


「え?」


火遠理命(ホオリノミコト)――愛称・山幸彦くんは日本で知り合ったご近所さんの子でね。 ウチの息子の火照命(ホデリノミコト)――愛称・海幸彦くんの名前をもじってお隣さんが自分の息子に付けたんよね。 だから血は繋がって無いんよね。 だけど海神(わだつみ)の奴が山幸彦くんを誑かして大和国――日本を支配しようとしたのよね。 で、儂らの息子を酷い目に合わせた上に名前とかを利用されちゃったんだよね。 だからね、天皇とか神祖だとか、儂ら無関係だから」


「じゃあ、天皇は……」


「単なる他所の子ね」


 「でね、さっきの話の続きだけど。 ノア殿からアスカ殿の身体データを渡されて専門家が調べてみたらサキュロスとアスカ殿の相性がこれでもかって言う位に抜群に良いのよね。 だから他に気になる娘居たら言ってね。 相手が居なければその日の内にお嫁に来てくれるから」


「いや、もう無理です。 勘弁して下さい」


「だいじょぶ、だいじょぶ! 若いんだから行ける行ける!」


 ニニギさんアンタ、ノアと意気投合するだけ合ってノアとセリフの言い回しがソックリだよ!


 覚とニニギのそんなやり取りを遠巻きに微苦笑で見守るノアとクリス、イオナ、ユリナ親子姉妹であった。



「ホスセリくんが海神に殺され、ホデリくんがホオリくんとその息子の所為で引き篭りになって儂が一人子作り頑張ってきたけど。 そろそろ限界が近くて困ってた時に、良い後継者が現れて助かったね。 いや~、これでサキュロスも安泰ね!」


 サキュロスでは男性が全人口のおよそ3割を切っていた。 とは言え、解決策が無い訳ではない。 それは人工授精及びクローンである。


 ただし、これらには欠点も含まれていた。


 クローン技術で生まれた子供は能力が低く、精々がオリジナルの五分の三しか備えていない。 育成過程で能力を底上げする事は出来るが、時間が掛かり過ぎる。


 人工授精は親の組み合わせ次第で能力の高い子供がう生まれ易いが、ギフト持ちは何故か生まれない。


 それらが理由としてあるので、人工が極端に減少する非常時以外では自然交配を推奨している。



20、


 覚達が冒険者ギルドから追手の冒険者達を振り切った後。 冒険者ギルドステーションのオペレーター室では痩せ型で目が落ち窪んでいるが双眸が飛び出した神経質なエルフの男――冒険者支部長のゲッチ=ヒュデラーは右手の親指の爪を噛みながら、オペレーター達が座る後ろの通路で右往左往していた。


「くそっ! 一体どうなっているんだ!」


『ステーションの損害、軽微。 係留索と係留橋の破損のみ』


 抑揚のない声でサノスのオペレーター、ミュエルはゲッチに報告する。


「そんな事はどうでも良い! このステーションには転移や亜空間航行が出来ないようECMが働いていたは筈なのにあの船は転移した! どうしてだ!」


 ステーション内でまかり間違って転移や亜空間航行すれば大惨事が起きる。 故にステーション内ではそれらが出来ないようECMが設置されていた。 だが、アストラーシュが本気を出せばそんなものは簡単に出来る。 宇宙超文明によって建造された船にはそれだけの性能が備わっていた。


「しかも捕獲の為に上級クラス以上の冒険者を全て向かわたにも関わらず捉えるどころか返り討ちだと! この船は一体何なんだ!」


 オペレータ室の大画面モニターに映し出される映像。 それはたった一隻の巡洋艦クラスの船が四十隻もの船に対して遠距離から一方的な攻撃を加えていた。 しかも狙い違わず全て推進機の不噴射口――ノズルに命中させて船の動きを封じた映像だった。


「まさか、あの船は宇宙超文明の遺跡船? いや、あり得ない! そんな筈はない! あのような遺跡船はデータにはない。 教団からの連絡も無かった。 だとしたら……」


 ブツブツと独り言を繰り返すゲッチ。


『支部長、船の推進機が破壊された冒険者達から救助要請が来ています。 どう致しましょう?』


 ゲッチは映像モニターを再度見て頭を描きながら嘆息する。


「ギルドから人を出して助けてやれ。 ただし、救助料金として百万クレジット(地球の日本円にして約百万円)請求しておけ。 冒険者ギルドは其処までお人好しではない。 上級クラスの冒険者ならそれ位の金は払えるだろう」


