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16,お邪魔虫が湧いて出た!

 だがちょっと待とうか。 その前に俺にはやるべき事がある。 それはノアと正式な夫婦に成る事。 そう! 夫婦の営み! 初夜である!


 ホーム兼自宅の寝室にてホロモニターの大きな画面に映し出される広大な宇宙空間を俺とノアは薄暗い部屋の中二人きり、ベッドの上で寄り添って眺めいた。


「旦さん……」


「ノア……」


 ノアは俺を潤んだ二つの瞳で見詰め返し、ぷっくりとした形の良い蠱惑的な唇を俺に差出す。 俺は堪らずノアのその唇に自身の唇を重ね、舌をノアの口内に半ば強引にねじ込みノアの舌に絡め蹂躙する。


「んっ! んんっ……!」


 ノアはその行為を拒否せず、成すが儘に受け入れる。 ノアから舌を抜き唇を離す。 銀色の糸が俺とノアの間で延び、妖しい輝きを放ちながら架け橋を作る。


俺はそっとノアをベッドに押し倒と途端、ノアの長く豊かな髪が金色の波の様に広がる。


「旦さん……来て……。 ウチの全てを旦さんのもんにして……」


「ああ、ノア……分った……」


 俺はノアの望みを叶えるべくノアの服に手を掛け脱がそうとした時――


「……ん? たんま、旦さんっ!?」


 ノアが突然俺の行為を手で遮る。


 ええ~! 此処まで来て拒否ですか! そりゃ殺生ですよノアさん~……


「ゴメンな、旦さん! お邪魔虫がしゃしゃり出て来よったんや!」


「お邪魔虫?」


「船団の下方、6時方向から無人攻撃機――戦闘用ドローンが接近! 数一万!」


「なっ! ドローンが一万だと! どっから湧いて出た!」


「近くのアステロイドの中に隠れてたみたいやわ。 其処から多数のエネルギー反応があるで。 ドローン専用大型母艦10、戦艦2、巡洋艦5、駆逐艦23。 ……エラい大規模な戦力やね。 今、ユリナさんのお母さん――クリスティナさんに連絡したよ。 直ぐに動くて。 相手は宇宙統一教団で間違いないやろて言うてはるわ。 でも、最近頻発しとる教団との戦闘や先のプラネットイーター騒動で戦力的にかなり厳しいみたいやね。 ウチらにも協力して欲しいって言うてきてはるわ」


「分った! ノアは俺と一緒に惑星裏に居る奴を叩く! 俺の武器は――ユリナさんにボット用の装備を出して貰うよう連絡してくれ!」


「了解や!」



 宇宙の暗闇の中、静かに行軍する艦隊があった。 その艦隊が所属する教団と長年に渡り抗い続ける存在、サキュロス。 教団にとってサキュロスとは人に仇なす獣――害獣と位置付けられていた。 理由は単純。 一眼、三眼を持つ人に似て非なるその容貌が彼らにとって醜く悍ましき姿に見えるから。 教団艦隊の目的はそのサキュロスに引導を渡すべく総力を挙げて挑む為だ。


「この艦隊規模です。 今回でさしもの奴らも終わりでしょうな」


 教団艦隊旗艦ブリッジに於いて交わされるヒュノスの男性司令官と艦長の会話。 艦隊は既に戦勝気分で浮かれていた。 その中で唯一人、渋い顔をしている艦隊司令官。 それに気付いた艦長が疑問に思い司令に尋ねる。


「どうしました司令? 浮かぬ顔をしておられますが。 何か心配事でも?」


「……先のオペレーションスターダストで彼奴らサキュロスにぶつけた天災級害獣――プラネットイーターが消えたのが気になる。 本来ならあれで彼奴らは一巻の終わりの筈であったのに……」


