再会
「ザナさん。アンさん本当にカイっていってました?」
私はその連絡を持ってきてくれた、ザナさんに訪ねた。カイ・・海のこと?
「あーそういってたぞ」
「その人に会いましたか?」
「いや、アンが見知らぬ人だから、家には泊められないが、凪の知り合いかもしれないからほっとけないし。とかいって図書館の椅子に寝かしているらしい」
「すぐ行きます」
「今からか。やっぱり知り合いか?もう暗いから気をつけろよ」
「はい、ありがとうございます」
私は家の中に取って返すと、荷物をとってしろにこえをかけた。
「しろ。私ちょっと下までおりるね」
「にゃーう」
しろは眠っていたようだが、ぐんっと体をのばしトコトコと歩いてくる。
「あーごめんね。留守番でもいいよ」
「にゃぁーう」
私の返事を無視するように玄関の扉の前に座り、しっぽをたしたしとたたいた。
「ありがとう。行こうか」
私は戸締りをすると隣の家まで5分ほど歩きジャンさんに一声かけた。
もしかしたら、けがしているかもしれないからだ。そうすると私の手には負えなくなる。
「そうか。じゃあ起きてまっているから。気をつけていって来い」
「ジャン、食事つくっておいたほうがよいかしら」
「そうだな。倒れたということは食べられるかわからんからどうだろう」
ジャンさんとマリーさんは、時間的に遅いにもかかわらず、心配そうに見送ってくれた。
そして発着所へ向かう。
ふもとへ降りるには、配達で使っている飛行機ではなく、もっと小型の飛行機だ。こちらはそれぞれではなく、何台か置いてあり、交代で使う。
「こんばんわ。下へ降りたいんですが、1機あいてますか?」
「あれえ。凪じゃないか。しろもか。こんな時間にめずらしいな。今から下?一機空いているが、今日は下で泊まりか?」
「いえ、用事がすんだら戻ってきます」
「そうなのか。まあ気をつけろよ」
「ありがとうございます。いってきます」
あいさつをすると夜の空へ飛びだした。
飛行機で5分ほど飛ぶと、下の発着所が見えてくる。ふもとは飛行機だから5分だが、実際自分で下るとかなりの時間がかかるし夜は危ない。昼間はもちろん夜も基本的にはみなこの近場専用飛行機を使う。
明かりをだし着陸をつげると向こうからもOKの返事がきて、すぐに到着になった。
「こんばんわ。用事がすんだら戻ってきます」
「おうそうか。気をつけろよ」
ここの発着所の方たちは前は空をとんでいて引退したり、けがしたりして飛べなくなった人たちだ。交代制でこちらで働いている。
発着所から歩いて、20分ぐらいの場所に図書館がある。7区はそれなりに大きな町のため10区に比べると大き目の図書館がある。もう閉まっているが、裏の従業員入口の呼び鈴をならしてみた。
「はい」
「あっアンさんですか。凪です」
「凪!よかった。伝言すぐいったのね」
扉があき、アンさんが顔をだす。
「はい。あの本当にカイでしょうか?」
「ごめんなさい。凪のいうカイがわからないけど、凪っていう人知ってるかって。凪と似た黒髪、黒眼だし。ああとりあえず入って」
「あっすみません」
私は中にはいり、扉をしめてアンさんの後を歩き始めた。
「えっと閲覧室ですか。」
「いいえあっちはもう閉めてるの。執務室のほうよ。とりあえずもし違ったら危ないから、カインを呼んでいるの」
カインさんはアンさんの恋人だ。この世界は日本と違い自衛の手段は問わない。平和といえば平和だが、各それぞれ自衛は当然しないと危ないし、自衛もしない人間が害されても、運が悪かったとすませられる。まさに自己責任で成り立つ世界だ。
「こっちよ。カインどう」
「いや、起きてない」
「カインさんお久しぶりです」
「ナギか。久しぶりだな」
片手をあげたカインさんにあいさつをすると、そこのそばにある椅子に目をやった。黒のつぎはぎのフードに隠れていて顔がみえない。近づいて、顔を覗き込んでみる。
うすよごれた黒髪、こけた頬、くぼんで伏せた眼。人相はだいぶ変わっているが、もうすぐ2年近くあっていない海だった。