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文芸部の日常  作者: 太一
はじめまして、そして、よろしく。
3/8

文芸部、掃除する

(^◇^)

またまたよろしくお願いします。

駄文ですが、どうぞ!!

 ここ、公立竜山高校は全国の高等学校の中では設備の整っている方だ。いや、全国は過剰形容だとは思うが、たとえそうだとしてもなかなかに生徒にとって過ごしやすいい環境を作ってくれていることは確かだ。校舎は割と掃除が行き届いているし(もちろん、生徒も掃除はするのだが)、体育館や武道場、学食など、設備の質もいいと思う。この品評は俺が安寧の日々を過ごせるプライベートスペースを探しに校内を駆けまわった結果なので、おおよそこの判断は間違っていないはずだ。うん、ありがたや、ありがたや。結局好いプライベートスペースなど見つかりはしなかったが。こう考えると、俺も無駄なことをしたものである。なにしろ、入学してからの二週間はこれのために費やしたのだから。中庸の要、一生の不覚。まあ、それすらもあまり気にしないのが俺の中庸たる所以なのだが。

 話を戻そう。校舎の設備にある程度の自信を持てる竜山高校だが、それは当然あるゆる部活動において重要なファクターになり得る部室についても、同じことが言えるだろう。各部活には必ず一つずつ年度ごとに部室が与えられる。その部室の広さは部員数や過去の経歴などに比例するのだが、そこは竜山高校、どんなに小さな部活でも与えるものはちゃんと与えるのである。説明しておくと、我が高校のメインである運動系の部活の部室は、体育館の敷地の中に密集して存在している。これも大きさなどは先ほど言った通りだ。でかい部活は部屋もでかい。そして、文化系部活。運動部がメインなのでいまいち日の目を見ない感じだが、熱気は運動部に勝るとも劣らない。数だってそこそこあるらしい。ま、詳しくは知らないが。その文化部の部室は・・・・・・もちろん体育館にあるはずもない、ならどこにあるのか。校舎でも、体育館でもない、部室棟である。文化部の使用している部室棟は校舎から渡り廊下を通って行くことができる。(ちなみに、体育館の部室群には一度外に出ないと行くことはできないのだ。)二階建のその建物の中に、竜山高校の全ての文化部が存在している。体育館のものとは違い、ここは部屋の間取りに変化はあるのだろうが、おおよそ同じくらいの広さである。

 そう、今現在俺の所属している文芸部も、去年まではこの部室棟に名を連ねていた。去年までは・・・・・・





 「部室がない?」

 放課後、誰もいなくなった教室で、夜守が俺に話してきた。なにやら、文芸部に与えられている部室は存在しないらしい。そんなバカな。

 「先生には確認取ったのか?」

 首肯。まあ、当然の反応ではある。いくら部長とはいえ、夜守は俺と同じ一年生。つい先日まで滅んでいた部活の顛末など知る由もないだろう。だが、事態は思ったより深刻だ。それはそうだ、だって、活動できる場所がないのだから。大問題である。いくら部員が二人とはいえ、まさかこの教室で活動するわけにもいくまい。(もっとも、俺に活動する気があるのかどうかは俺自身でさえ疑問だが。)

 「参ったな。ってことは今年の入れ替えで部員が卒業したのを見越して、文芸部部室の存在をチェックから外したんだな」

 「あの、入れ替えって・・・・・・」

 「必要のないものは淘汰される、社会の常識だ。そこに一片の例外もない。この高校では、毎年部室の入れ替えが行われるんだ。もし、部員数が著しく減ったり、いなくなったりした場合、その部室は破棄され、新しい部活が使用することになる。それか、別の部活が荷物置き場にでも利用することがあるかもしれないな」

 「そうなんですか・・・・・・」

 夜守のテンションはさっきから下がりっぱなしだ。それはそうだろう。せっかく、人数を無理やりでも二人に増やし、なんとか部を存続させたところで使える部室がありません、ではあまりにかわいそうではないか。と、そう思いはしたのだが、ふむ、まあ別に俺が手を出す必要はないな。さっきの夜守の確認を受けて、顧問の先生も少しは話をまとめてくるだろう。ほら、噂をすれば。

 「夜守さん、さっきの部室の件なんだけど・・・・・・あら、君は」

 なるほど、この人が文芸部顧問か。すらりとした体型にシックな黒のスーツ、髪は肩のところでそろえていて、綺麗な黒髪をしている。全体的に落ち着いた印象の、可愛いというよりかはどこか大人びた印象を受ける女性だった。