 そう、プラネットイーターを彼ら宇宙統一教団は多大な犠牲を払いながらサキュロス船団に誘導したのだ。 サキュロス船団の中心、サキュロスの母星を収容した船であるマザーシップを破壊出来れば後は恒星船を始末するだけだと彼らはそう思っていた。 だが実際には覚がプラネットイーターのマナを吸い尽くして倒した事実を彼らは知らなかった。


「フム……。 確かプラネットイーターが消えた原因はまだ特定出来ていないのでしたな」


「無人偵察用ドローンを放って監視していたのだがその尽くをプラネットイーターに破壊された。 アレらは元々マナ鉱石を原動力にしているからな。 辛うじて遠方で生き残ったドローンの映像は不鮮明で良く分からん。 まさかと思うが彼奴らめがプラネットイーターを倒したかもしれん」


「そんな事は有りえませんな。 あれは現存するヴィマナ級シップを総動員して倒せると言われている化物。 いくら高度なテクノロジーを持つ奴らでも倒せはせんでしょう」


「そうだな艦長。 私の考え過ぎだ。 忘れてくれ」


 二人の会話が丁度終わったの見計らったように艦内に警報が鳴り響き、オペレータが慌てて報告する。


「サキュロス船団から此方に向かって急速接近する艦あり! なっ!? そんな!?」


 動揺して慌てるエルフのオペレーターの女性。


「どうしたオペレータ! 報告は正確にしろ!」

 

 オペレーターに一喝する艦長。


「た、大変です! ドローン全機に回線エラー発生! 此方の信号受付けません! しかも全機此方に引き返して来ます!」


「何だと!? クラックされたのか! 直ぐに専用回線でワクチンを送れ!」


「ワクチン送ります! !? 駄目です! ドローンのプログラムが物凄い速さで書き換えられてワクチンが無効化されました!」


「馬鹿な!? 一万のもの数のドローンをそんな一瞬で!? はっ!? まさかあの船、ヴィマナ級シップか!!」


 異常事態にこのままでは拙いと司令が強引に割って入り指示を出す。


「艦長! 残り一万のドローンをスタンドアローンで放出! 此方に向かうドローンにぶつけろ! その間に撤退するぞ!」


「しかし司令! それでは作戦が――」


「口惜しいが相手がヴィマナ級では我らに勝機は無い! ならば少しでも被害を少なく――」


「艦長! 艦のコントロール喪失! 生命維持系統以外のシステム反応しません!」


「何っ!?」

 

”ウチのAI人生で大事なイベントの一つを台無しにしてくれたアンタらを、ウチがタダで済ますと思うてるんか! アンタらの船の制御は全部掌握させてもろたさかい、もう逃られへんで! 覚悟しいや!”


 怒り狂ったノアが放送をジャック、全艦に向けて降伏、投降を呼び掛ける――と言うか叫んでいる。 その怒気と得体の知れない力により囚われた教団艦隊は戦慄する。 最早これまでと司令は降伏を受け入れる旨をノアに伝えたその直後、自爆シーケンスが開始され十秒後三十隻の艦船は無音の宇宙空間に爆炎の華を咲かせて散って逝った。



『おいおい……』


 俺達は出撃準備を整え、アストラーシュで宇宙統一教団の艦船が隠れているアステロイドに向かった。 途中、ドローンと戦闘になったが、俺が時間を稼いでいる間にノアがドローンにクラッキングを掛けてプログラムを書き換えてドローンを掌握、それらドローンを引き連れアステロイドに隠れていた艦隊に今度は戦闘行為すらさせずに艦隊のメインコンピューターにクラッキングし瞬く間に艦隊を無力化。 屈服させたまでは良かったが相手が降伏を伝えたてきたら全ての艦船が自爆した。


”……ゴメン、旦さん抜かったわ。 まさか通信機に細工して敗北を匂わせるキーワードで自沈するよう仕込んでるとは思わんかったわ”


『降伏しようとした相手は知ってたのかな?』


”いや、知らんかったやろ。 知ってたら別の方法で知らせたやろうし”


