筒ノ中
初めての投稿になります。
まだまだ未熟者ですが、度々書けたらと思います。
私の故郷は、かなりの田舎で、電車は通らず、バスが日に数本だけの小さな村。
家も数えるほどしかない。
私は年子3人兄弟の末っ子として生まれた。長男の昭良は、文武両道の好青年。次男の定良は、勉強成績や運動神経は並程度だが、人徳があり、その周りにはいつも友人がいた。
私が小学5年の6月9日。
その日はかなりの雨が降っていた。
突如2人の兄は行方不明になった。
村中の人が探したが見つからず、警察に通報。
明くる日、6月10日。雨は晴れていた。
村の空き地にある、土管を積み重ねた、子供達のたまり場のような場所があった。
2人の死体は、その土管の中で発見された。
警察の発表によると、死因は出血死。刃物で数ヵ所刺されていたそうだ。
皆ご近所さんのようなこの村では、村民のアリバイはすぐに問題なしと確認がとれたようだった。警察の見立てによると、村の立地的に考えると現実的ではないが、犯人は村の外から来た人物であろうとのことだった。遺体の側にあった包丁からも、指紋は検出されなかったようだ。警察の捜査は思うように進んでいないようで、犯人の特定はできずじまいだった。
私はしばらく、立ち直れずにいた。悲しかった。ショックが大きすぎた。そんな私を、皆心配してくれた。あまり話したことのないクラスメートも、励ましてくれた。
ふと考えた。
兄達は、どんな想いだったろうか、と。
きっと、痛かっただろう。恐ろしかっただろう。寒かっただろう。
私はまた、悲しくなった。
悲しくなったが、父や母、新しくできた友人や、その他村中のたくさんの人が、私を支えてくれた。
私は嬉しかった。人の優しさが身に染みるようだった。慣れていない分、余計にそう感じた。
県外のそれなりに有名な大学に進学し、そこそこ名のある企業に内定を貰った私は、兄達の眠る墓に来ていた。
2人とも、ありがとう。
忘れないよ、ありがとう。
あの雨の日。
あの筒の中で言えなかった言葉を伝え、私は墓を後にした。
ありきたりで、すみません。
次はどうしようか…