2:なんか、目的を語られました。
この作品はフィクションです。
「いいか下僕。我が貴様と契約した理由、そして、我が目的。もう一度だけ説明してやる。心して聞くがよい。」
そう言って、ゼルフはなにやら偉そうに喋りはじめた。
正直聞く気なんてないんだけど…。…聞かなきゃダメなのかなぁ。はぁ、下僕ってめんどい。
とりあえず、存在意義だの主従関係だのあーだのこーだのという不要だと思う部分はさっくり聞き流した。で、要約すると、
人間の負の感情を大量に集めろ。
ということらしい。
「わかったか?」
「うん、まぁだいたい。でもさぁ、負の感情を集めろ〜なんて言われてもさ。感情なんてどうすれば集められるの?。」
「案ずるな。これを使うがよい。」
ゼルフが小箱のような物を取り出して、私の目の前に置いた。
なんだこりゃ?ただの真っ黒な箱にしか見えないけど。
「なにこれ?」
「吸引棺だ。怒りや悲しみなど、人間が感情を放出した際にその箱を開けば、その感情の力を吸引し、貯蔵することができる。」
「ふ〜ん。全自動の掃除機みたいなもん?」
「…そういう例えは安っぽくなるからやめろ。」
「似たようなもんじゃん。…ん?…、あれ?」
「なんだ。」
「今、人間が感情を放出した際、って言ったでしょ?それなら箱開けてテキトーに街中歩き回ってるだけでも貯まるんじゃない?だとしたら、わざわざ私にやらせる必要なくない?」
「何を言っている。理屈的にはそうかもしれんが、集めたいのは怒りや悲しみ、恨みつらみといった負の感情だ。むやみやたらと街中を歩き回ったところで、吸収できるのは微々たるものだろう。確実に負の感情が沸き立っている場所へ行かねばならん。」
「じゃあ例えば…、悪事を企んだり犯罪をしようとしている人間を探して、負の感情を吸引する、的な?」
「そうだ。」
「………めんどい。」
「…は?」
「めんどくさい。」
「めんどくさい?」
「うん。」
「…お前は、下僕だ。めんどくさいことをやるのが下僕の仕事だ。」
「え〜?そんなの聞いてないし〜。なんかないの?悪人探知レーダー的ななんか。」
「そんなものはない。下僕は下僕らしく主の言に従っておれ。」
「なぁによ偉そうに〜。そんなめんどくさいこと自分でやればいいじゃん〜。」
「…貴様、自分の立場が全く理解できていないらしいな。あの甘ったるいチョコレートを再び食すことが出来るようになったのは、誰のおかげだと思っているのだ!」
「…う〜ん、それを言われちゃうとねぇ…。…仕方ない。ちゃっちゃと済ませますかね。」
「…価値観は本当に人それぞれなのだな。」
「それじゃあ、テキトーにその辺で喧嘩してる子供からでも」
「待て待て待て待て!」
「何?」
「テキトーにターゲットを選ぶな。だいたい、子供が発する負の感情など、たかが知れているだろう?」
「そう?子供の方が爆発的に感情剥き出しにするじゃない。それに最近は犯罪も低年齢化してるし。子供は大人以上に残酷だったりするし?」
「いや、子供は純粋なものだと、我は信じている。」
「…あなた、本当に悪魔?」
こんなめんどくさがりな下僕、欲しくない…(^.^;)。ゼルフが彼女を転生させ、下僕にした理由は次回。