 「えっと、こちらは」

 説明しようとした夜守を遮り、自己紹介をする。

 「一年B組、日ノ紅要です。夜守さんの誘いで文芸部に入りました」

 素晴らしい、無駄は一切ない。なんのことはない普通の自己紹介だ。しかし、それを聞いた先生は随分嬉しそうに、

 「日ノ紅くんね。私は、文芸部顧問の瀬野美智子よ。って言っても今年顧問になったばかりだから、あんまりよくわかってないの。とりあえず、よろしくね?」

 軽く差し出された手に俺は若干戸惑いながらもその手を握り返した。内心思う、これもしかして、かなり自由にできるんじゃないか。

 「それにしても、良かったわね夜守さん。これで晴れて文芸部存続じゃない」

 大人な笑みを浮かべる先生に対して、夜守の笑うそれはあくまで純粋な喜びだった。なんかそのまぶしい笑顔を見てると、なんとなくで入部した俺に罪悪感が漂ってくるんだが。すまん、夜守よ。俺にはそんな笑顔は無理だ。

 「はい、良かったです。あの、それで先生、部室の件は・・・・・・」

 「ああ、そうね。忘れてた。うーんと、やっぱり部室棟の部屋を使うことはできないみたい。空きがもう無いみたいなのよね」

 「そうなんですか・・・・・・」

 露骨にへこむ夜守。その背中に哀愁が漂っているのがよくわかる。だが、俺には一つ案があった。ま、使えるかどうかはわからないだろうが。と、思っていると、

 「でも、教頭先生にお願いしてみたら、ひとつ空き部屋があるそうなのよ」

 ほう。やっぱりその話になったか。こうしてみると俺の二週間の学校探索は無駄ではなかったと思うことができる。

 「三階特別教室、第五講義室ですね」

 俺がそう言ったことに至極驚いたようだ。先生はもちろん、夜守までも目を見開いている。

 「ひ、日ノ紅くん、どうしてそれを知ってるの?」

 「そうです、日ノ紅さん何でですか?」

 ううむ、そんなに迫られても。

 「入学してからの二週間、俺はこの学校の設備を全部見て回ったんです。おかげで部活の体験入部にはなにも行ってませんが。そこで、夜守から文芸部の部室が無いっていうことを聞いたので、部室棟に空きがないなら、どこか別の部屋を探せばいいと思ったんです。そこで、第五講義室のことを思い出しました。でも、特別教室は先生の許可が無いと開けられませんよね。まして、部室として使うなら教頭先生にでも頼まないと無理でしょう。いつ頼みに行こうかなあくらいは考えてましたが」

 「びっくりしたわ、そんなことまで考えてたの」

 そんなことまで、と言われても大した推理をしたわけでもないのに。こんなものはたまたま校舎を見て回ったから気付いただけだ。それさえしていたのなら、夜守だって同じことを考えただろう。

 「わたしも驚きました。日ノ紅さん記憶力良いんですね」

 たまたまだ。俺は別段記憶力に優れているわけではない。たまたま知ってただけ。

 「そう、ならみんなでお願いしに行きましょうか。私だけっていうより、部員もいた方が説得力あるでしょ」

 何?

 「そうですね。じゃ全員で直談判しちゃいましょう」

 待て、俺を含めるな。なぜ、俺が行かなければならないんだ、ここは部長たる夜守が行くだけで十分な成果を見込めるはずだ。今日は六時間目に体育があったから、疲労している。これ以上のエネルギー消費はかなり効率が悪い。う、待てそんな目で俺を見るな。俺は、俺は・・・・・・





 あまり長い話は好きはない。結果だけ話そう。

 うちの教頭はかなり人がよさそうだった。我が文芸部の部室の件についても、彼は快諾してくれたのだ。そう、結局話をしたのは瀬野先生と我らが部長、夜守だけだ。俺は単なるおまけ、とでも言っておこうか。何が『部員もいた方が説得力あるでしょ?』だ。説得する必要もなかった。本気で俺の付いて行った意味を問いたいが、まあ、そんなことをしても後の祭りであることに変わりはない。

とどのつまり、これでようやく文芸部も落ち着いた活動の場所を手に入れたわけだ。といっても、実際の活動がどうなるのかなど全く予想もつかないが、一つ所に、夜守の一声でそれは万事問題なく進むだろう。何故かって?


