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25話『そう簡単にはいかんすよ』

 

 尾行対象を彼女に、変更。スーツを着た女が生保レディーであることは、すぐに判明。客先に出入りし、何人もの人たちと面談していく仕事。そして数日後、犯人が亡くなったことを知った砂は、彼女を祓毘師はらえびし、と疑った。ここからは私には真似できない、砂の特技……口説き。結果的に仲良くなり、付き合うことに。当然、生命保険にも加入していた。


「それでですね。彼女が妙にテンション低いんで」


(お前が高すぎるんだ)


「全て受け止めるから、話してみなぁ、と言ったら」


(お前にそんな度量あるんかい)


「『仁くん、私と結婚する気、ある?』って訊いてきたっすよ」


「ほ〜ぉ、で?」


「『モンちゃんとならOKあるよ』、って」


「ちょ、ちょっと待て。お前、それ、騙していることにならないか?」


 探偵であることも隠しているし、情報収集のために付き合っていると、思ったからだ。


「今は大丈夫っす。ホント、好き合ってますから!」


「ま、まじかぁ」


「はい!」


 その笑顔に、嘘はないようだ。


「そっかぁ、それならいいが……で?」


 彼女からの告白には、祓毘師などの特殊な単語ワードはなかったらしい。が、霊媒師みたいな力を備え、被害者遺族の怨讐心を取り除く仕事もしている、とのことだった。まさしく祓毘師の特徴だ。


「それで悩んでるのは、所属している団体が、なんかゴチャゴチャしてるみたいで」


(団体? 組織のことか?!)


「どっちに付けばいいのか、分かんなくなってて」


「(内紛か) それで、何と応えたんだ?」


「団体さん、抜ける方法もあるよ、って」


「(それじゃ組織の情報、聞けねぇじゃんかぁ) 彼女は何て?」


「抜けるのが怖いらしいっすよ。抜けると記憶とか力とか奪われるらしくって」


「(事実だからな) 本人は何故悩んでる?」


「今までの上からの指示だと、どうも拘置所に出入りすることになるって」


「拘置所!? 何しに?」


「それはまだ。んで、もう一つの誘いは、力をアップするために研修所へ行ってこい、って」


「(研修所?) 力アップするなら、悪いことじゃないだろう!?」


「確実じゃぁないみたいっすよ。確率が低いっていうか、その人の備え持つエネルギーで違うっていうか……でも、力アップした人はスゴい、らしいっす」


「凄いの程度は分からんが、抜けるのが難しいなら、悩む程じゃないよな。行きたいほうに行けばいい」


「そう簡単にはいかんすよ」


「何故だ?」


「拘置所に行く場合、お金が貰えるらしいんすけど、怖〜い兄ちゃんたちと接見しないといけないっしょ。

 研修所に行く場合、力アップするかどうかも分からんのに、2週間くらい仕事休まんといけないみたいすし……」


(結局、カネかぁ)


「それにぃ、その間僕と会えないのが寂しいって。僕もっすけど」


「はいはい(ごちそうさんです)。 ……で、どこの拘置所とか、研修所はどことか、言ってなかったか?」


「拘置所は東京っす。研修所の場所はまだ教えてもらってないみたいっすね」


「東京……拘置所で何をさせられるんだ? ……復讐代行……違う、公的おおやけにするのは危険すぎる。今までの方法で問題ないはずだ」


「復讐代行、以外の依頼?」


「そう考えて情報収集するしかない。研修所もどこか判れば、調べようがあるが。

 ……どちらにしても、彼女から情報を得るために、どちらかをお前が勧めるのは変だからな。その辺はうまくやってくれ。

 組織を抜けるのが難しいなら、考え続ける振りして、両方の話を何となく断るのも有りだろうしな。良き相談相手になってやれよ」


「勿論、そのつもりっす」


「それから忠告だ。お前は組織に近づいた。その分、危険が高まる。ヤバイと感じたら、手を引け。彼女とも別れろ」


「理解してるっす。でもその言葉、柳刃やばさんも同じっすからね。無理しないでくださいね」


「あぁ。……ところで、彼女、いくつだ?」


「41っす」


「(40、1!) ……婚約おめでとう」



 ***



 砂の話で、何かが脳内の霧を吹き消そうと、していた。『研究』という曖昧なワードが、差し替わろうとしている、タイミング前でもあった。

 エリート官僚たちによる裏組織は今、大きく分断されようとしていることも、直観した。『東京拘置所』と『とある研修所』に隠されている各々の計画が、相対するように。さらに、奉術師という『力ある者たち』の奪い合いに、なっていることも。事実として呑み込めた。


 ある仮定を作った。奉術師による人体実験、いや、実験ではなくすでに実践されている、と。それも、東京拘置所の中で……。



 ☆―☆―☆



 

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