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27話『元死刑囚による犯罪は現実』

 

「それが事実なら、国民は黙っていませんねぇ。隣に引っ越してきた人が、死刑囚かもしれない、ってことですから」


「恐い話です」


「疑心暗鬼になれば、近隣トラブルも起こしかねません。慎重に扱わないといけない事案のようですね」


「そのようです。……疑問なのは彼らが、そんな有難い環境を与えられながら、再び犯罪を決行、そして自害。……通常の思考じゃ考えられません。どんな交渉になっていたのか……」


「司法取引、って感じじゃありませんねぇ。……死刑執行を偽装してまで野放しにし、わざわざ事件を起こさせる……何か意味でもあるんでしょうか?」


「……TONPトンプ……不要分子……殺害……取引……」


 私は独り言のように、単語をつぶやく。


「老人、犯罪者、障害者、生活保護者……国益を損ねる不要な人間を抹殺する……奴らの姿勢は変わっていません。だからと言って、お金を使って元死刑囚らを養い、新たな殺人を実行させる……そこに意味があるのか、と問われれば疑問ハテナです。

 ……んんん……もし、死刑囚を実験台にした結果を基に、何かをやらかそうとしている、と考えると……」


「殺人を犯す……元死刑囚……実験台!? そんなこと、可能なんでしょうかねぇ!?」


「催眠術、マインドコントロール、あるいは何かしらの強迫観念めいた心理的誘導……その他に可能かどうか調べてみないと分かりませんが……」


 可能であることは知っている。ただ奉術師の存在を、彼には伝え辛らかったのだ。


「ただ元死刑囚による犯罪は現実です。これが実験の成功、となれば、次の展開があるはず……」


 この時、札幌の進藤氏と先日会話したことを思い出していた。2月に起きた札幌障害者施設殺傷事件の犯人は、死刑囚ではなかった。だが脳内で重ねていた。


「さらに大きな事件が起きると……?」


「否定はできません。奴らなら、そんなこと平気なはずです。目的のためなら手段を選ばない」


「目的?」


「まだ憶測の段階です。……組織の企みの一つに、法改正や新法制定があります」


「法、改正……ぇっ!? それを通すために、事件を起こしている、とでも?」


 首肯した。


「特定秘密保護法も世間で騒がれている安保法もそうですが、今模索されているのが、組織犯罪処罰法の強化。非合法で活動してきた奴らは、合法化することで活動をしやすくしたい。国力を増強するために、いえ、それさえも建前で、もっと大きな目的のために……」


「……面白い! 明らかになれば、法務省どころか、国政を揺るがすほどの大スクープですよ、柳刃やばさん!」


「……しかし、私たちにとっても危険高リスキーだということです。それに、確証を得るのは困難でしょう」


「そう、ですよねぇ……」


 残念がる相手がいた。


「お渡しした今回の原稿、わざとボカしていますが、それでも法務省は黙っていないでしょう。どんな圧があるか、楽しみです」


 軽く笑って見せた。



「……柳刃やばさん……」


 相手は、フェンス上にバランス良く缶を置き、ポケットから取り出した携帯灰皿に吸い殻を押し込んだ。缶を再び手に戻し、近寄ってきた。


「もし私を、いや会社を心配して隠していることがあれば……そのお気遣いには感謝します。ですが、それはご無用。自分たちの身は、自分たちで判断し、守ります。

 あなたが調べ、確証のあることなら、信じ難い情報であっても、私は信じることにしています。まっ、確かに危険要素は含まれていますが、それがスリリングなんですよ。

 ですから、いつでも、あなたのココに詰まっているものを、共有させてください」


 彼は私の胸を指差し、そして満面の笑みを見せてくれた。


「はい、ありがとうございます」


 去っていく相手の背中を、大きく感じた。だからこそ、私も守りたいと思っていた。




 その翌週、週刊誌に私の最新記事が掲載された。



 ☆―☆―☆



 

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