『支払いを拒否した場合はどう対応しましょう?』


「放ておけ。 そのうち音を上げて借金してでも金を差し出す」


(勿論その金は私の懐に入るのだがね)


 ゲッチは青白い顔で口角を釣り上げる。


 ゲッチはハイエルフでありながらその容姿はかなり劣っていた。 そして見た目の通り正確も歪んでいおり、上に立つ者としても人望なぞ欠片もなかった。 その反動からか、金に執着し、欲深かった。 ”地位や権力は金で簡単に買えるのだ”、とは本人の談。


 人はゲッチの事をその見た目と金に汚い性格から皮肉を込めてこう呼んだ。


 ”リッチのゲッチ”、と。


☆ 


あれから俺達はサキュロス船団に合流、クリスティナさんに連絡して冒険者ギルドであった出来事を話した。 すると、今度はクリスティナさんから――


「長老様からアスカ様に大事なお話があるそうです」


 サキュロス船団のトップ、長老さんの話を聞く為にマザーシップに呼ばれた。 ただ、呼び出された先がマザーシップの中に収納されているサキュロスの母星だったのには俺もノアも驚いた。


 そして今、俺は母星にある長老宅の客間で座布団に座り、出されたお茶――玉露を啜っていた。


 この惑星に軌道エレベーターで降りる時も遠くから見えた建物も大正や明治時代を連想させる日本風のモダンな建物であったが、長老さんのお宅は何と言うか、昔の日本の武家屋敷を三階建てにした豪邸であった。


「何故に武家屋敷? そして玉露がどうしてあるんだろう?」


「旦さん、このお茶請けのお団子美味しいで」


 サキュロス船団で生活し始めた頃から、サキュロスの文化は日本ポイなあ似ているなあとは思っていたが此処まで来ると偶然では済まされない。 地球の俺の故国日本とサキュロスには繋がりがあり、大きな秘密があるのではないか? そのような予感が俺の中で生まれている。 まあ、そう簡単に話してはくれないだろうが。


「実は儂、ニニギって言う名前なんだけど、地球では瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)って呼ばれてたんよ」


 紺色の着物を着て上座に座ってた長老さんが何気なく口を開いたと思ったら、行き成りとんでもない事をブッコミやがった。 一瞬意味分かんなかったけど、理解したら飲んでたお茶を気管に詰まらせて思い切りむせちゃったよ!? 


「けほっ、けほっ!? そうなんすか!?」


「そうなんよ。 そう言えば名乗ってなかったね。 なんせ儂、教団の所為で此処数百年は孤立してて名乗る相手も居らんかったし」


 確か教団て敵認定したら滅ぼすまで攻撃を止めないんだっけ。 んでもって、教団から逃げ切ってるのって今んとこサキュロスだけ。 周りはそんな物騒な連中に狙われたら堪らんと、サキュロスと交流を断ち、他のコミュニテイからハブられてヨトゥ――つまり何処にも”所属なし”に成った。


 ヨトゥになると後ろ盾がないから人権もない。 結果、ユリナさんみたいに誰も助けてくれず奴隷にされても文句が言えない。


 HES連盟や宇宙人類連合は取り締まりたくてもお偉いさんの子弟が大勢教団に所属しており、おまけに利権やら何やら絡まって下手に手出し出来ない状態で警告止まり、と。


 役に立たんな、HES連盟に宇宙人類連合。


「あ~、旦さん、長老――ニニギさんの言う事ホンマみたいや。 パーソナルパターンがデータベースに残ってて、今それと照合したらドンピシャやったわ」


「おや? ノア殿はもしかして地球に?」


「ウチ、地球が誕生した頃から居ったもん。 まあ、その頃は堆積物に埋もれて土ん中やけど」


「そうでしでしたか」


「そうなんよ」


「「ははははは!!」」


 ニニギさんと一緒に笑いあうノア。 どうやら二人共、気が合うみたいだな。


「大事な話って、ニニギさんの事でしたか」


「それは次いでね。 本題はまた別」


 そう言うと上座から俺達の正面に移動して座り直し行き成り頭を下げられた。


「アスカ殿、ノア殿、我らサキュロスの窮地を幾度も救ってくださり感謝の言葉もない。 そればかりか儂の孫、イオナとユリナをも偶然とは言え助けて下された。 サキュロス代表として、また、イオナ、ユリナの祖父として礼を申します」


