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プロローグ
今までの思い出が赤く燃え上がっていくのと同時に、心も熱を取り戻したのを感じた。
「ストラ、旅に出よう」
声に怒りがにじみ出る。
夜の空に揺らめく炎、消えてしまった彼ら。
吠えることしかできなかった。
「もう僕は、誰も彼らのかわりに現れてほしくない」
「もう僕は、魔王に、国王に、勇者に、登場人物たちに、僕たちを殺してほしくない」
「一日たてば名前の違う、同じ年齢のやつが現れるなんてこりごりだ」
「そしてそのせいで命が軽くみられるなんて、耐えきれない」
「僕は――登場人物になりたいッ!」
「形骸化した登場人物たちをぶっ潰してやる! 僕たちだって唯一無二だってことを思い知らせてやるッ!!」
口から出てくるのは、今まで考えることもしなかった想い。
そっと彼女の方を見ると、彼女は笑ってこう言った。
「私もよ」
彼女の手を取り、歩みだす。
一歩踏み出す村の外への境界線は、今まで僕らが踏み越えたことがないもの。
パチパチパチと燃える村が僕たちを送り出す。
村が朝日に照らされる前に、こうして僕らは、赤く燃え盛る村と別れを告げた。