 後味が悪い戦いだったが一応終わった。 取り敢えずノアと一緒に自沈した艦隊の周辺を捜索。 生き残りや何か目星しい物が無いか調べる。 その後、サキュロスの迎撃部隊が遅れて到着、調査に加わった。 


『ノア、そっちの方はどうだ? 何か見つかったか?』


”探査用ドローンで調べて見たけど使えそうな戦闘用ドローンが三百程あっただけやね。 生き残りに関してもあれだけ短い時間やったら脱出する暇も無いやろし……居らんやろな”


『ブラックボックス的なやつも見つからなかったのか?』


”軍艦には機密保持とかの関係でそういうの基本取り付けて無いんよ”


『そうか。 じゃあ、戻ってご飯にするか』


”せやな、旦さん”


 ホームに帰ろうと後ろを振り向いたら教団艦隊から奪った大量のドローンが控えていた。 これの事、すっかり忘れてたよ。


『……ところで、この戦闘用ドローンどうする? ウチでは飼いきれないぞ』


”ユリナさんに連絡したら丁度戦闘用ドローンが不足してるさかい改造して船団の方で引き取ってくれるんやて。 その替わり何かして欲しい事無いかてユリナさんが言うてるけど。 正直、ウチら設備や装備もそれなりのモン揃えられたし、お金もプラネットイーターの件でこのサキュロス船団の中やったら実質タダやし”


『俺はサキュロス軍の軍仕様ボットが欲しいぞ!』


”旦さんはブレへんな~。 ウチは今んとこ何にも無いよって別に要らんわ”


 俺達はドローンを引き連れて船団に帰る事を迎撃部隊の隊長さんに伝えた。


”アスカ様、ノア様ご協力感謝します! 我々はもう暫くこの宙域を調査致してみます。 ご苦労様でした!”


『では先に失礼します』


 ――後日、クリスティナさんから連絡が入り、態々サキュロス軍の工廠まで案内してくれた。 其処で軍仕様のボットのカタログや実物を見せてもらったのだが。


「う~ん、微妙」


 そう、微妙に俺の好みから外れているのだ。 この際、軍用を諦めて競技用で我慢するか。 見た目だけなら圧倒的に格好いいし……ん?


 工廠の搬出口から輸送車両に載せられて今まさに運び出されようとしているボットに目が止まった。 白地に青がアクセントの如何にも試作機ですよと訴えている外観。 一目であの機体に心奪われた。 ロボ好きには堪らないよね、試作機。


「ああ、あれは性能試験用の機体なんですけどデータ収集が終わったので破棄処分にする予定です」


 工廠の案内役のモノアイの女性に訪ねたら処分するのだと言う。 ならばと工廠と軍の責任者にダメ元で要求したらすんなり貰えた。


「えっ、ホントに良いの?」


「はい、構いません。 あれは飽くまで今後の参考にする技術や機能を詰め込んだだけの機体ですので重要な位置付けの試作機でもありませんし。 でも本当に良いのですか? 一応、性能的には問題ありませんがもっと良い機体が有りますよ?」


「あれで構いません。 いえ、あれが良いんです。 寧ろ、あれでないと駄目です」


「そうですか。 其処まで言うのでしたら我々に文句はありません。 ただ、あの機体に不具合が出るといけませんので次世代の新型機をお付けいたします」


「別にいいのに」


 それ貰っても多分使わないよ? だって趣味で欲しいだけだし。 あれ一機あれば十分なんですけど。


「いいえ、我々にも作り手としてのプライドがあります。 次世代の新型機がアスカ様のお眼鏡に敵わなかったのが知られれば工廠は無能の集団と世に喧伝するのと同義なのです」


「いや、そんな大げさな」


「アスカ様。 アスカ様が思うよりもアスカ様がサキュロスに与える影響は甚大なのです。 わたくしからもお願いします。 どうか貰ってあげて下さい」


 其処までお願いされては気の弱い日本人である俺には断りきれなかった。 なので、いつか使うかもしれない時の為に機体をモスボール状態にしてもらい新型機も引き取とった。


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