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「しろー。休憩するよ。おいで」

飛行機からおりて準備をしている間、しろは先におりて、仲間とごあいさつをしていた。

1機に1匹。他に飛行機が止まっているここの補給ポイントでは飛行機の数だけ猫がいた。

色々な色をした猫たちがお互いに挨拶をしている姿は微笑ましい。

そして、補給と整備をしてもらっている間、私も休憩しようと小屋に向かう。

そこに向かう間、すれ違う人たちと軽くあいさつをするが、こちらも色とりどりだ。

英語圏、昔のヨーロッパ風、それなのになぜにすぐ異世界では?と思った理由がこれだ。

髪の毛や瞳の色が色とりどりなのだ。いやいやこの色は・・。といいたくなる色合いの方もいた。

それはもう一目でコスプレ会場かとは思わず、地球ではないだろうという結論にいたった。

いまだに慣れないし、黒髪や金髪といった色の方には妙に親近感がわく。

「しろ・・?」

すれ違った二人組がつぶやいた。

思わず振り返ると、向こうもわたしの猫をみながら

「どこがしろ?」

と頭をひねり、わたしをみた。わたしのねこは一見くろねこだ。しかーし、しっぽの先だけしろいのだ。

その特徴をとらえて「しろ」と名付けて、私的にはひねりのきいた素敵な名前だとドヤ顔したのだが、ジャンさんは「おまえさん、センスねーな」とつぶやき、ジャンさんの奥さんのマリーさんは「あらあらまあまあ」と微笑みながら意見を避けた・・。

いやしかし、くろねこなのにしろとはこれいかにと思っていらっしゃる初対面の二人組に

「はい。しっぽがしろいのでしろなんです」

と伝えたところ、首をかしげてみえてなかったしろのしっぽをみた、お兄さんは「・・え。あの先のちょっとのところ。つうかほとんど黒だろ。なんだそりゃ。」とぼそっとつぶやいて、隣のおねえさんから頭をはたかれていた。

「ごめんなさいね。毛づやがきれいな素敵な猫ね」

一見ほめているようで、マリーさんと同じように、名前に対する感想をさけていることには気づいたが・・自分のねこをほめられるとやはりうれしいもので、

「ありがとうございます」

と愛想よく笑顔でお礼をいった。

「私7区からきたものですが、お二人はどちらから?」

「私たちは2区よ。6区に向かうところなの。ああ、ごめんなさい。私はサラよ。こっちはユアン。」

「失礼しました。凪といいます。えっとご夫婦ですか?」

「ああそうだ。君7区か。7区はしばらくいってないな。たしかじいさん7区だったか?」

「まあ、そうね。ジャンさんとマリーは知ってるかしら?お元気?」

「ジャンさんですか!はい、お世話になっております。お元気ですよ。お知り合いですか」

「そうか。昔5区にいてな。その時に俺もいて、世話になった」

「えっそうなんですか。知りませんでした。移動ってわりとあるんですか?」

「私が2区出身でね。知り合いを通して5区にいたユアンと知り合って、結婚してユアンが2区にきてくれたのよ。たまにあることだけど。5区に会いに行ったときにジャンさんにもお世話になってね。結婚式にもきてもらったの」

「たしか5区はマリーさんの出身だったか」

「そうね。しばらく5区にいて、請われて7区にもどったのだったかしら」

「へえーそうなんですね」

私は二人と話しながら誘われて、小屋まで一緒にし、お茶と軽食を食べだした。二人も軽食を持っていたが、私のお弁当に興味深々だった。

「ほう、なんだそれは。」

「あっこれは・・」

私がお弁当と喫茶店の説明をすると二人は「そうか」とうなづきあい、にっこり笑って私のほうをみた。

「帰りにジャンさんに会いに行こうかしら。せっかく6区まで行くんだから久しぶりにあいさつするべき

かしら。どうせ5区に泊まるし。」

「そうだな。最近向こうにいっていないしな。ところで凪はいつごろ戻ってその喫茶店はいつ開けるんだ?」

「えっええっと。早くて1週間後でしょうか」

「ほう。5区で少し休んで向かえばちょうどよいか」

「ええそうね。最近忙しかったから、休みもらっていたしね。私甘いものとか最近控えてたのよね」

「そうですか・・。」

「ええそうなの。向こうで会えるの楽しみにしてるわ。」

サラさんは笑みを深め、私にむかって楽しみを強調する。

「はい・・。」

ユアンさんはそれをみながらつぶやいた。

「最近、ていしょくやにもいってないしな」

「ええそうね。あそこもなかなか都合つかなくてね」

「すいません。今なんと」

「ていしょくやだよ。」

「ていしょく・・。えっそれってごはんとおかずとみそしるがあるところですか?」

「ごはん?みそしる?なんだそれは。いやパンとスープとおかずのセットがあるところだ。なんだっけ日によってメニューが違う」

「日替わり定食・・。すいません。それはどこに。どういった方が経営しているんですか」

「3区だ。町の中央にあるぞ、夫婦でやっていて、どういった、うーんじいさんぐらいの年齢か。」

「そうね。もう10年ぐらい前からかしら。」

「10年ですか・・。」

「ええたけさん。ああ主人はたけさんっていうんだけどね」

「たけさん・・・。あの黒髪黒目ですか」

「あら、知りあい?ええいまは髪しろいけど、昔は黒髪だったわね」

「そうですか・・。」

あの町にいたとき、私たち以外に本当に同じ世界からおちた人はいないのか、再三探したが、手がかりを見つけることはできなかった。少なくともあの町にはいなかったし、今の7区にきてからも町までおりて、町の図書館にもいってみて資料をみたが、何も探せなかった。

この世界は広い。3区じゃあわからないはずだ。10年いるということはもしその方が日本人なら少なくとも10年は帰れないことがわかる。いや、それでも、わたしたちより10年前に落ちてきた人にあってみたい。話を聞いてみたい。そう思った。

「あの、私これから3区へ行くので店の場所とか教えていただいてもいいですか」

「あら、いいわよ。そうすると1週間では戻らないのかしら?」

サラさんは小首をかしげて私をみつめた。無言の圧力を感じる・・。

「いえいえ、1日2日かの休息をいつももらっているだけなので、1週間後には店でお待ちしてます」

「まあ、よかったわ。私たちもなかなか7区までいけないから」

にっこり笑って視線を和らげたことに冷や汗を流しながらも、とりあえず、場所を教えてもらい、

「じゃあ、またね」と軽やかに飛んで行った二人を見送り、私も再び空に戻った。


ちなみに二人の猫の名前はトラという。模様が虎模様だかららしいが、猫なのに虎とはこれいかに。私のセンスをとやかく言えないだろうとちょっぴり憤慨したのは内緒だ。聞かされた時に微妙な顔をしてしまったが、ユアンさんが「いい名前だろう」とドヤ顔でサラさんは無言で笑顔だったのだが印象的だった。これはきっともめたんだろうなあ・・。


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