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ポンちゃんと、キャビンアテンダント おまけ ☆

一旦完結表示にしたのに申し訳ありません。

おまけ話が浮かんだので、追加投稿します。


『ポンちゃんと、キャビンアテンダント』ポンちゃん視点のおまけ話です。

※別サイトとは内容が異なります。

 鈍いノックの音がしたのは、切りの良い所まで辿り着いて読んでいた資料から一旦目を離し、凝り固まってしまった肩を回していた時だった。


 豊田さんのいる脱衣室の方からじゃない、部屋の扉の方からだ。今日はやけに訪問者が多い日だなぁ。俺は溜息を吐いて机から立ち上がった。


 U字ロックを掛けたまま扉を開ける。


「はい?」


 するとその隙間から響いて来たのは、聞き覚えのある声。




「お客様、お届け物です」




 ヒョコリと十センチほどの空間の向こうから顔を出したのは、なんと俺の妻である唯ちゃんだ。


「えっ」


 驚きのあまり一瞬頭が真っ白になる。

 何故ここに、唯ちゃんが?!


 隙間から笑顔を見せる唯ちゃんはヒラヒラと手を振り、囁き声で『あ・け・て~』とU字ロックを指差した。ビックリし過ぎて声も出せない俺は、慌ててロックを外して扉を開ける。


「どうして……」


 東京にいる筈の妻が、何故ここにいるのか。

 そして来るなら来るで何故一言連絡を入れてくれなかったのか。連絡をくれれば―――迎えにだって行けたし、美味しい食事処を調べて予約だって入れられたのに。


 呆気に取られて二の句も継げない俺の前を、スタスタと小柄な唯ちゃんが通り過ぎる。それからクルリと立ち止まり、小さな箱を俺の前に差し出した。




「ケーキをお持ちしました!」

「えっ?」




 そしてニコリと飛び切りの笑顔で見上げて来る。


「あ……!」


 そうか!漸く合点が行った。

 唯ちゃんが箱を持ったまま俺に一歩近寄り、爪先立って囁いた。




「ポンちゃん、誕生日おめでとう」




 なんと素敵なサプライズだろう……!


 感激のあまり俺は彼女に抱き着―――




「?」




 ―――こうとした瞬間、唯ちゃんはサササッと後退ってしまった。俺の両腕が空を掴む。


「なんで……」


 俺は彼女の後を追うように部屋の奥へと進んだ。唯ちゃんは眉を寄せてムッとした表情で抗議する。


「せっかくのケーキが、潰れちゃう」


 感激で頭に血が上って、小箱の存在を忘れてしまっていた。唯ちゃんは手に持っていたそれをテーブルの上にそっと置き、こちらに向き直ると今度こそ両手を広げてくれた。

漸く了解の合図を貰えた俺は、引き寄せられるようにフラフラとその腕の中に歩み寄る。


 柔らかな体に辿り着いて、ギュッと今度こそしっかりと抱き寄せた。


「……吃驚した……」


 吐息と共に言葉を吐き出すと、唯ちゃんがフフっと笑う声がする。


「サプライズだもん。驚かせようとして準備したんだから、吃驚して貰えて嬉しいよ?」


 胸がキュッと苦しくなる。両腕にギュッと力を込めて、彼女の栗色のふわふわとした髪の毛に頬を寄せる。まだ東京に帰る手段は無いわけじゃない。だけどきっと唯ちゃんはそんな事は言わないはずだ。俺は半ば確信を込めてこう尋ねた。


「今日は……泊って行けるんだよね?」

「うん、部屋取ってるから」

「……この部屋に泊まるよね?」

「どうしようかな?」


 クスクス笑って揶揄うように言うから、今度は俺の方がムッとしてしまう。


「俺はそっちの部屋に泊っても良いんだよ?」

「うーん、私の部屋のベッドで寝たらポンちゃん、はみ出ちゃうと思う……」

「なら、決まり。このまま泊って行って」

「実は最初からそのつもりだったりして?」


 小首を傾げて舌を出す彼女が可愛すぎて、堪らなくなってしまう。

 意地悪を言う口は塞いでしまおう。俺はその計画を実行しようとして―――


「あっ……」


 声がした。咄嗟に顔を上げると―――そこにいたのは。




「と、豊田さん……」




 すっかり忘れていた。彼女が俺の部屋に居たことなんて。


 迂闊過ぎる……!


 俺は慌てて唯ちゃんから体を離した。


 その後必死でいつものように取り繕ってみたが、どうやら俺が妻の事で頭が一杯になってしまっているのを、彼女に見抜かれてしまったらしい。




「えーとじゃあ、私戻りますね?お邪魔でしょうから……」




 ニッコリと微笑んで豊田さんはこう言ったのだ。


「え?!いや、その……」


 図星過ぎて、否定できない。俺の見え見えの態度に呆れたように、豊田さんはサッサと部屋を立ち去ってしまったのだった。翌日揶揄われる事も覚悟したが、フロントで会った豊田さんは何ともないような態度を取ってくれた。


 さすがCA、日頃から乗客のどんな場面を目にしても眉一つ動かさず対応しているだけの事はある。人のプライベートを揶揄う、とかそんな稚拙な態度を彼女がとる訳ないよなぁ。


 豊田さんの全く動じないビジネスライクな対応に、俺は改めて感心したのであった。

豊田さんの邪な気持ちは、ポンちゃんに全く伝わらずに終わりました。


オシゴトの宿泊だから、本来は奥さんを(CAさんも?)部屋に泊めちゃ駄目かもしれません。。。いつもなら唯ちゃんは東京で大人しく留守番していますので、今回はイレギュラーと言う事でお許しを!<(_ _)>


今度こそ完結します。

お読みいただき、ありがとうございました!

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