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11,冒険者(チャラ男)に絡まれました

 ギシ、ギシ、ギシギシ……。


 艦橋に鳴り響くバネが軋む様な音。


「あっ! う…んっ!……」


 その度にノアが官能的で悩ましげ声を上げる。 余計寝難いんだが……。


 俺は俺がマスターと成り俺の持ち船となったアストラーシュの艦橋で急造の簡易ベットでノアと

愛を育んでいた。 とは言っても別にエッチな事をしている訳ではない。 ただ、一緒のベットでお互い普通に寝ているだけだ。 エッチに関してノアは”別に構へん、寧ろウェルカム!”と言ってくれてるのだが……。 地球を不本意な形で出ていく事になった俺としては正直、今はそんな気分になれそうもない。 それに、この音。


 ギシ、ギシギシ、ギシギシ――


 家鳴りが喧しい事この上ない。 原因はアストラーシュにくっついた岩の塊が所々亀裂が入って擦り合っているのだ。 流石にこんな煩い状況ではムードもヘッタクレもない。 早く修理して落ち着きたい。 と、思うのだが他にも問題が。 なんと現代の技術ではアストラーシュは応急修理は出来ても完全修復は不可能なのだ。 唯一の方法は大量のマナを使用しての量子変換を応用した瞬間修理修復なのだが、それにはマナ鉱石と呼ばれるエネルギー資源か俺のギフト《マナ生成》の能力が必要なのだ。 だがマナ鉱石は非常にお高く手が出ない。 元手がタダの俺の能力にしても現在の低スペックな状態では装甲十枚分が精々らしい。 マナ器官に溜まってる分にしても先の戦闘でかなり消費していた。 それでも大したものだとノアは褒めてくれたが。 因みに俺の《ボット》のボディは放って於いても《ボット》の能力で勝手に自己修復する。 ただし、時間が掛るのでパーツ交換などして修理した方が早く済む。 しかし、この方法もアストラーシュと同じ理由で困難なのだ。


 そろそろ俺も眠くなってきた。 起きた頃には目的地に着いているといいな。



 さて、アストラーシュと俺の体を修理する為、やって来ましたHES連盟に加盟している辺境のド田舎――資源惑星カント。 此処にはヒュノス(人型人類)が居住している。 他のエノス(妖精型人類)やサノス(機械型人類)はこの惑星には交易で訪れる商人や企業関係者以外が訪れる事は滅多にない。


 惑星に近付くと防衛網に引っかかるんでない? と、ノアに聞いた所。


「旦さん、アニメや小説に影響され過ぎやん。 辺境の惑星にんな上等なもん無いで。 在ってもお飾りやし」


 と言われた。 資源惑星なら儲かってそうなものだが実は他にも問題が。 上層部による横領や賄賂が横行していて其処まで予算が回らない。 故に非合法犯罪組織がのさばれる訳だ。


 俺達の身分証の個人データは既にノアが偽造済み。 個人データはHES連盟のデータバンクにクラッキングして偽情報を登録済み。 身分証は本物を作る設備を使って作られているからバレる事は無いらしい。 ノアには驚かされてばかりだ。 因みに俺の現在の姿は十六歳。 ホントは二十歳にしたかったのだが時間が無くて断念した。 次いでに言うと服装は俺の方はノアが回収してくれた俺の私物でジーパンに紺の長袖の上にジージャンを羽織っている。 靴は千円で売っていた安物で使い古した白のスポーツシューズ。 ノアは何処かで手に入れてきたグレーのビジネススーツに黒のパンプス。 ノアは元が良いので何を着ても似合うな。


「ノア、一つ質問」


「何や旦さん」


「資金はあるのか?」


 これはとても重要だ。 金が無ければ資材を売ってもらえない。 これは宇宙においても変わらない真理だ。


「んなもんある訳無いやん。 ウチ、一文無しやし」


「じゃあ、どうすんだ? 働いて稼ぐのか?」


「金は無い。 けど、売リもんは仰山あるから心配しいな」


「因みにその出処は?」


「……旦さんは知らん方がいい」


「……了解」


 世の中知らない方が幸せな事もある。 社会に出て働いていた頃、企業の闇にも触れた事がある俺はその事を十分理解していた。 勿論、俺が犯罪を犯した訳ではない。 ただ、一般の普通の企業でも法令違反などを下っ端社員に強要するのは現代社会ではよくある事、とだけ言っておこう。


 俺達はノア曰く交易品と成りそうな物品を売りにこの惑星では都会に当たる中央の都市トカに遣ってきた。


 アストラーシュはステルスモードで近くの空き地に止めてある。 装甲に引っ付いていた岩ごと周囲の景色に溶け込んだのはちょっと驚いた。


「何処で売るんだ? コネや販売ルートが無い俺達じゃあ、買い叩かれるんじゃないのか?」


「旦さん、世の中何処にでも闇は生まれる。 そんで、そんな闇を利用する奴は絶えへん。 其処を利用するんや」


「成る程」


 ノアは闇ルート――非合法組織が運営している販売ルートを利用すると暗に示唆していた。 全く逞しい。 そして頼もしい。 俺には過ぎた嫁だ。 ただ一つ悲しい事実、そんな俺の嫁はAIのサイボーグな事だ。


