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13,宇宙最強のミジンコ

 と、言うわけでやって来ましたサキュロスの本拠地、サキュロス船団! ところが……


「なんだありゃあーーー!!!!」


 取り敢えずアストラーシュと俺の修理が可能と思わるサキュロス船団に合流すべくユリナさんが覚えていた船団の予定航路に向かった迄は良かったが、其処には木星くらいのでっかいミジンコがサキュロス船団を追い掛けていた。


「あれはプラネットイーター! 害獣と呼ばれる生物の中では頂点に君臨する最も危険な生物ですよ! その名の通りプラネットイーターはマナに満ち溢れた惑星のマナを喰らい尽くす化物なんです!」


「なんでそんなもんが宇宙船団を襲ってるんだ?」


「旦さん! 船団の中心に高質量のマナ反応があるで! 惑星規模の大きさや!」


「私達サキュロスは母星をマザーシップと呼ばれる船の中に収納しているんです。 多分、それにつられてやって来たんだと思います」


 ブリッジのモニタに映し出されるサキュロスとミジンコ、アストラーシュの座標を見る。 あのミジンコ、見た目は鈍そうなのにかなり速い。 不味いな……このままだと追いつかれるぞ。 せめて、アイツの気を引ければ……。


「俺のマナ生成でヤツの気を引けないかな?」


「ん~、無理やね。 まだまだ能力が低い状態やから。 でも、近づいて旦さんのマナ生成とマナ器官に溜まっとる分のマナを……いやいや! アカン、アカンで! いくらなんでも無茶すぎるて!」


「そうです! もし、プラネットイーターの気が引けても今度はアスカさんが危険です!」


「でも現状、それくらいしか手がないよな?」


「「……」」


 沈黙する二人。 ノアやユリナさんが心配するのは最もだ。 俺だって出来ればこんな手段は取りたくない。 だが、アストラーシュや俺の体の修理が出来るのは宇宙でもあのサキュロス船団だけ。


「性能での機動力ならアストラーシュより俺の方が上だ。 それに無理だと判断すれば直ぐに撤退する」


「約束やで! 絶対戻って来いよ……」


「そうですよ。 私、まだアスカさんに助けて貰ったお礼、返してないんですから……」



二人に心配顔で見送られた俺はボット変身してにミジンコに向かっていた。 ユリナさんが俺のボットの体を応急処置ではあるが修理と調整を施してくれた。 今もフレームだけの状態であるが初めてボットに成った時より調子が良い。 これなら逃げる分には楽勝だ。 俺はミジンコに近づいてノアに教えて貰った方法でマナ器官からマナを放出する。 とは言えそんなに難しくはない。 臍の下に意識を集中してそこからマナが体外に出て行く感覚をイメージするだけだ。 これで此方に気が逸れると良いのだけれど。




『うきゃあああぁぁぁーーー!!!!』




 俺の考え甘かった! ミジンコの触腕?が無数に、それこそ一本一本を束ねて壁になって襲って来たよ! しかも四方八方から物凄い速さで追撃してくれるからミジンコから中々離れられない!


『うわっ、とと!!』


 前後左右、上下斜めに全力回避に徹する。 くっ! このままじゃあ殺られる! どうする! 一瞬逡巡したのが命取りに。 俺の右腕に触腕から生えた一本の触手に掠った。  その衝撃は凄まじく、肩関節から右腕一本もぎ取られた。


”旦さん危ない!!”


『しまった!?』



 その隙きに俺に殺到する無数の触手に絡め取られた。


『くっ! くそっ! 離せ!』


 どんなに足掻き藻掻こうが触手による拘束が緩まない。 更に最悪な事にミジンコが俺のマナを吸い上げ始めた。 不味い! このままだと干からびて死んでしまう!


 チュウ~、チュウ~


”待ってて旦さん! 今行くで!”


 チュウ~、チュウ~


『来るな、ノア!!』


 チュウ~、チュウ~


”!? 旦さん、なにすんねんなあ!!”


 チュウ~、チュウ~


 俺はノアに此方に越させないようクアルーンを通してアストラーシュに干渉し逆方向に向かわせた。 クアルーンは元々アストラーシュやノアが暴走した時、それを止める為の役割もありこんな芸当が出来るのだ。


 チュウ~、チュウ~


 しかし、このままだとノアまでミジンコの餌食になる! どうすれば……。


 チュウ~、チュウ~


『だーーー!! さっきから俺のマナをチュウチュウ吸って鬱陶しい! って、いうか俺のなけなしのマナを返しやがれーーーーーー!!!!』


 これ以上マナを吸わせまいと、俺は怒りに任せて臍の下、マナ器官に力を入れた。


『フンッ!!』


 途端、マナを吸われる量が激減した。 次いで今度は俺の方からミジンコのマナを吸ってやろうと試みた。


 チュウウウゥゥゥーーーーーーッ!!!!


