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18話『ところで今日は?』

 

 ***



 ――『……続報です。不動産投資に関する詐欺の疑いで、先週火曜に逮捕された、堤原昌一に関する新たな情報を、入手致しました。

 神奈川県警戸部警察署の調べによりますと、貸金庫にあった押収物の中に複数のパスポートを発見。堤原昌一は偽名であることが判明し、調査したところ、5年前の北海道・青森巨額詐欺事件の容疑者として、全国指名手配されていた、金ヶ木(かねがき)ひとし、と断定した模様です。この事件では、数人の被害者が自殺しており、早々の解決が求められていました。

 取り調べでは、複数のパスポートを使い分け渡航、手に入れたお金を国外での事業に使った、と証言しており、これまでの逃走経路やお金の流れ等を、さらに詳しく調べる、としております。また、パスポートは全て本物であることが判っており、入手方法についても調べる模様です。背後関係も含め、事件全容解明にはさらに、時間を要すると考えられます。

 さらに、容疑者逮捕によって事件は、大きな動きを見せております。北海道・青森巨額詐欺事件を追っていた、北海道第一テレビの取材陣によって、新たな情報を掴んだ様です。それでは、北海道第一テレビ社会部の吉祥寺さん、お願いします』――


『はい。こちらは北海道第一テレビ社会部です。……』――



 ベテランアナウンサーの声が、滑らかに流れるマスター室。そこから出てきた2人の男は、ドア前で別れた。ポッチャリ中年男は通路を歩きながら、スマホを取り出す。


<こんにちは、進藤さん。その節はお世話になりました>


 聞こえてくる、相手の声。


「いえいえ、コチラこそですよ。早目に情報ネタを頂いていたので、裏取りできていたのは、幸いでした。まさか、このタイミングで使えるとは……上も喜んでおります」


<そうですかぁ、それは良かったです。私もまさか、この時機に逮捕されるなんて思ってもいなかったので……>


柳刃やばさん、逮捕されること、実は知ってたんじゃ?」


<それはないです。横浜にいるなんて思ってもいませんでしたから>


「そうですよねぇ。でも、これで道議員の逮捕は時間の問題です。で、そちらは?」


<はい、こちらもある程度は……。

 金ヶ木は、昨年の五輪投資詐欺事件にも確実に関与しています。公表されてるのは被害総額18億円ですが、その何倍以上にもなるはずです。つまり公表できないお金。

 その事件に、現職政治家さんや財界人が絡んでいる、ということは、まだどこも掴んでないでしょう。ハハッ、でも金ヶ木が喋っちゃえば、別ですね。まぁ〜大凡、警察も公表できないと思いますけどね。心配なのは、奴が勾留中にられないか、ってことです>


「容疑者の心配まで……さすが、柳刃やばさんですね」


<私が心配しても、どうすることもできませんが、ハハハッ……そうそう、先月の施設の事件、悲惨でしたねぇ。現地、行かれましたか?>


「はい。地元であんな残忍な事件が起きるとは……。たまたま旭が近くに住んでまして、どこよりも早く乗り込むことが出来ましたよ。まっ、リポートはズタズタでしたけど」


「へぇ~旭さん、リポートしたんですか?」


「まぁ流れで……。リポーターが遅れて、仕方なく。……でも、あいつの緊張感がそのまま伝わったみたいで、評価はそこそこでした」


「ハハッ、それは旭さんもいい経験になったでしょうねぇ」


「『もう絶対やりません!』って泣いてましたけどね」


「それはそれは……ところで今日は?」


「実は、その事件のことで……。柳刃やばさんのご意見を伺いたくて」


<意見、ですか!? 私に分かることでしたら……>


 北海道第一テレビ(HDT)の進藤らは、ジャーナリスト柳刃と数度仕事を共にしていた。その相手に、事件の疑念を示した。取材で分かった、道警どうけい(北海道警察)発表との相違点。

 事件四日前、パトカーで連行されていた、という口コミ情報。札幌方面南警察署は『両親からの相談により、聞き取り及び注意勧告をしただけ。その日帰ってもらった』との説明。しかし以降の足取りが掴めないのは、「勾留されていたのでは!?」と予想しても不思議ではない。

 そして、少女の証言による犯人像のブレ。男の書き残した文面は、被害妄想的でありながら現実的。『天の使者』などの信仰的ワードは、一切なかった。


「あの組織が絡んでいるんじゃないかって思えたんですよ。……」



 

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