陰に咲く花
ひとつの言葉と一緒に、彼女に小さな花を贈った。
僕はまだまだ未熟で、その花の花言葉なんてわからないけれど。
一緒に綴った言葉はどうやらちゃんと伝わったみたいだった。
そのとき、きっと誰から見ても僕が立ってるその隣に彼女は立っていなくて、その人ごみの中で僕はたしかにひとりぼっちだった。
彼女もひとりだったのだろうか。
それはわからないけれど、贈った花を「綺麗だね」と言ってくれた彼女の顔は素敵に歪んでいて、僕の顔と心を歪ませた。
それで十分、十分。なんて自分に言い聞かせて、僕はまた、人ごみに紛れていく。
赤の花は人々の頬を朱に染めた。
青の花は人々の足元を照らした。
黄の花は人々の瞳を揺らした。
その花は僕の心を、散らかした。
いつかまた、似た花のせいで整いますように。
Twitter:@dakusanno