 おおっ!! ダメ元でやってみたら出来た! しかも一度にかなりの量を吸い出せたぞ!


 チュウ、チュウ、チュウ~~~


 お? ミジンコのヤツ、俺にマナを吸われて慌ててマナを吸い返して来たぞ。


 チュウウウウウウゥゥゥゥゥゥーーーーーーッ!!!!


 俺はミジンコに吸われた倍以上のマナを吸い返してやった。 なんかこれ、楽しい。




 ――1時間後。


 チュウ………………、チュウ………………、チュウ………………


『ほらほら、最初の勢いはどうした。 そんなんじゃあ俺からマナは奪えないぞ』


 吸われれば倍吸い返すという行為を調子に乗ってやっていたら、ミジンコの元気が段々なくなってきた。 俺はまだまだ遊び足りんぞ!


 チュウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーッ!!!!


 俺は今までで最大量のマナをミジンコから吸ってやった。


 あれ? ミジンコのヤツ、ピクピク痙攣しだしたぞ。 一体どうしたんだ? 俺が首を傾げているとノアから頭の中に通信が入った。


”旦さん、一体何したん? 今、プラネットイーター死んだん、アストラーシュのセンサーで確認したんやけど……”


『マナを吸われたんで吸い返してた』


”いや、吸い返したって! 普通そんなん出来ひん……はぁ~、旦さんやからしゃあないか~。 ほんじゃ迎えに行くからアストラーシュの命令解除したって”


 失礼な事言われた気がしたが、取り敢えずノアの言う通りアストラーシュの命令を解除した。 迎えに来た二人が俺の腕を見て慌てて右腕を回収してくれた。 右腕の無い状態で人に戻った時には異常は見られ無いが、感覚は麻痺して満足に動かせなかった。 ユリナさんが直ぐに修理してくれたら感覚が戻ったので助かった。 どうやらボットモードで体の一部を失ったりするとペナルティーが発生する様だ。 これからは気を付けよう。



 サキュロス船団所属の大型宇宙船の格納庫内に誘導されて入ったら盛大な歓待で迎えられた。 自分達を救い、更に同胞までも救ってくれた相手だ。 歓迎されない訳がない。 ……のはいいけど、頼むから胴上げは辞めて! 恥ずかしいから! そして其処のカブトムシ! お前も楽しそうだからって円な瞳で胴上げに加わるんじゃない! ノアがビビって硬直しているじゃないか!


 胴上げ騒動の後、ユリナさんが事前に俺達の事を連絡してくれたので、軽いボディチェックと簡単なアストラーシュへの立入検査受けただけで済んだ。 ユリナさん、ああ見えて優秀な技術者なのだとか。 検査に立ち会ったツインアイの係の人が話してくれた。


「メインユニットがこんな完全な状態で残ってる超文明の船は見た事無い!」


「へっ!? 万能船アストラーシュ!? あの伝承に記された伝説の船の!?」


「メインコア? パーソナルAI? メインユニット壊れてもメインコアのノアさんが無事ならマナ次第で復元が可能!?」


「なにそれ凄い!? 今までに無かった機能を持つ新種の遺跡船だよ!!」


 モノアイの娘達がノアに群がって質問攻めにしていた。 それにしても見事に女性だらけだ。 男性は極端に少ない。 男は見掛けても一人か二人、多くても三人ぐらいだ。 胴上げされた時も男性は少なかった。 サキュロスは女性優位の社会なのか、もしくは男性至上主義で男は労働しないのかな?


