ポンちゃんと、キャビンアテンダント(6)☆
※別サイトとは内容が異なります。
慌てた私はトイレのドアをバンッ!と開け、彼の危機を防ぐべくサッと勢いよく部屋の中へ飛び出した……!
……が、扉を出たところは部屋の玄関スペースにあたる行き止まりだった。そして気合と相反して、造りのシッカリした扉は音もたてずに開いていた。既に部屋の奥に移動しているらしい彼等から、私は死角にいることになる―――と、いうことは……
先ほど尋ねて無遠慮に入り込んで来た女性と本田さんは。
ベッドのあるスペースに二人切り……?
妙に静かな向こう側を、壁の角から恐る恐る窺う。
汗がじんわりと額に浮かぶ。何故、話声すら聞こえないのだろうか?
先ほど出入口で行った本田さんとの遣り取りを思い出す。
『あの、違うんです。今ちょっと……良いですか?』
『今ですか?えーと……』
困ったように強張った顔。もしかすると。
ひょっとして……誰かがここに来る予定だった?いや、それにしては驚いたようなリアクションだった。ドキドキザラザラと胸が煩い。もしかして私の想像通りのことがこの壁の向こうで起こってしまって、あんな風に本田さんが強引に迫られていたりとか?そしてそのヒロインはここにいる私ではなくて……。
いやまさか、そんなハズ。だって私がいるんだよ?トイレに。
まさか夢中になるあまり私の存在を忘れるなんてそんなこと―――本田さんに限って。
目をギュッと瞑ってから腹を決め、そっと顔をのぞかせた。そこに見えたものは―――
「あっ……」
ギュッと小柄な女性を抱きしめている、本田さんの姿。
女性の顔は見えない。ただ本田さんが彼女の体に回している腕にふさっと乗っかる茶色い柔らかそうな髪の毛と、彼女のなだらかな華奢な体格と長いスカートでその性別が判断できるだけだ。
思わず漏らした私の声に、彼女の肩口に埋まっていた本田さんの顔が上げられた。
その瞳が驚きに見開かれる―――あ。もしかして、これ。
「と、豊田さん……」
パッと慌てて本田さんはその小柄な彼女から身を剥がした。と、言っても密着していた体を離しただけで、その細い肩に置かれた手はそのままだ。その狼狽え振りを見て理解した。
年に似合わずしっかりしていると評判の彼が……なんというか驚くことに。
どうやら完全に―――私の存在を忘れていたらしい。