「旦さん。 今、失礼な事思わんかった?」


「いや? 気の所為だろう」


 そして何故か感が鋭い。 クアルーンを通して俺と繋がっている所為か、それともこれが世に言う女の感なのか。


 因みに言語は俺の中のクアルーンが自動翻訳してくれるので覚える必要はない。 武術に関しても

クアルーンがアストラーシュのマスターを探す為、長きに渡り人類を調査、観察し続けたデータの中に達人達が身に付けた数々の技があったので必要なものを何時でも使える様アクテイブにしている。 知識や経験を身に着けずに武術を極めた者の技を使える。 これぞ正に卑怯技――チートであろう。


 ノアが何処で手に入れたのか判らない闇ルートの場所を示した地図データを元に道を進んで行く。 俺はそれにボディガード役として付いて行く。 ボディーガードとして役に立つかは別問題だが。


「此処や」


 閑散とした裏通り。 更に細くて狭い通路を進んだ先にその場所はあった。 一見、何もない突き当りの壁。 しかし――


「え~と、確かこの辺に……ああ、在った在った」


 ノアが手探りで建物の壁の一部を弄ると、壁に偽装された出入り口を開ける認証データの受信機器とボタンが現れた。


「ちょちょいのちょいと、ポチッとな」


 ノアが人差し指から偽造認証データを読み込ませ、古臭い言い回しを呟きながらボタンを押すと簡単に開いた。


「この程度のファイアーウォールとセキュリティでウチは防がれへんよ」


 俺達は開いた入り口から建物内へと侵入した。



 排他的な雰囲気を想像していたのだが、中は以外にちゃんとしていた。 何というか、企業のオフィイスそのものだ。


 ノアは受付で目的の場所を、物資の買い取りや資材の購入窓口の利用予約をした。 順調に交渉が進み商談が成立。 どうやら目標以上の成果が出たらしい。 ノアはご機嫌だった。


「まさかこんなに儲かるとは思わんかったわ。 それに資材も意外と安うで手に入った上にオマケもしてくれたし。 これで当分凌げるわ」


 オマケしてくれたのは多分、ノアに下心があったからだ。 担当の交渉相手の男はノアの美貌と美しいプロポーションに見とれて鼻の下を伸ばしていたからな。


 資材は俺達が直接保管倉庫赴きノア自身が持つ位相空間に収納した。 その光景を目撃した担当者にはギフト持ちであると匂わせてボぼかしておいた。 ノアが古代の貴重な宇宙船と知られると厄介だからな。


「それじゃあ応急修理が出来次第、予定通り冒険者ギルドに行けるな」


「そやな。 それにウチと旦さんやったら直ぐに最上位クラスの冒険者になれるから稼ぎ放題やし。 そしたらマナ鉱石仰山手に入れてアストラーシュ完全に修復出来るし」


 俺はノアの意見に頭を振って否定する。


「そうしたいのは山々だけど俺が目指すのは中堅冒険者だ。 下位過ぎると舐められるし、上位過ぎても厄介な仕事を押し付けられるだろ? 中堅なら束縛も少ないし、余り目立たつず自由に動けるから」


 俺にはアストラーシュと言うロストテクノロジーの塊のとんでも宇宙船があるのだ。 HES連盟やましてRL帝国に見つかるような目立つ行動は慎みたい。


「旦さんの言わんとしとる事はウチにも理解できる。 まあ、中堅冒険者やったら自前の船や人型機甲機械――ボット持ってても不思議やないし。 せやな。 確かにそれやったら目立たんやろ。 よし、解った! ほんならウチらが目指すんは中堅冒険者や!」


 一通り今後の目標が決まった直後、男達がノアに声を掛けてきた。



「よお、美人さん! 中堅冒険者に成りたいのか! だったら俺達の仲間になんない?」


 5人のチャラチャラした見た目二十歳くらいの若い男――チャラ男達がノアに話し掛けてきた。 俺? 勿論、ガン無視さて空気扱いですよ。


 にしても、チャラ男達の後ろ。 年齢は目隠ししているのでイマイチ判らないが多分二十歳前後だろう――コートを羽織って両腕を施錠されている女性が気になった。 なんせ口を見た事ある器具で塞がれていたのだから。


 ――ボールギャグ。 俺も実物を嵌めたところをお目に掛かったのは初めてだ。 確か猿ぐつわの一種でSMや拷問目的で使う、舌を噛み切らない様にする器具だっけ? ……しかしこんなもん、エロ漫画くらいでしか見たこと無いぞ。 ホントだぞ?


