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第42話

「ゆ、づ、き、ちゃーん。おひさー」

 

 第四ゲーム終了後、たった一日の休暇を挟んで予定通り唯斗が部屋に派遣されてきた。ベッドの上を転がりながら結月が次に参加するゲームを吟味していると唯斗はベッドに腰かける。そして結月に覆い被さるようにして手元を覗き込んできた。

 

「俺のことは無視ですかー? 何見てんのさぁ」

「唯斗さん、重いよ……」

 

 零よりも背の高い唯斗に背後から押し潰され、結月が呻く。いつの間にか携帯端末も取り上げられてしまい結月は仕方なく上体を起こした。

 

「携帯返してー」

 

 ゲームが終わって気が抜けているのか、唯斗のような間延びした声で結月が要求する。唯斗は腕の中に結月を閉じ込め端末の画面を見せた。

 

「結月ちゃん、カジノゲームに興味があるの?」

「あ、うん。賭け事ってしたことないから、面白そうだなって思って」

「じゃあ零に相談してごらん。まだ開催まで時間あるみたいだし、鍛えてもらえばいいよ。というわけで、今からレッツゴー!」

「最初からそれが目的だよねッ?」

 

 とはいえ唯斗を派遣している時点で零も怜央も本気である。ここで唯斗を追い返せば、無実の唯斗があの二人に何をされるか分からない。第二ゲームで知り合ってからというもの、何かとお世話になっている唯斗に迷惑はかけたくなかった。

 

 仕方なく未開発エリアのレストランまで二人で足を運ぶ。だが歩く距離が長いこと以外は特に不満はない。唯斗もそれを理解しているため、途中休憩を兼ねて結月お気に入りのカフェでパンケーキを奢ってくれた。

 

 糖分を補給して上機嫌になった結月はレストランの扉を開ける。するとそこには意外な人物が居心地悪そうに座っていた。長めの前髪から覗く小動物のような瞳。小柄な少女は結月と目が合うと泣きながら結月に抱きつき、嗚咽を漏らす。

 

「莉乃? どうしたの、こんなところで」

 

 間違いない。第三ゲームで知り合った初参加のプレイヤー、莉乃だった。結月が莉乃の頭を撫でているとホットココアを持った店長が近づいてくる。そして結月に耳打ちした。

 

「実はこの子、未開発エリアでチンピラに絡まれてたらしくてよ。怜央が声かけたら嬢ちゃんの名前を呟いたんだと。それでここに。嬢ちゃん、知り合いかい?」

「あ、うん。一回同じゲームをプレイしたことがあって」

 

 結月が答えると店長はココアの入ったカップをテーブルに置く。その時、最奥の席から零の声が聞こえてきた。

 

「結月、知り合いならさっさと追い返せ」

 

 視線を向けると、零は不機嫌さを隠そうともせずに舌打ちする。

 

「でも、零さん。莉乃はまだ素人だから……」

「なら部屋まで送ってやれ。今日はもういい。唯斗、あとは任せるぞ」

「はーい」

 

 自分で呼びつけたにも関わらず、零は二階の鍵を店長から奪い取り階段を上がっていった。取り残された結月は莉乃にココアを差し出すと店長をカウンター裏に呼ぶ。

 

「ねぇ、零さん、なんであんなに機嫌悪いの?」

「あー、まぁ、気難しい人だからなぁ……」

 

 店長は気まずそうに目をそらし、そそくさと厨房へ姿を消した。あの様子では絶対に何かを隠している。そう確信しつつ、話してもらえそうになかったため結月は渋々引き下がった。

 

 次に怜央の隣へ腰を下ろす。怜央は莉乃を一瞥すると一息でココアを飲み干した。そしてため息をつく。

 

「怜央、一昨日ぶり。あのさ、零さんのことなんだけど……」

「結月さん、付き合う相手は選んだ方がいいですよ。それじゃ、僕もこれで。また連絡させますから」

 

 そう言って怜央も零の後を追って二階に上がってしまった。結月は首を傾げてそれを見送る。結局、莉乃が落ち着いたタイミングで唯斗と三人帰路についた。

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