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補給ポイント

「しろ。そろそろ高度下げるから、頭ひっこめて」

「にゃーう」

しろは、風に吹かれることが好きらしく、おいおい大丈夫なのそこ。というような絶妙な場所取りをしてすましているが高度を下げるときはさすがにひっこんでもらう。本人(本猫?)もわかっているらしく声をかけると、素直にピットの中に入るのだ。

1時間高度を保ち飛ばしたが、3区はまだ先だ。次は高度を少しさげて谷を抜けていく。谷を抜けた先に第一補給ポイントがある。そこから数時間飛ぶのでこのポイントは必ず寄ることになっている。

1区、2区と特に国で決めているわけではなく、配達の航空地図で作っている大まかな区分けだ。地形で大きくわけるため、2つの国にまたがる区もある。この世界の先までの地図はないらしいが、一つの区はかなりの広範囲だ。小型飛行機で一つの区を飛び回ることは数時間の範囲だが、地上を行くとなると、数か月の道のりになる。区によっても大きさは異なるため、1区が数時間でまわれても2区は1区より広く半日ぐらいかかる。

私がいるのは7区で、以前いた国は10区だ。正直7区までくるのに、約1日かかった。空を飛ぶからそれだけですんだが、地上を行くとなるとはっきりいって数か月どころか半年以上をみるぐらい山あり谷あり崖あり川ありだ。上からみて「うわーお」と思わずいってしまうぐらいアドベンチャー感満載だった。しかも道は微妙で乗り物は馬車。小型飛行機はあるが、車はない。またふつうの人たちは基本馬車で移動する。飛行機の個人所有はないし、動かせるのはこの世界ではそうとう勉強しないと難しいらしい。憧れる人も時にいて、試験をうけるが、まずこの高さを飛ぶことで挫折する。次に機械整備や運転で。小学生なみまでは学校に似たものがあるが、それ以降はたいていすぐに見習いとして職に就く。そこから先の学校に行くにはほんのわずかのお金持ちだけだ。そこまでいけばなんとかなるかもしれないが、そこまで行くお金持ちの子息たちは、配達をしたいということはまずない。

小型飛行機といっているが、正直安全面では元の世界の小型飛行機の100倍は危ない。マニュアルなんぞなく教えられて何年も経験を積んで一人前になっていくほぼ子弟制度に近い。私みたいのはイレギュラーだ。

「あれ向こうから一機くるなあ。うーん。あの色は2区かな?」

区ごとに飛行機の一部が色分けされており、相手がどこの区かわかるようになっている。盗賊、空だから空賊というべきか、それの対策ともいわれているが、基本的には地上で盗賊におそわれることはあっても空はほぼない。というのも空を飛ぶのはかなり難しく飛べる人間はこの仕事でなかなか良い収入を得ることができるため、また飛べなくなっても機体整備や教育や配達の他の仕事などでまじめに働けば職にあぶれることがないから、空賊をやってお縄になるような無駄なことはしないらしい。こちらに来て職を得ることにかなり苦労したし、紹介制が大きく幅をきかせるこの世界では職にあぶれないということは最高に恵まれていることらしい。

ジャンさんには頭があがらないぐらい感謝している。

チカッチカッと光が届き、こちらも返す。あいさつとお互いの旅の無事を祈る合図だ。通りすがりであったこともない人だが、空を飛ぶものとしての同族意識といつ何がお互いに起こるかわからないという旅であるため、見知らぬ人でも「お前も無事で飛べよ」という激励をするのだ。

「谷がみえてきた。えっとここを越えて左手かな」

3区に行くのははじめてだ。今きた道を少し戻って右手の川を道なりにいけば4区になる。左手に行けば5区。4区は行ったことがあるが、3区はその先になる。

飛行機は谷の間を滑空していく。

「ここの谷は気をつけろよ」と行く前に配達の区分けをしているおっちゃんに言われたが確かにせまい。しかしここで谷に沿って飛ばないと補給ポイントに行けないのだ。

「しろ。もう少し中にいて」

「なーーーーう」

しろは不満げに鳴いた。

高度は安定しているが、狭いところを飛ぶので縦に横にゆれながら進む。しろは揺れを問題としないので出たいらしいが、こちらが見た目怖いのだ。以前同じような場所で操縦に神経を払っていて、しろは大丈夫かとみたら、その揺れにより曲芸のようになっていたのだ。思わず手が滑りあやうく事故るとこだった・・。

「みえた!」

谷を抜けるところにちょうどポイントがみえた。旗があり、いくつかの飛行機が止まっているのがわかる。

いきなり着陸はできない。ある程度離れたところから合図を光でおくり、徐々にスピードをおとす。向こうからも合図があった。

「おっすいてたのかな。すぐ降りれそうだ。しろ降りるよ」

スピードをおとしつつ、着陸ポイントをめざして寄せる。旗を振っている人が誘導してくれて、無事に着地した。数時間ぶりの地上だ。


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