「あ? 何見てんだガキ!」


「とっと失せやがれ! 殺すぞ!」


 俺が女性を見ているのに気付いたチャラ男二人が俺を威嚇してきた。 俺、まだ冒険者に成ってないのにトラブルに見舞われてしまいました。


「はいはい、さっさと退散しますよっ、と。 ノア。」


「せやな、旦さん。 用事も済んだし帰ろか」


 俺はノアを伴ってアストラーシュを隠してある場所まで戻ろうとした。


「ちょっと待って下さい。 君、その美人さんは置いてって貰おうかな?」


 一見爽やか風のチャラ男が俺の進路に立ち塞がる。 俺は眉根を寄せて俺の行く手を邪魔するチャラを見上げた。 どうやらこのメンツのリーダーの様だ。


「何か用かい、チャラ男さん?」


「チャ、チャラ男? まあいいや。 君、その人の知り合い?」


「俺の嫁さん」


「な!? ア、アッハハハ! 君、面白い冗談言うね!」


「なにが可笑しいん? ホンマの事や。 この人、ウチの旦那様なんよ」


 チャラ男達の目の前で見せ付ける様に俺の肩にしなだれ掛かるノア。 それを羨ましそうに見るチャラ男リーダー。 そして俺には嫉妬の炎をメラメラ燃やして睨みつけるチャラ男達。


「そ、そうなんだ。 でも、お姉さん――ノアさん、でいいのかな? さっきの話しぶりじゃあ中堅の冒険者に成りたいんでしょ? だったら、俺達と一緒に来なよ。 俺達中位クラスの冒険者だし、ノアさんだったら俺達の力で直ぐに中位クラスの冒険者に――」


「お断りや。 ウチは旦さんと一緒に冒険者に成りたいんや。 一昨日来なはれ」


 ノアはチャラ男リーダーの言葉を遮り、キッパリと断る。 その清々しいまでのノアの態度にチャラ男リーダーは口の片端を釣り上げて引くつかせる。


「お姉さん。 俺達、こう見えてももう直ぐ上級冒険者に成るんだ。 そしたら、困ることに成るよ? 俺達冒険者は上位の者が下位の冒険者の評価もしたりするんだ。 ……そしたら君達、中堅どころかずっと底辺で這い回るしか無いよ?」


 下位クラス冒険者を評価するのはお前達だけじゃ無いだろうし、お前達が必ずしも俺達を評価する担当に成るとは限らないだろうに。 


 その間にチャラ男リーダーは人差し指をノアの顎に載せ、自分の顔を近づける。


 おいおい、俺の目の前でなに堂々と人の嫁の唇奪おうとしてんだよ。


 俺は冷めた目をしてその指を横から割って入り、握りしめて捻る。


「あだっ! いだだだだっ!」


「旦さん!」


 ノアはこの隙きに素早く俺の後ろに隠れた。


「アンタら、いい加減しつこいぞ。 ノアは俺の嫁だって言ってんだろ? それに此処で騒ぎ起こしたらアンタらの方が困るんじゃないのか?」


 此処は非合法組織の懐の中。 こんな所で騒ぎを起こせば怖いおじさん達に睨まれる事くらい解るだろうに……。


 チャラ男リーダーは俺から拘束を振り払い、捻られた人差し指を擦りながら額に血管を浮かび上がらせていた。 どうやら相手は本気で怒った様だ。 怒りたいのは俺の方なんだが。


「あなた達、一体何をしているんですか」


 話しかけて来たのは一見人の良さそうな身なりの良い丸眼鏡を掛けた中年男性。 その後ろには厳つい顔したおっさんが俺達を睨んでいた。


 見かねた此処の職員の誰かが上司と用心棒を呼んだのか?


「また君達か……。 此処で騒ぎを起こせば二度と取引しないと言っておいた筈だが?」


「ロイクさん!? ち、違いますって! 彼女達の方から難癖付けてきたんですよ!」


 チャラ男リーダーの言葉に他のメンツも頷いて同意を示す。 お前らな……。


「と、彼は申しておりますが?」


「んなもん嘘に決まっとるやん」


「でしょうね。 デギ」


「はい」


 ロイクと呼ばれた男は嘆息し、後ろに控えていた厳つい男――デギを呼んだ。 デギはロイクの横を取り抜けチャラ男達の前に立つ。


「ガキ共――お仕置きの時間だ」


「え?」


 デギがそう言いと同時にチャラ男リーダーは床に沈んだ。


「げっ!」


「リ、リーダー!?」


「不味い!」


「逃げるぞ!」


 チャラ男達残り四人は状況を察し、リーダーを見捨てて逃げ出した。 アイツら逃げ足は早いのな。


「逃さん」


 逃げるチャラ男達に一瞬で追い着くデギ。 デギは追いついた勢いそのままに体術で四人を同時に気絶、無力化した。 哀れ気絶したチャラ男リーダーと四人の仲間達は駆けつけた警備員に連行されていった。


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