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銀色のバレッタ  作者: 織山 千蔓
本編
6/26

5.青色のバレッタ

 チェリーは小物を売っている店に銀を連れていった。

 チェリーは馴れた様子で店の奥の方まで行ってしまったが、銀にとっては初めてで、昨日のローズ学院の女生徒同様、入っていいものなのかと入り口で中を覗いていたが、チェリーが手招きしたので恐る恐る店に足を踏み入れた。

 その後チェリーは銀に髪飾りを勧めたが、銀はどれも着ける気になれなかった。

 その後二人は、いくつもの店を回った。


「銀、この青色のバレッタはどう?」

 日が暮れてから入った店で、チェリーが手にしたバレッタを見たとき、銀は驚いて一瞬動きを止めた。

 そのバレッタは、色は異なっているものの、昔ライルに貰ったバレッタとほとんど同じデザインだったのだ。

 ライルはバレッタを選んだだけで、買ったのは親だと銀は思っていたが、あれはライル自身が買ったものだったのだろうか。

 ライルのことを諦めるのなら、似たデザインのものではいけないだろう。そう思って、銀はそのバレッタを買う気にはなれなかった。

「えー、もう時間が無いよ。この店で最後にしようと思っていたのに。」

「なら、このリボンにする。バレッタとは大分違っているから。」

「リボン?……ああ。そっか。バレッタ以外も見ていけばよかったね。銀はいつもバレッタだったから、バレッタしか見てなかったよ。……あ、これは私が買うよ。」

「え?」

「早めの誕生日プレゼント。ほら、かして。」

「……ありがとう、チェリー……。」

 チェリーが支払っている間、銀はこっそり横目で青いバレッタを見た。

 それは、昔に欠けたバレッタよりも、ずっといまばゆい光を放っていた。


「銀、……あ、これだとリボンにしてもすぐにばれちゃうね。これから何て呼ぼう……リリア?」

「皆きっと、私の名前を知っていると思う……」

「そうだね……。」

 銀はしばらく考えて、

「リーチェ、でもいい?」

 親友の名前を並び替えただけの名前を言った。

 チェリーは驚きつつ、いいよと言った。

 銀はチェリーのリボンを返して、新しいリボンを受け取った。銀はそのリボンを早速使うことにした。

 新しいリボンは赤く、さくらんぼの絵が描かれているので、銀がバレッタを着けていた理由を知らない人達はきっと、チェリーとの友情を表すリボンだとしか思わないだろう。

 その後、チェリーは先程銀色のバレッタをどうするのか聞こうとしていのだと言ったので、銀はチェリーからバレッタを受け取ることにした。チェリーは自分が処分しようかと尋ねてきたが、銀は川に流すと言って受け取った。

 銀はチェリーに言ったのだから、本当に川に流してしまおうかと思い、川まで歩いた。橋から川を見下ろしたが、真っ暗で何も見えなかった。

 銀はバレッタを握りしめてしばらくそこに立っていたが、賑やかな声が近付いてきたのに気がついて、橋を離れた。


 その日、銀は夕食には間に合ったため、いつもより何時間も遅くに帰宅したことを家族は気付いていないようだった。

 ただ、リボンの事が気になっているようだったので、銀は友人に貰ったのだとだけ言った。

 次の日の朝も、銀はリボンをつけていたが、ライルへの態度の方に気を取られているのか、銀のことを気にしている様子ながらも、それについてはもう誰も口にすることはなかった。

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