 違った。 単純に男が少ないだけだった。 その為、男に危険な仕事はしない、させないがサキュロスの方針だと言われた。


 さて、俺は今サキュロス船団のお偉いさん達と話し合いの席が設けられた。


「この度は我らサキュロスを救ってくださり感謝します」


 先ずはサキュロス代表の長老からのお礼の言葉で始まった。


 サキュロスは三眼――トライアイのお爺ちゃん――長老を中心とした女性達、そしてインセクターと呼ばれる外見がカブトムシの知的生命体が一人加わっていた。 代表だけあって立派な角を持っている。 ノアが話してくれたのだが、なんとこのカブトムシ、宇宙超文明を築いた文明人であったのだ。 だからインセクターを見た時ノアが緊張しまくっていたんだな。


 彼らは文明崩壊後、かなり数を減らしながらも何とか生き延びた。 だが十二隻全てのアストラーシュを失った彼らに文明を再び再興する力は最早残さていなかった。 緩やかに滅びに瀕していた彼らは何とか種を残そうと自分達の後継者を生み出す事にした。 其処で彼らインセクターは自分達の遺伝子と繁殖力に秀でた生命体の遺伝子と掛け合わせて生命体を生み出した。 それがサキュロスの誕生だとか。 今ではインセクターはサキュロスにも秘密の場所で小規模なコロニーを築き、ひっそりと暮らしながらこのサキュロス船団と交易しているそうだ。


 サキュロス達との話し合いの主な内容はミジンコ――プラネットイーターの遺骸の権利に付いてだ。 プラネートイーターを調査した結果、希少な資源の宝庫の塊である事が判明した。 特に貴重なのはプラネットイーターの脳である。 プラネットイーターの脳はその巨体に反して手の平サイズの極小さい物。  ところが、プラネットイーターの脳は驚くべき事にワームフォールを発生させてそれを利用した仕組みになっているのだ。 現在の技術では光量子コンピュータ(光の速度で並行して演算処理が行えるコンピュータ)が最高で限界。 だがもし、この仕組を解明する事が出来れば宇宙におけるコンピュータ技術は新たなステージに突入するだろう。 それはコンピュータの知識が多少なりともあれば理解出来る。 特に俺の様なパソコン自作派なら尚更だ。


 俺としては別に譲ってもかまわないのだが。 さて、どうしたものか。 ノアと相談してみる。


「ホンマやったらアストラーシュの修理や改造して貰うんやけど、旦さんがプラネットイーターから仰山マナ吸収したから復元修復出来るんよ。 どないする?」


 俺のボットもそれにより完全な修理が可能。 しかし、ボットの熟練度が低いから体の改造や武装の開発がまだ出来ない。 それに可能になったとしても俺の場合、ボットの設計や開発に関してはノアとのリンクが必要不可欠。 オマケにそのノアの持つ技術情報は大昔のもの。 一応、HES連盟やRL帝国のデータベースに侵入してある程度情報は得ているが、サキュロスのそれと比べると月とスッポン、天地の差があるらしい。 よってアップデートにはサキュロスの協力が必要だ。

 

 で、出た結論が――


 プラネットイーターの権利は半分を要求。 脳に関しては此方に使い道が無いのでそちらに譲る。 その代わりノアのデータベースのアップデート、俺の体とアストラーシュの機能拡張や改造、武装やオプションユニットの制作等の協力。 俺達が今後船団を拠点として冒険者活動をする為の許可と船団内の各施設の利用許可。 後、サキュロスのアドバイザーを付けて欲しい――て、ところかな?


 特に拠点は寄る辺ない俺達には必要だ。 しかも、アストラーシュの完全な修理が可能なのは彼らサキュロスを於いて他にない。 アドバイザーは、今後彼らと関わるのなら色々手助けして貰うのに必要だろう。 ただ、サキュロスが種族的にどういった性格と性質を持つのかまだよく判からないので警戒は怠らないようにしておく必要はあるが。


「えっ!? それで宜しいのですか?」


 サキュロス側にそれら要求を伝えたら驚愕された。 この反応は当然と言える。 ノアの話によるとプラネットイーターの討伐は通常艦船を何十万、何百万隻揃えてもあっという間に殲滅されるので無駄。 HES連盟とRL帝国の所有するヴィマナ級艦船を総動員してやっと討伐可能になるレベルの脅威で、HESとRLが敵対している現状では討伐は実質不可能。 それを俺が単騎でやってのけたのだ。 もっと権利を主張しても文句は出ないだろう。 しかし今後サキュロス達のお世話になる事を考えれば彼らに恩を売っておくのは必要だ。 故にプラネットイーターの遺骸の権利は半分に留めておいた。


 サキュロス側は俺達の条件を飲むに当たって他者に迷惑を掛けない、船団内で危険行為を行わない、船団を危険に晒さない等の注意事項を守る事。 船団が緊急事態に陥った時の協力を要求してきた。 至極真っ当な要求だ。 なので俺達はその要求を飲む事を承諾した。


 インセクター側はサキュロスがそれで良いなら構わないらしい。


 こうして俺とノアの新天地での生活が始まった。


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