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とあるお店の不思議なオレンジ



お店を開くために、この街に引っ越して来て数か月。

いつも通る道…良く買い物の途中で見掛けるんだけど

お店の近くにある花屋さんが最近気になってしょうがない。


そこの店長さんがやたら店内にある置物を可愛がっているからだ。

置物…と言っても、子供が乗って遊ぶ様な子馬の形の可愛らしい

オレンジ色のオモチャ。

看板息子のつもりなのか、首には小さなメッセージボードを掛けたり

雪が降った寒い日には、最近は暖かくさせるつもりなのか

首にマフラーを付けさせていたり。


でも…それだけでは無く、普通に話し掛けてる様で。


そんな様子が前から気になって気になって…しょうが無くて。

不思議で頭が一杯な俺は…確かめようとあの花屋さんに次の日、

買い物の終わりに足を運んでいた。


今月は…もう12月。

もうすぐクリスマスだし、まだお店は完成してないけれど

開店気分に小さいツリーとかクリスマスっぽいのがあったら

店に飾ろうかな?なんて思っていて。


…ついでにあの気になる置物も近くで見たかったから。




「いらっしゃいませー」




店内に入るとドアのチャイムが鳴り、

いつも置物を可愛がってる店長さんが店内の奥から顔を出した。


「…何かお探しですか?」


余りにもキョロキョロし過ぎていたんだろう。

眼鏡を掛けたエプロン姿の店長さんが笑顔で問い掛ける。


「え?あっ…お店で飾るのを探してるんですけ…ど」


一番見たい物を探してるなんて言えず、慌てて店長さんに問い掛けた。


「それなら入口に置くならツリーとか…

あと、ポインセチアは最近だと色々バリエーションが豊富で良いですよ?」


そう笑顔で指を指す方向には、よくクリスマスシーズンになると必ず出る

綺麗な赤い花が並んでいて。

あまり知らなかったけれど、この花…ポインセチアって言うんだ。

…これ買おうかなぁ?

ピンクや白、マーブル色…赤以外の他の色なんて知らなかったから、

珍しげにしゃがんで眺めていたら…



「…あ。」



眺めていた方向の先。

レジの下にチョコーンとオレンジの子馬の置物があって。

今日も寒い日だから、いつものマフラーを掛けてオシャレにしていた。

やっぱりどこから見ても…普通の置物なんだけどなぁ。


でも、何だか気になる…何故だろう。



「…可愛いでしょ?」



オレンジの子馬をずっと見ていたのに気付いていたらしく、店長さんが笑った。


「…え!ええ。マフラー似合いますね。…このコ、ケケって言うんですか?」


子馬の首に巻かれていたマフラーの編まれた名前を見つけ、

思わず店長さんに問い掛けた。


「ああ。買ったお店の人が名付けたみたいでねー。

名前入りのマフラーとかしたら皆覚えてくれるかなーなんて思ってさ。

でもケケがお店にやって来た日から不思議な事にお客さんが増えてね、今では看板息子だよ」


「やっぱり可愛がってるんですね。

いつもここ通る度に店長さんがなんだか話しかけてるみたいだったから、

ちょっと気になってたんです」

「え、そう見えてた?そういうの癖なんだよねー」


そう店長さんは何か思い出したかのように苦笑いした。


「あ!俺、相川って言います。もうすぐここの近くに友達とカフェ出すんで、宜しかったら是非!」


宣伝がてら、慌てて名刺入れからお店の案内名刺を一枚取り出して店長さんに渡した。


「こちらこそ。井原って言います。

名刺にはフラワーコーディネートって書いてあるけど…名ばかりで意味無いけどねー」


そう、お返しとばかりに、店長さん=井原さんはレジにあるお店の名刺を一枚渡してくれた。


「そう言えば相川くんのお店って…今、向かいの通りで作ってるお店の?」

「はい。って、まだ工事の最中なんですけどね…無事に終わるか少し心配なんですけど」


自信満々に宣伝したものの…もうすぐオープンまでの時間が無いのに、

工事が押してる所為で間に合うか分からない自分のお店に、ふと…少しだけ心配になった。


「そうなの?んじゃあ、ちょっと待ってて…!」


井原さんは俺が買おうとしていたポインセチアの鉢に緑と赤のリボンを付けたかと思いきや、


「これ、チョット早いかもしれないけど…開店祝いに持っていって!」と、

俺からのプレゼントだからと笑顔で渡してくれた。

…って!ちょっと!


「え?あのっ!これ買うつもりだったんですけど…」


唐突なプレゼントに慌てるも、井原さんは遠慮しないでとばかりに手を横に振るばかりで。


「良いよ良いよ。少し早いけどクリスマスプレゼントって事で!ね?」

また、オープンした時にはお祝いに駆けつけるから。と、

そう井原さんはそう細目で笑った。

「有難う御座います!んじゃあお店に来たときは是非何かご馳走させて下さい」

「…んじゃあ、そろそろ戻らないと行けないんで、また来ますね!」


時計を見ると、もうすぐ戻らないといけないのもあって、

そろそろお店を後にしようと入口に向かったその時。




“…ばいばいっ”




突然、子供の声のような小さな声が微かに聞こえて来て、

ふと、声の方向に見るも誰も居る筈がなく。


…あれ?


そこには人と言うよりオレンジの子馬しか見えないし…空耳だったのかなぁ。

…まさか、あの子馬のオモチャが?まさか。そんな夢みたいな事。

そう井原さんの店を出て数歩歩いていた時。



あ…しまった。



お店を出た後、ここに寄った目的を今更思い出して、

あー。の声と共に溜息がこぼれた。

そう言えば…あのオレンジの子馬のコト、

チャント井原さんに色々と聞くつもりだったのに。



…ケケって名前だっけ?あのオレンジの置物。

聞き返そうと思ったけれど、お店が開店したら、

井原さんも遊びに来るって言ってたし…

その時にまた聞いてみよう。と、両手のポインセチアを手に、

今日はお店を後にした。






***





「あの人…もしかしたら」


相川を見送った店長の横で、小さい姿で呟く者が一人。


「…ん?相川くん…ケケちゃんの事、やっぱり見えてるの?」

「うーん。今だけじゃ分からないよ…だって普通は大人の人が俺の姿なんて見える訳ないし」



いつの間にかオレンジ色の子馬の着ぐるみを着た子供姿のケケがそこに居た。



「ケケちゃん…じゃあ、何で俺は見えるの?」

「…しらなーい。イハラくんは、ちょっと変わってるからじゃない?」

「ちょっ…ケケちゃん、それって…」


ケケの即答で少し困り気味の井原を余所に、

多分だよ多分っ!と、悪戯っぽい顔でケケは笑う。





(でも…)


この街にも、井原みたいに、自分みたいなのが見える大人の人が居たら、

また、俺達の仲間に巡り合って欲しいとケケは思う。



…無事に巡り会えたら、

その人を幸せにする事が出来るのに。

それが俺達の幸せで、使命みたいだったりするから。


と。


そう井原に気付かれないように心の中で思いつつ。

相川が帰って行った店の出入口を見ながら、

ケケは首に巻いているマフラーの端の二つのポンポンを手に遊び始めていた。




おわり。


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