「え?」


 ユリナさんとイオナさんがニニギさんの孫? 俺は思わずノアを見た。


「そうなんよ。 ユリナさん、イオナさんてニニギさんの孫でクリスティナさんは娘さんなんよ。 旦さん知らんかったん?」


「全然……」


 そんな重要な話、一っ言も聞いてねーよ!? 


 「ホントにありがとね」


 ニニギさんはおもむろに顔を上げて再度礼を言われた。 そしてニニギさんが真面目な顔になる。


「それで話は二つあってね。 一つは我々サキュロスはこの宙域から離れて未開の宙域に向かう事にしたんだよ。 理由は――君達も知っている通り、教団の攻勢がこれまで以上に強まった上に冒険者ギルドが完全に敵に回ちゃったからね。 さすがにこれ以上は凌ぐの無理だから、いっそ誰も行った事ない場所に行こうってなってね」


 確かに。 サキュロスが現状取れる手立てはそれ位だろう。


「それで君達に確認したいんだけど、どうする? 我々の所為で君達も冒険者ギルドから目を付けられたからね。 放り出すなんて恩知らずな事、儂もしたくない。 我々と来るかい?」


 俺達はこのサキュロスで生活基盤を整えた。 それをまた別の場所また一からってなったらとても大変だ。 それにニニギさんの言う通り、冒険者ギルドからも目を付けられたし。 う~ん、正直な所断る理由がないんだよな。 ただ、両親には俺の無事だけ伝えたい……


「どうする、旦さん? ウチは旦さんに従うで」


「――ノア、両親にだけ俺の無事を知らせる事って出来るか?」


 そう、両親にだけ。 親父やお袋には心配掛けたからな。 姉貴や弟には――全然心配してないどころか俺に対して完全に無関心だったからな。 必要ないや。


「うん? それやったらメッセージカプセルで旦さんのオトンとオカンにだけ伝わるようにして、その後自壊するように設定すればウチらの痕跡消す事が出来るへ」


「……ああ、それで頼む。 ニニギさん、俺達も一緒に付いて行きます」


「そう言ってくれると我々としても助かるんよ。 此方こそよろしくね」


 ニニギさんは微笑んで俺達の答えを受け入れてくれた。


「……それでもう一つ、アスカ殿にお願いがあるんよ。 此方はアスカ殿が我々サキュロス離れる選択をした場合、話さんつもりだったんだけどね」


「はい」


「儂の娘クリス――クリスティナ、それに孫のイオナとユリナをアスカ殿の嫁にして欲しいんよ」


「はい。 ――はあっ!?」


「おお! 良かったんよ! 三人共、入ってくるんよ」


「いやっ! ちがっ――」


 ――うんです!と、言おうとして三人が客間に入って来たその姿に言葉を失った。 三人共、白色に薄っすら紫色の着物姿でクリスティナさんの薄紫の髪、イオナさんの灰紫の髪、ユリナさんの黒紫の髪に普段と違う髪型で着物の色と合っていてとても清楚で美しかった。


「旦さん、旦さん、鼻の下伸びてる」


「ハッ!?」


 ノアが半目で俺をニヤついて笑ってた。 イカンイカン! 俺にはノアという妻が既にいるのだ。 三人には悪いが断らねば――


「因みに、奥方のノア殿には既に了承を得ているのね」


「何で!?」


「旦さんはウチ一人に縛られる人やない。 ウチ以外の奥さんが出来るんは覚悟してたんよ ……まあ、まさかこないに早う出来るとは思わんかったけど」


 何とも言えない苦笑いで答えるノア。


「ノア……」


「それに旦さんも三人の事は憎からず思うてるやろ? 特にイオナさんは」


「グッ!?」


 図星を突かれ言葉に詰まる俺。 クリスティナさんとユリナさんは微苦笑して、イオナさんは照れて耳まで真っ赤になっている。 クッ! 可愛いじゃないか!


