FILE1:海の見える町
〜2000年1月〜青年は花を片手に持ち、寒空の下母の眠る病院へと向かっていた。
彼は慣れた道をたどいながら下を向いている。
風は海から吹き、潮の音が静かなサウンドとなっている。
左手側には無限の海が広がっている。
右手側にはそびえたつ崖がある。
彼は歩道を歩いているが、車道には車は滅多に走らない。
時々走るのは、排気ガスを巻き散らす大型トラックだけであった。
青年はこの町、この道が好きだった。
吹き抜ける風に身をまかせ舞うことも出来るし、そびえたつ崖にもたれることも出来る。
都会にはない安心感、静かさ、優しさ。
だから青年は車道にトラックが走るともの凄く怒りを覚える。
結局、都会で発生した大量のゴミはこの町に運ばれてくる。
何故、綺麗な町を汚くするのかは青年にもわからない。
大人は汚い・・・・すると、後ろから走行音が聞こえる・・・青年は花を崖の方に持ちかえた。
その物体は一瞬優しいサウンドを消し、ノイズを残して去って行く。
青年は下から目線だけを真っ直ぐに向け、物体を睨んだ。
大型トラック・・・
やはり大人は汚い・・・・
青年は、目線を戻し自分の足を見ながら歩きだした。
青年はふと目を瞑る。
立ち止まる・・・風か気持いい。
青年は歩き出した。
30分位変わらぬ景色をくぐりながら歩くと、青年は目線を上げた。
「三島病院」
と看板が目に入る。青年は一息ついて病院の中に入った・・・・・・