二度目です(凌駕詩織)。
幸せな人生でした。大きな失敗はしましたけれど愛する家族に恵まれ曾孫まで見る事が出来ました。大好きな笑顔に囲まれ私は永い眠りについた…
…筈ですのよ、確かに。73才の誕生日を迎える三ヶ月前に体調を崩してそのまま入院して、夫と苦労をかけた長男なんか号泣してたのを覚えています。最期まで笑って逝けたはずでした。なのにとうして赤ちゃんの姿に戻ってるのでしょうか?。
最初は介護されてるのかなぁとも思いましたけど母親らしき人に軽々抱き上げられて母乳を与えられているのですから。父親らしき人もだらしない表情でキスしてくるし。兄らしき少年も構って遊んでくれます。生まれ変わったと思うのが普通ですよね。
何故、私の意識が在るのでしょうか。私は眠る事にしました。この体に私の精神は負担が大きいのでしょう。とても疲れて眠いのです。もしも、この先また、私が目覚める事があるなら、それはもっと先の事なのかも知れないです。
と思っていたのに、なんと、たったの数ヶ月で私が起きてしまいました。
しかも、この子、ハイハイがが3ヶ月、掴まり立ちが5ヶ月、歩ける様になったのが8ヶ月。言葉は7ヶ月でマスターしていました。
凄いです。、ハイスペックすぎます。常識なんて無視です。
なのにお祖父様達は驚いていませんでした。お父様やお兄様はもっと早かったそうです。血筋ですか?。動き始めると同時に表情が豊かになり、よく喋る様になった為、お父様とお兄様の溺愛ぶりが半端ないです(上目遣いでおねだりしたら無敗の王者なのです)。
ただ、舐めてました。
私の部屋に盗聴器と隠しカメラを数台発見した時、背中に冷たい汗が流れましたよ。何時何が起こるか解らないからって…犯罪ですお父様。一人で動ける様になったからと言ってGPS機能付きの縫いぐるみ、アクセサリーは行動範囲が限られている1才児にはまだ早いです、お兄様。
護身術習おうと思ったのは仕方ないですね。危険は何処に潜んでいるか解らりません。自分は元より相手の身の安全を守らなければなりません。簡単に犯罪に手を染めそうな人達が山の様にいますから。
あらゆる知識、教養、武術を学び、元々身に付いていた物を合わせると完全無欠なハイスペックな令嬢が誕生してしまいた。
その結果、周囲からは兄同様に『神童』『麒麟児』などと呼ばれ始めました。
そして、気付いたのです。
この世界は嘗ての私が生きた時代から200年程経った世界だと謂う事にです。生前の名は伊織・R・レオンハルト(旧姓、凌駕伊織)と言い、今の名は凌駕詩織と言います。どおりでお父様とお兄様の顔に懐かしみを覚えた筈です。お二人供凌駕家の特徴を色濃く受け継いでいます。あの頃は、国内で有数の財閥でしたが、私がレオンハルト家に嫁ぐ数年前から国外に進出し現在では世界五指に入るほどの名家に名を連ねています。国内では向かう所敵無しです。レオンハルト家とは今も良好な関係を築けている様で安心です。
時代を遡れば私は確かに生きていたのです。会いたいです。大好きだった人達に…。
この日私は初めて心の底から泣いたのです。これが私の本当の意味での産声だったのかも知れません。
赤ちゃんの頃から数える程しか泣いた事の無い私の大号泣です。皆さんオロオロしていますが止まりません。結局、お母様に抱っこされたまま疲れて寝てしまいました。
こんな時男親は役に立たなかった様です。お母様に怒られてました。御免なさい、お父様。心配させて済みません。
でも、泣いてスッキリしたお陰か『今』を受け入れられる事が出来そうです。
13才の時、世羅家との縁談が持ち上がりました。
凌駕家当主のお祖父様が世羅家との関係を修復する為に、事実上世羅家の謝罪を受け入れる形で成立しました。
代々の凌駕家当主達は世羅家の在り方を調査させていました。そして、犯罪歴そして、犠牲になり理不尽に切り捨てられた方々に手を差し伸べていました。
その過程でかつて私を蔑み見下し嘲笑った高宮の家は破滅しました。世羅家が高宮の家を切り捨てたのが鷹久様の代だったと思います。
最後の良臣呼ばれた鷹久様はそれまでの世羅家の悪事を公表し法の裁きを受け入れました。被害に遇われた方々への補償等も出来る限り力を尽くしていました。世羅本家の多佳子様を献身的に支え見事世羅家を建て直したのです。
そして、鷹直様に当主の座を譲られる少し前に凌駕家へ正式な謝罪を申し出て下さいました。
謝罪を受け入れるかどうかは此れからの世羅の在り方を見て決めて欲しいと。
彼が当主になったお陰で世羅は留まれたのです。先代鷹直様、当代鷹臣様を見、私達の婚約が決まりました。兄は最後まで反対されていましたが。
私はこの婚約に関して条件を一つお願いをしました。
そし、其を両家とも受け入れてくださいました。
鷹斗様とはそれなりの距離を築いていたと思っていたのですが。
どうやら世羅家の残念な遺伝子は隔世遺伝していた模様です。
自分が言い出した事が何を意味するのか気付く事なく…いえ、気付こうともせずに。




