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第3話
床がある。
つまり自分は天井にいる? そんなことはないはずだ。
「エク、目覚めたのね」
左手をつかまれる。
目だけを動かすと、視界の端にはストラがいた。
つまるところ、自分が床だと思っていたものが天井だったということで、自分はベッドの上にいるということか。
どこか冷めきれない浮遊感の中でぼーっとそう思う。
「おきたの?」
「あっはい! 目覚めました」
知らない声がする。誰だろう。
そういえば自分はどうしてここに?
誰かが自分に近寄ってくる。
「そー。それはよかったー」
水色の髪の毛が視界に入る。
「しんどければねてていいしー、おきたければおきてもいいしー」
深い深い藍色の瞳に吸い込まれそうで、それでいて目をそらせない。
無表情のままただ彼女は言葉を紡ぐ。
「わたしは宿屋、だーよ? 宿屋のセリ。あなたはー?」
「エク、と言います」
「そ。ま、この宿屋はゆーしゃサマ?の為にあるからねー。普段はオキャクサンとかいないから、ゆっくり泊まってってねー。
兄妹で積もるハナシもあるかもしれないし、夕ご飯できた時にまた呼ぶねー」
そういってセリさんはドアを閉めると出ていった。