「ホントは他種族の男と子作りできたら良いんだけどね。 実はサキュロスって他種族と性交禁止してるのね。 理由は――他種族との性交は余りに相手に掛ける負荷が大きいから。 一言で言うと気持ち良すぎてやり殺しちゃうのよね。 だから儂ら、昔地球の日本に行ったんよ。 子作り相手を見つける為に。 なんせ、日本人とインセクターのDNEを掛け合わせて儂ら生まれたから。 だからあの地域はサキュロスと相性が良い相手が見つかり易いのね」


「じゃあ、日本人はサキュロスの先祖に当たるんですね」


「そうなのね」


「でも、サキュロスと相性がいい相手は他にいなかったんですか?」


「地球以外ではティルナノグ――妖精の星と呼ばれてたエノスとサノスが住んでた惑星ね。 でもね、RL帝国の影響が明治後期辺りから強くなったのね。 その上、教団の追撃が激しくなってきたから近寄れなくなったのね。 だから最近は地球にもティルナノグにも行ってないのね」


「成る程。 だから日本にはニニギさんの話が神話として残っていたんですか。 となると、高天原はサキュロス船団の事ですか?」


「そうなのね」


「ならニニギさんは天皇のご先祖様なんですね」


「それは違うのね」


「え?」


火遠理命(ホオリノミコト)――愛称・山幸彦くんは日本で知り合ったご近所さんの子でね。 ウチの息子の火照命(ホデリノミコト)――愛称・海幸彦くんの名前をもじってお隣さんが自分の息子に付けたんよね。 だから血は繋がって無いんよね。 だけど海神(わだつみ)の奴が山幸彦くんを誑かして大和国――日本を支配しようとしたのよね。 で、儂らの息子を酷い目に合わせた上に名前とかを利用されちゃったんだよね。 だからね、天皇とか神祖だとか、儂ら無関係だから」


「じゃあ、天皇は……」


「単なる他所の子ね」


「……」


 まじかよ! ま、まあ、日本人がこの真実を知る術は無いから大丈夫!


 俺はこの話を聞いて顔を引きつらせる事しか出来なかったよ……


「でね、さっきの話の続きだけど。 ノア殿からアスカ殿の身体データを渡されて専門家が調べてみたらサキュロスとアスカ殿の相性がこれでもかって言う位に抜群に良いのよね。 だから他に気になる娘居たら言ってね。 相手が居なければその日の内にお嫁に来てくれるから」


「いや、もう無理です。 勘弁して下さい」


「だいじょぶ、だいじょぶ! 若いんだから行ける行ける!」


 ニニギさんアンタ、ノアと意気投合するだけ合ってノアとセリフの言い回しがソックリだよ!


 覚とニニギのそんなやり取りを遠巻きに微苦笑で見守るノアとクリス、イオナ、ユリナ親子姉妹であった。



「ホスセリくんが海神に殺され、ホデリくんがホリオリくんとその息子の所為で引き篭りになって儂が一人子作り頑張ってきたけど。 そろそろ限界が近くて困ってた時に、良い後継者が現れて助かったね。 いや~、これでサキュロスも安泰ね!」


 サキュロスでは男性が全人口のおよそ3割を切っていた。 とは言え、解決策が無い訳ではない。 それは人工授精及びクローンである。


 ただし、これらには欠点も含まれていた。


 クローン技術で生まれた子供は能力が低く、精々がオリジナルの五分の三しか備えていない。 育成過程で能力を底上げする事は出来るが、時間が掛かり過ぎる。


 人工授精は親の組み合わせ次第で能力の高い子供がう生まれ易いが、ギフト持ちは何故か生まれない。


 それらが理由としてあるので、人工が極端に減少する非常時以外では自然交配を推奨している。


 其処に”飛鳥 覚”と言う優秀な後継者を得て、ニニギは心の底から喜んだ。


「だから儂、子作りに関してはもうゴールしても良くね?」


 コノハナ、イワナガ、年の割に美しく若々しい二人の奥さん達はニニギのその言葉にニッコリ微笑んでニニギの両脇を抱えて寝室に連れ去っていった。 それがニニギに対する答えであった。


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