23話『ギミッキングについてはこのくらいにして』
「……秘密にすると、後々厄介です」
「あ、そう。……そうかぁ……んまぁ、いいかぁ、減るもんじゃないし、知ったところでレイちゃんが使えるわけないし」
「はい、ただ知りたいだけです、碧先生!」
女子高生は、再び姿勢を正した。
「分かりました。では秘密の講義です」
青年も、先生に扮する態度に。
「碧先生、その言い方、イヤらしいです」
薄目で見る女子高生。
「では、秘密にします」
閉眼し、俯く青年。
「秘密の講義、お願いします」
頭を下げた。
「では……」
含み笑い後、碧は語り始めた。
幽禍の命、つまり人間の命の維持には、ヴィタールネス(生命活動エネルギー)が不可欠。その一部のヴィタールネス転換、つまり生命活動エネルギーを情報活動エネルギーに変化させることが、ギミッキングの一つである、と言う。それによって、ヴィタリスト固有のレゾナ・ヴィタールと同期化させることができる。共鳴、協働、遠隔操作を可能にするわけだ。
ギミッキングした幽禍を空で儡れる距離は、直毘師の力量によるらしい。碧自身は半径約200キロ圏内が操作可能、伊豆海も同等レベルと予想していた。
二つ目は、命を通じて具体的な指示、術策を植え付けること。この時、闇に一種の錯覚状態を与えるらしい。例えば、怨念からの解放による歓び、である。
「ギミッキングについてはこのくらいにして、じゃぁ、幽禍が反応するか試してみよっかぁ」
「了解です」
「あの海岸あたりに幽禍がいくつかいるでしょ。このくらいの距離なら、彼らもそれほど抵抗ないはずだから。レイちゃんに興味あれば、寄ってくるからね。
自分が何者とか、何をしようとしているのか、発信してみて。コトバではなく、レゾナ・ヴィタールを漂わせながら」
窓際に立ち、実践してみる少女。ゆらゆらとクラゲのように彷徨う彼らから、寄って来る気配はなかった。何度トライしても、変化なし。
「はぁ~、来ないね、やっぱりムリみたい」
椅子に座り込む。
「ハハハッ命毘師に出来たら、俺たち直毘師の立場がなくなるよ」
「だよねぇ~。なんか疲れたぁ。……ちょっとお手洗いに」
「ごゆっくりぃ~」
男たちの視覚から、レイは消えた。同時に顔を合わせる2人。
「ね、嵩旡くん、ヤバいんだけど……」
「はい」
「レイちゃん、命毘師、だよね!?」
「そういうことになってます」
「何で来ようとしたんだろう? 今日は俺が抑えたからいいけど、一人の時にやったら、拙いよ、絶対」
「ですね」
「やっぱり俺、責任取れないよ」
「今更、ですが」
「直毘師の血、流れてるのかなぁ」
「それはない、と思いますが」
「でもさぁ、瞬間、命毘師とは異質のヴィタール、発したよ。幽禍が視えるのはさぁ、闇嘔を受けた副作用と思えばいいけど、動かすとなりゃぁ、話は別。少し変わってるとは思ってるけど、少しどこじゃなくなってきた。……そういやさぁ、去年夏のあん時、すんげぇヴィタール発したよね!?」
「そうですね」
「ばぁちゃんから聞いたけど、レイちゃんのお父さん、建毘師の血縁でしょ」
「はい」
「だから、あのヴィタールはそっち系かなぁ、って思ってるけど」
「かもしれません」
「でも直毘師とは違う。幽禍動かすことはできんでしょ、普通」
「……確かに、そうです、ね」
「レイちゃんが普通じゃないのは解ってるつもりだけど……でもなぁ」
「……どちらにしても、父に報告します。それから、幽禍に興味持たせないよう、心掛けます」
「そのほうがいいよ。できたら、の話しだけど」
「努力します」
困惑気味が続く2人は、各々ドリンクを飲み干した。物音に気づき、碧がその方向に視線を変えた。
「ゲッ!」
その碧を嵩旡が見た。
「こ、嵩旡くん、お、遅かった、みたい」
戻ってきたレイを見て、驚愕の2人。嵩旡によるシールドの外側には、浮遊する幽禍たちが、いた。
「あのぉ~、トイレで試してたら、来ちゃいました」
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