3:なんか、復讐を決意しました。
この作品はフィクションです。
「貴様…、復讐したいのではなかったのか?」
呆れたような顔でゼルフが聞いてくる。いきなり呆れられるいわれなんかないんだけど…、今なんか、物騒なこと言ったわね、こいつ。
「復讐?誰が何に?」
「…まさか、覚えていない、などとぬかしたりはせぬだろうな。」
「う〜ん…、…確かに、なんとなく、復讐、っていう単語が聞こえてきたような気はするのよねぇ。でも、残念ながら覚えてない。その前後も覚えてない。ぶっちゃけ言えば、八割がた覚えてない。」
「貴様………。…返事をしただろう?はい、と。」
「うん。した。なんか話が長くてめんどくさかったから、とりあえず、はいはい言ってりゃ終わるかなー、って思って。」
「………確実に詐欺に引っ掛かるタイプだな。他人事ながら心配になるぞ。」
悪魔に心配されるとは、なかなか貴重な経験だわね。
「よいか。」
気を取り直して、という感じで、ゼルフは再び喋り始めた。
「考えてみろ。貴様は他の人間のせいで自殺したのだろう?そいつらに復讐したいとは思わんのか。」
………。
「…あぁ〜、そういうことね。………ふぅん。そっかそっか………。…復讐、ねぇ…」
そうだ。一時的にすっかり忘れていたけど、私は、生きていくのが嫌になって、自殺したんだった。あいつらのせいで。
あいつら。すなわち、私が生前勤務していた会社の、くずエリートども。
私が勤務していた会社は、表向きには、給与も高く、保障も充実の一流企業。だがその実態は、一部のくずエリートどもに牛耳られた、生き地獄のような世界。
仕事の出来る者は便利な道具扱いでこき使われ、出来ない者はストレスの捌け口にされる。しかもその事実は、上の人間の権力と圧力によって揉み消され、決して社外に出ることはない。
私も、まぁ、いろいろあった。生きていくのが嫌になるくらい。自殺を選ぶくらい。
……………復讐。
「…ねぇ。」
「なんだ。」
「今の私は、悪魔なのよね?」
「そうだ。正確には悪魔の下僕で、純血の悪魔ではないがな。」
「だったら、何か悪魔らしい力の一つでも、使えるようになってるの?」
「転生させる時に、いくつか能力を与えておいた。」
「そう…。」
「………。」
「…したい。復讐。自殺したことは今さらどうでもいいけど、あいつらが今でも平然とのさばってるかと思うと虫酸が走る。」
「そうか。」
ゼルフは小さく頷くと、私に指を指した。
「主の名において、下僕に命ずる。貴様の憎き相手より、負の感情を集めてこい。然る後、貴様の復讐を成し遂げよ。」
「わかった。」
「では、貴様に与えた悪魔の力を説明してやる。一度で覚えるのだ。よいな。」
…こうして私は、
再び、あの生き地獄へと、足を踏み入れることとなった。
復讐のために。
次回、嫌な奴がいろいろ出てくる予定(^_^;。