第7話
この街を見てみたら?と朝セリさんが提案してくれたので、することも特に思いつかない僕らはその言葉通りにしてみることにした。
「活気あふれる、というか様々な村から人が集まってきているみたいね」
「そうだね。お父さんもこの街に武器を売りに来ていたし、いろいろな村の商品が集まってくるみたいだね」
この街ではお金というものが比較的意味を成しているようだ。
僕らの村では、どちらかというと自給自足、物々交換的な経済だった。
武器屋はある程度僕らでも需要があるけれど、宿屋なんてものは基本的には勇者用に用意されたような店で、収入なんてものは普段ほとんどなかった。
それでも人々は盲目的に宿屋の職業をやめられないんだけれども。
セリさんはやっぱり、此処までお金が回っている街で宿屋なんて職業で、生活は苦しいのではないかという考えが頭をよぎる。
「お金は持ってないけれども、見てるだけで楽しいわ。見たこともない使い方もわからない物がたくさん!」
「でも、昨日話したように戦っていこうとすると、やっぱりお金はいるよねえ……」
「そうね。盾に、相手の目くらましや攻撃に使えそうな道具は欲しいわ」
「お金を稼ぐ手段を探してみないとね」
そんなことを話しながら街を僕たちは散策していた。
すると、ふと、街の広場の掲示板に、張り紙があるのを見つけた。
「“要人警護募集”だって。こんなのは僕たちはできないね」
「あら。でも見て、エク。この人はセリさんの宿に泊まって一日街を回るだけみたいよ。冒険についていくのでもなく、泊まる要人を警護するぐらいなら……。
装備品も支給、成果によっては差し上げますだって」
「それでも、怖いよ……」
やっぱり人の命を守ると聞くと、僕は憶病になってしまう。
そんな僕を見てストラは少し意地悪に笑って言い放った。
「要人も警護できないで、大事な大事な私を守れるのかしら?」
「その言葉は卑怯だよ、ストラ!」
「卑怯でも何でも知らないわ! 私たちの環境は変わったのよ。私たちも変わっていかなくちゃ」
僕はこういうとき、ストラを尊敬する。
彼女はいつも、何処までも進んでいこうとする。
「この仕事をやりたいなら……セリさんに連絡を、だって。じゃあ宿に帰ったら言ってみよっか」
「ええ。大丈夫よ、どれだけエクが不甲斐ない目を見せても、私がしっかりと守って見せるわ」
ストラは力強い笑みを見せる。やる気満々みたいだ。
このやる気は、いつぞやの魔力テストを想起させる。
「ストラ、ファイアで火柱は出さないようにね……」
「あ、あれは幼かったから、コントロールの概念を知らなかっただけよ!
目の前で火柱が上がって当の私が一番怖かったもん! エクこそ、筋肉痛にならないようにね!」
「はいはい」