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35話『モルモット殺人鬼!?』

 

 ☆― 一人称話 ―☆



『指名手配者の心理と行動特性』


 私の記事が掲載されている週刊誌、の横の別紙に視線が。特集記事の表題だ。手に取り、パラパラ。特集と言えども三ページ程度だった。


『何故彼らは、再び罪を犯すのか?』


 太字タイトルにある『彼ら』らしき、名と、過去の事件名、そして最終事件の概要が、リスト化されていた。聞き覚えのある、事件名もあった。


 この半年間で、指名手配中の容疑者や事件隠蔽し逃亡していた者たちが、次々と確保・・されていた。数ヶ月から何十年もの間身分を誤魔化し、気を潜めていた者たちが、だ。

 再び、殺害事件を起こした。自らの存在を知らせるかのように。それも自首ではなく、罪を重ねたのだ。


 その疑問を、犯罪心理学の専門家にぶつけていた。読んでみたがその返答こたえには、不満が残る。所詮犯罪界の部外者、と感じた。

 彼らの思考範疇で語らっているのは、大衆人が考えられる程度の内容だったからだ。


 ―『逃亡に困憊し、捕まりたかったから』

 ―『再噴させる何かが降り掛かったから』

 ―『犯罪者の血が再び騒いだから』

 ―『最初の犯罪者に感化されたから』

 ―『自らの最期を飾りたかったから』


 ……など。ネット上でも素人評論家たちが書き込んでいるが、それに色付けしたようなパターンだった。

 自信ありげに語られている相手との取材光景を想像するだけで、溜息が出てきた。

 そこで店の主人あるじに咳払いされ、雑誌を戻し、場を離れた。


「犯行者から直接聞きたい」と考えるのは専門家だけでなく、大衆人も同様だろう。

 しかしその欲望は、叶わない。

 その者たちは逮捕される前に皆、自害していた。約束された、シナリオのように。つまり真相は、逃避苦行圏から永住安泰地へ骨とともに、葬られることとなった。


『影で脅し操る者がいる』と、言い出す者が現れれば、それが『誰なのか?』と推理ゲームのように、興味を抱く人々が、ネット上で戯れた。マスメディア出演するようなコメンテーターまでも、SNSで追従していた。……情けない。

 中には『影の組織』によるものだと主張してくれた、フォロワーもいた。私の記事を読んでいた者なのだろう。

 連鎖する醜い事件の当事者以外は、ネガティブ感を払拭するための優越感から生ずるアドレナリンによって、自己主張という型のオーラを纏った。

 SNSのラインを眺めていると、不思議な感覚に見舞われそうだ。



『犯罪者の確保』は安心安全という点で、警察にとっても国民にとっても喜ばしいことである、はずだ。関係遺族にとっても、少しばかりか安堵する、はずだ。

 だが、類似したことが連続すると、人は新たな不安と疑心の念を抱かざるを得ない、状況に陥るだろう。そこから生じる第三者の勝手な想像と偏見が、メディアに記録され、そのまま大衆人の記憶になるわけだ。

 各々の見解が薄っぺらくなるのも、頷ける。


 事件のターゲットから外れていることを自覚する人々の心を患わし、世を煩わしていると、肌で感じてやまなかった。



 駅ホームで待っていると、週刊誌を持つ手をぶら下げたサラリーマンを、2人ほど見かけた。有り難いことに、私の記事が掲載されている、好意ある社のものだ。正確には社の人物に、だが……。


『モルモット殺人鬼!? 組織やみの狙いは富国兇兵ふこくきょうへい?』


 今号の記事のタイトルだ。

 指名手配や事件後逃亡している者らの『再犯事件』、社会しゃばに復帰するはずのない元死刑囚らの『無差別殺害事件』は、同じ匂いがした。

 そこに関わる奉術師の、闇深き匂い。それを企む者たちの、傲深き匂い。

 影組織ネスの意思が“力ある者”によって実演されている、と理解したからだった。そこは記事でも触れずにいたが、事件の犯行者は影組織に操られていること、犯行者も被害者であること、を綴った。


 動から激へ。確実に、濃さを増していた。



 ***



 あれだけの騒動だったのにもかかわらず、この事件、いや出来事はメディアに取り上げられる、気配すらなかった。ホテル外の野次馬によるSNS投稿はあったものの、一文字足りともメディア発信されていない。20人以上が犠牲になったはずだが……。

 現場となったホテル側も、ノーコメントの完璧姿勢。ありのままを公表おおやけできない事件、と承知はしていた。

 入院中の4人に、私は取材を申し込んだ。が、完全拒否。そう、彼らは死後約半日で蘇生よみがえった。まだ面会謝絶の札が取れず外科的治療が必要ということもあり、機会ときを待つことにした。

 話を聞かなければ、そもそもあの場にいた意味がない。己も巻き込まれた以上、何が何でも組織の計画全貌を暴きたい、一心だった。


「もうすぐ……視えてくる、はずだ」


 そう思っていた矢先なのに……先手を、打たれた。



 ☆―☆―☆



 ――『先日●●ホテルで起きました殺傷事件……被害現場となったホテル関係者様、さらに報道関係者様にはご理解ご協力を賜り、先ずは感謝の意を申し上げます。……犯人逮捕を最優先とし、完全非公開で捜査を致しましたところ、今朝6時30分頃、自宅にいた容疑者を、爆発物による殺害容疑で逮捕いたしました。名前は……。

 ……氏も、この現場に居たことが判っており、重要参考人として……』――


 日中、全国ネット局で放送された警視庁の記者会見。

 犯行に及んだキッカケは、ネット上で発見した『悪徳官僚たちへの制裁』という掲示板書込み。昨年11月、官僚らによる裏組織の存在と計画および犯罪行為を暴露した、週刊誌の記事に感化された33歳の男が、犯行を計画し、実行に及んだ。


 ――『……自称フリーライター柳刃公平、本名木戸(きど)駿平しゅんぺいを、共同正犯の疑いで身柄を拘束したという情報が入りました。警視庁捜査一課によりますと、4月27日に起きた……事件究明が急がれており、他に協力者がいなかったか……』――



 ***



 

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