悪運の来襲〜彼が残してくれたもの〜
少し短いですが、中はしっかりです。
『くっ・・・ここどこだよ・・・』
俺はゼウスに弾を撃ち込まれてここに来たんだが、周りの景色は白、地面も白、おまけに空まで白だ。しかも人がいない・・・まるで俺と世界が対になっているようだ・・・暇でしょうがねぇ・・・ここに来てからどれくらいたったかも知らないし、何より歩くのに疲れた。出口どこだよまったく・・・
『くそっ、あー暇だ!・・・ん?』
右ポケットを漁ると、紙が一枚出てきた。そして反対を漁ると、銀のナイフが出てきた。
『この紙・・・確か。』
そっと開くと、咲夜と俺が紅魔館の門の前で並んでいる写真が映っている新聞の切れ端だった。
――――回想――――
射命丸「終夜さんって、写真撮ったことあります?」
『あるが・・・どうした?』
射命丸「咲夜さんが言ってましたよ、「明日は私と終夜が付き合い始めて一周年なのよ、祝いなさい?」って。」
『あぁ、それでか、お前らしいな。』
射命丸「写真はあげますし、新聞にも載せたいのでどうかなと。」
『また変な記事書くなよ?』
射命丸「大丈夫ですって、記念に残る新聞にしますよ!」
射命丸「咲夜さん、緊張しすぎです、もっと笑って!」
咲夜「だ、だって記念写真だなんて・・・」
『大丈夫、咲夜は可愛いから。』
咲夜「〜〜〜///」
射命丸「はぁ・・・もうこの写真カラーで載せてぇ・・・撮りますよー!はい、チーズ!」
―――――――――――
『ふふっ、いい御守りになってくれたのかもな。』
そしてふとナイフに目をやる。
『咲夜が御守りにくれたナイフ・・・使うか。』
俺はナイフを握りしめ、エネルギーを溜め始めた。
『ここには光のエネルギーが腐るほどある。これを力に変え続けろ・・・俺ならできる、信じるんだ、咲夜が俺を信じてくれてる分、俺が返さなくてどうする・・・咲夜、力を貸してくれ・・・うぉぉぉ!』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
side咲夜
咲夜「ここよ、一番因果が集まるのは。」
鳩「これは凄い・・・因果が二百・・・いや、五百ある!」
咲夜「終夜はね・・・毎日この里に来て、私達紅魔館の住人達がどれくらい安全かを話してくれてるの。だからたまに私やお嬢様が里に降りても、誰一人だって怯えないわ。異変の時だって、この人達に被害を与えないように霊夢と協力して結界まで張って・・・それなのに毎回異変が解決すると謝りに行く・・・終夜はそんな人なの・・・」
私は終夜の優しさに惚れた。これはまだ終夜にも言っていない事だ。彼はどんな妖怪よりも強くて・・・どんな神より優しくて・・・そしてどんな人間よりも協調性のある人だ。私はそんな彼を絶対に支え続けると誓ったのだ。たとえ契約が無くなろうとも、彼が違う世界に消え去ろうとも、私は彼を支え続ける。
咲夜「人間の里の皆さん!」
人がぞろぞろ集まってきた。
咲夜「今・・・私の彼氏、黒崎終夜が大変な状況に置かれています・・・彼を助ける為に・・・どうか、彼に縁のある品を貸してはいただけないでしょうか!私は彼を助けたいのです・・・」
自然と涙が溢れてくる。
咲夜「どうか・・・お願いします!彼を助けてくださいっ!」
・・・暫く静寂が続いた。ふいに私の服が引かれた。振り返ると、少年が私を見上げていた。
少年「これ、終夜お兄ちゃんが寺子屋で折ってくれた鶴。これ使って。」
涙。
八百屋「これ、終夜君がくれた鉢巻き。これ着けたら格好いいって言って、くれたんだ。」
おばさん「終夜君が異変の時に配ってくれた手拭い。皆柄が違って、全部手縫いだったんだって。」
青年「落ち込んでた時に渡された木刀。これでよく稽古つけてくれたんだ。」
おばあさん「あの子がくれた御守り。長生きしてくれって言われて、嬉しかったよ。」
少女「運動会にくれたミサンガ!お陰で一位になれたんだよ!」
あれよあれよと集まってくる品々。私は涙を拭おうとはしなかった。
咲夜「ありがとう・・・ありがとうございます・・・」
ひたすら泣いていた。彼の残してくれたもの・・・それは沢山ありすぎて、私には到底作れないものだった。
鳩「咲夜さん・・・貴方の彼氏は凄いですね・・・」
鳩さんが呆然として言ってきたので、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で言ってあげた。
咲夜「凄いでしょう、なんてったって、私の彼氏は黒崎終夜ですから。」
終夜「はぁ・・・あと何話で生き返れる。」
あと二、三話かな。
咲夜「人里の皆さんは優しいですね。」
そりゃぁ人間は恩で生きる生き物ですから。貸した物を返して人間は生きていますから・・・
終夜「良いこと言ってるところ悪いが暇なんですけど。」
知るか、お前は光から元気でも分けて貰ってろ。
終夜「光よ・・・オラにほんのちょっぴり・・・いや、もうちょい・・・やっぱり全部の元気を分けてくれ・・・」
それ吸収してるじゃん・・・
という訳で。次回もお楽しみにー!