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そのひとくち、至福

味わう魔道士

作者: 春隣 豆吉

「魔道士と整理係」より:デルレイ&ナナオ

「デルレイ、おまえチョコケーキに妬いてるんだって?」

 王宮にある人の部屋に顔を出したランス様のセリフは、ちょっと間違っている。

「チョコケーキになんぞ妬いてませんよ。なんですかそれは」

 良心的な行いが身上の叔父上が、どうして騒ぎを起こすことが自分の使命だと思っているようなランス様と仲がいいのだろうか・・・・謎だ。

「おっかしーなあ。アレンからナナオが食べたチョコケーキが原因で、デルレイがむくれているって聞いたんだけど」

 ランス様、それは肝心な部分をはしょっている。ナナオが食べたチョコケーキには何の問題もない。

 ちなみに、そのチョコケーキの名前は「初恋ショコラ」といい、プラスチックと呼ばれる薄くて硬い容器に、同じ材質で黒いフタ。そこに金色のリボンがかけられたもので、ナナオいわく”大人かわいい外見”らしい。

 それに、”チョコが濃厚なのにカロリー控えめ”なんだそうで、ナナオはこっちに戻ってきても忘れられないらしく、今でも「今度行ったらまた食べるんだ~」と言っている。

 俺が面白くないのは、ただ一つ。ケーキを食べたあとのナナオの様子だ。


 あれは数ヶ月前、叔父上と打合せをする必要があって異世界に行くことになった。そこで、もともとその世界の住人であるナナオを誘ってみると二つ返事で承諾したので一緒に行った。

 俺が仕事をしている間、ナナオは書庫の整理などをしていたらしいが屋敷の周辺も散策に行っていたらしい。それは全然かまわないのだ。俺と結婚したためにナナオは自分のいた世界から切り離されてめったに戻ってこられないのだから。

 だが!!あの薄っぺらい書物みたいな物体(“ぱそこん”というものらしい)を見ながら「きゃ~、何これっ!!この男の子はちょっと好みかも・・・」などと浮かれている妻を見たときは“大丈夫か?”と驚いたのなんのって。

 しかも浮かれている原因が7人もの若い男ときた。しかも、その男どもが写された紙(“ぽすたー”というらしい)まで喜んでもらってくるあたり・・・今は書庫にしまわれているけど、あー面白くない。

「・・・・なるほど、お前“ぽすたー”にうつってた若い男たちにナナオがちょっとうっとりしたのが面白くないのだな」

「・・・・なに人の心読んでるんですか」

 こういうときに魔道士長としての実力を発揮しないでもらいたい。まったく、この人は。

「お前の表情が面白くってさあ、つい読んじゃった。ところで俺、アレンからナナオの好きなチョコケーキについて面白いこと聞いちゃった♪」

「なんですか?」

「百聞は一見にしかずってな。これアレンから送ってきたんだ。明日、アレンのところに行くんだろ?ナナオも連れて行くのか?」

「その予定ですが」

「じゃあ、絶対この画像石、見てから行けよ。楽しいことになるのは間違いなし!」

 ランス様はそういうと、親指をたてて“じゃあな!!”と部屋から消えた。

 他に用事はないのか・・・・ないんだろうな。とりあえず、俺はもらった画像石を見始めた。

 なるほど・・・これは楽しいこと間違いなしだ。さて、どうしようか・・・俺は頭の中で計画を立て始めた。



 ナナオが叔父上の屋敷にある部屋でうれしそうに「初恋ショコラ」のふたを開けている。

 なんと、近くのコンビニで売切れていて何件もハシゴして購入してきたらしい。

「ナナオ」

「ん~?」

「それ、一口くれないか?」

「えー、どうしたの?デルレイが甘いもの食べるなんて珍しいね」

「ナナオが美味しそうに食べてるからな・・・・よっぽど美味しいのかと。」

「じゃあ、どうぞ・・・えっ?」

 俺はナナオが出してきたスプーンをもらったあと、ナナオに差し出した。

「ほら、ナナオ」

「デルレイ、自分で食べられるよ?」

「食べさせてもらうのもいいだろう?ほら、ナナオ。口を開けて?」

 しばらく顔を赤くして困っていたナナオだったが、俺の強引な押しに負けたのかおずおずと口を開いた。

 食べ終わったタイミングを見計らって、一言。

「ナナオは、ケーキと俺のキスどっちが好き?」

「えっ!!」

 さっきよりも顔が真っ赤になったナナオは「ど、どうしてデルレイがそれ・・・」とあたふたし始めた。

「ナナオも、このケーキにはこの言葉がセットだって教えてくれなくちゃだめじゃないか。」

「そ、そりゃ確かにケーキの宣伝文句だけどっ」

「それでナナオ。答えは?」

「こ、こたえ?」

「・・・・なるほど。これは実践しないと分からないってことか・・・それも悔しいが、まあいい」

「へっ・・・んんっ」

 ナナオの口の中はまだチョコの味が残っていて、俺はしっかりと堪能した。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


ナナオが最初に初恋ショコラを食べた話は

拙作「初恋ショコラ」収録の「むくれる魔道士」になります。

ちょっと宣伝です。

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