FILE2:三島病院と少女
〜三島病院〜青年は病院の中に入ると、辺りを見回した。
手入れのされていない植木鉢を見た。
それには病院がどれだけ忙しいかが、まるで鏡のよいに忠実に写っているようだった。
『こんにちは、面会に来ました』青年は看護婦達にかるく会釈をすると面会帳簿に名前を記入した。
面会帳簿にはふりがなを記入する所があり、青年は溜め息をつくとサラサラとふりがなを記入した。
「藤咲 宇宙」
「ふじさき そら」
宇宙はボールペンを叩くように置くと、母が眠る病室へと向かった。
宇宙は慣れたように下を向きながら歩き出した。
途中には車椅子の少女、松葉杖に身をまかせた男性、テレビの音・・・なにもかもが普段と一緒だった。
宇宙はふと昔を思い出す・・・・母が事故を起こした時のことを・・・・そして、宇宙は目を瞑った・・・・
しかし、彼はすぐに目を開けた。
目の前には一人の少女。
肩までかるくかかるセミロングの髪の毛。
愛嬌のある顔だった。
見舞いにでもきたのだろう。
花瓶には花が埋けてある。
花の香りか、いい香りがした。
すると、少女が話しかけてきた。
『あ、あの・・・藤咲結花さんの家族の・・方ですよね?』
宇宙は一瞬、困惑したがすぐに返事を返した。
『ええ。
僕は息子の・・・』
宇宙は自分の名前は嫌いだ。
言いたくはなかったが、いわないのはおかしい。
『息子の宇宙です。
』
少女は軽くお辞儀をして、
『あ、私、藤咲結花さんの隣の病室にいる佐藤隆司の娘の、』
少女は一瞬戸惑ったが、
『佐藤唯・・です。
』
唯は顔を赤らめてうつむくと、
『あの、よろしくお願いします。
』
と言って、足早に去って行った。
宇宙は溜め息をつくと、母の病室に向かい出した・・・・