 そりゃあ、俺が手出しするはずがない。なんたって俺が目指すべきは・・・・・・中庸、なのだから。


 さて、部室の件が片付いた俺は、もう帰る気満々だった。しかし、夜守はそれを良しとしなかった。なにやら、せっかく部室を見つけたのだから見ておきたいそうなのだ。これからほぼ毎日通うことになるだろうにそんなに気になるかね、随分と活動熱心なことだ。そう内心思いつつも、しかし俺は、割と断る気はしなかった。夜守のまじめさにあてられたのか、それとも、どうせ家に帰ってもやることなどないのだから暇つぶしに良いかと思ったのか。真偽は定かではないが、結局俺も我らが部室、もとい第五講義室を見に行くことにしたのだった。





 職員室の鍵置き場から、第五講義室の鍵を見つけ出し夜守と二人で講義室へ向かう。職員室は二階にあり、第五講義室はその一階上、三階廊下のどん詰まりにある。ちなみに俺たち一年B組の教室は二階にある。本来、部室棟に行くためには渡り廊下を通らねばならないので、部室が教室のすぐ上の階にある、というのはなかなか俺にとっては魅力的だった。移動に要するエネルギーを浪費しなくて済むというものだ。うん、これ重要。

 そんなことを思案しているうちに、ドアの前まで来た。横開きの木のドアを前に手をかける。当然、返ってくるのは堅い手ごたえだけ。それなりに年季の入ったドアだ。鍵穴は少しさびていて、赤茶色に変色している部分がある。俺は鍵を差し込んだ。ゆっくりとそれを回し、そして・・・・・・カチャリ、小気味よい音が静まり返った廊下に響いた。取っ手に力を込め、俺は勢いよくそのドアを開けた。

 中に入り、周りを見渡した俺と夜守はその光景に絶句した。いや、ちょっと絶句したは言い過ぎか。しかし、それでもこの状況は十分惨状に値するんじゃないだろうか?


 床にはほこりがいくつも塊をつくり、机やイスは落書きがむしろ素晴らしい装飾とでもいうかのように施され、乱雑に積まれたものもあれば適当に並べられているものもあり、黒板は真っ白。木の窓枠も少しずつ塗装がはがれ、ささくれがあちこちにできている。

 一言でいえば、部室として使える状況ではなかった。

 「おいおい、冗談だろ・・・・・・」

 なんという貧乏くじをひかされたものだ。このほこりの積もりよう、一体どれだけ放置してあったんだ?いや、しかし机が積まれているということは、出し入れをしたということだ。つまり、この状況を見逃している可能性がある。おのれ、教頭め。これを計算に入れていたとは。

 「これは、ひどいですね。とても使えるような状況じゃありません」

 制服の袖で口を覆いながら、夜守は小さな声でそういった。全くもってその通りである。こんな空間に長時間いれば、間違いなくほこりアレルギーになってしまう。

 「掃除を・・・・・・しなくてはなりませんね」

 夜守が驚愕の一言を放った。まさか、これを俺達で片付けようというのか!そんなバカな。確かに空き部屋はここしかないし、掃除をしなくてはならないというのはそうなんだが・・・・・・

 はあ、俺は今日一の深いため息をついた。長さでいえば、たっぷり二秒程度。やっぱり、帰っておけばよかった、そう思わずにはいられない、この作業のおかげで俺の消費できる限界エネルギーは完全に容量オーバーだ。あれ、なんかほっぺたをつたってるな。

 「あれ、なんで泣いてるんですか?日ノ紅さん」

 もう、放っといてください。

 「二人で協力してさっさと終わらせましょう!早くやらないと下校時間になっちゃいますよ」

 夜守よ、なぜお前はそんなに・・・・・・いや今はそれどころじゃない、この上下校時間まで過ぎるのは御免だ。

 なんとなく楽しそうに床のほこりを掃いている夜守を横目に、俺も作業に取り掛かる。何時間かかるのやら、とりあえずは、真っ白に塗りつぶされた黒板から始めるか。

 黒板消しをクリーナーにかけ、丁寧に消し始める。その時の俺の表情が微妙に涙ぐんでいたのは・・・・・・言うまでもあるまい。

このあとがきって書くことあんまり無いんですよね・・・・・・

ネタがほしいです 笑

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