あなたに言いたいコト
音が、聞こえた。
悲鳴や怒声や叫び声。聞いているだけで震えてしまうほどの断末魔や、笑い声も聞こえた。
敵が来た。奴らが来たのだ。
だから。
共に戦うと誓った。
彼と共に生きると誓った。
傍にいると、誓い合った。
なのに。
どうして。
今まで国を護り、民を護り、味方を護ってきた剣が、仲間の血で染め上がっていく。
どうして、と浮かんだ疑問も、口にすることすら出来なかった。
大量の血とともに、生気が抜けていくのを感じる。
最早、自分はこれまでだと悟っていた。
ただ、どうしても聞きたかったことがあった。
ねえ、あなたは。
あたしを愛してくれていたの?
それすら、偽りだと言うのかもしれない。
ただ、確かなことがある。
あたしは、あなたのことを。
愛していたよ、アーウィン。
はっとして、飛び上がるように起き上がった。
「姫様、大丈夫ですか?」
心臓が耳元で鳴っているかと思うほど、鼓動が強く聞こえている。
隣でロアが心配そうに覗き込んでいた。
「また・・・あの夢を見たのですか?」
「・・・・ああ。」
差し出された水を一口飲み、ようやく落ち着いた。
「・・・あの男の名を、呼んでいましたよ。」
「・・・そうか。」
何も言わず、ヴァンは起き上がった。
「今、何時だ?」
「夜の九時です。」
水を一気に飲み干すと、にこりと笑った。
「お前、飯は?」
「いえ、まだ食べてません。」
「おし。食いに行くか。」
心配げにロアは見つめていたが、ヴァンの笑顔を見ているうちに、にこりと笑った。
「はい。お供します。」
必要な物だけ持って、二人は夜の街に出た。