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アルカディア・ゲート  作者: 葉月エルナ


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第24話

 それから二週間後、当初の予定通り脱出型ゲームが開催される。結月は六階建ての廃ビル、その最上階で目を覚ました。

 

「……始まったか」

 

 素早く上体を起こし、周囲を見渡す。回りには結月の他に五人の少女がいた。事前に確認した今回のゲーム参加人数は六名。つまり参加者全員がこの場に集められていることになる。

 

「ようやく始められそうですね」

 

 結月が声の主に視線を向けると、煌びやかな金髪をツインテールに結い上げた少女が立っていた。

 

「私は美玲(みれい)と申します。これで九回目のゲーム参加です。あなたのお名前は?」

「結月、だよ。今回で三回目」

「そうですか。では、やはり私が最もリーダーにふさわしいようですね」

 

 美玲、と名乗った少女はなぜか満足げに頷く。そういえば初回のゲーム参加時も当時ベテランだった雫が自己紹介の場を仕切っていた。この手のゲームでは最多クリア数を誇るプレイヤーがリーダー役を担うことが多いのかもしれない。結月はそんなことを考えながら近くに転がっていた懐中電灯を拾い上げた。そして他の四名を無視して歩き出す。

 

「お待ちください、結月さん。どこに行かれるのですか?」

「どこって、ゲームを進めなきゃいけないでしょ?」

「勝手なことをして足並みを乱されては困ります。リーダーは私なのですから」

 

 美玲は不満げに結月を引き留めた。だが、今回のゲームでは結月に他人と馴れ合うつもりは全くない。

 

「悪いね。私はソロプレイヤーなんだ。一人で好きにやらせてもらうよ」

「そうはいきません。どうしてもというのであれば、その懐中電灯を置いて行って頂きましょうか」

「……」

 

 結月は眼前に立ち塞がる四名のプレイヤーを一瞥してため息をつく。美玲は何がなんでも結月を従わせたいらしい。ここで衝動に身を任せて殴りかかるのは簡単だが、流石の結月も四対一で勝てる自信はなかった。

 

「分かった、ひとまずは美玲の言う通りにする。だから早く始めて」

「あなたがもっと早く起きて下されば、そうできたのですけれどね」

 

 嫌味を込めて言い放ち、美玲は懐中電灯をつける。そして部屋の片隅で膝を抱えて泣いている少女を無理矢理立ち上がらせた。

 

莉乃(りの)さん! いつまで泣いているおつもりですか! いい加減に覚悟を決めなさい!」

 

 莉乃と呼ばれたプレイヤーは肩を震わせながらも何とか歩を進める。初心者なのかな、と結月は思った。するとその視線に気がついたのか、莉乃が結月の腕を掴む。

 

「何?」

「あ、あの。ご、ごめんなさい……」

「いや、別にいいけど。怖いの?」

 

 結月の問いに莉乃は頷いた。

 

「初参加?」

 

 またしても莉乃が頷く。

 

「じゃあ、一緒に行こうか。守ってあげられる自信はないけど、それでも良ければ」

「だい、じょうぶです。でも、いいんですか? 私なんかと……」

「いいよ。初参加じゃ心細いだろうし」

 

 結月の返答に、莉乃は初めて笑った。唯斗ほどではないが長めの前髪から覗く瞳が小動物のようで可愛らしい。ようやく莉乃を泣き止ませられた結月は安堵の息を吐く。

 

「ちょっとアンタら黙ってくれませんかねぇ! さっきからうるさくてゲームに集中できないんですけど!」

 

 だが前を歩く赤髪の少女に怒鳴り付けられ、再び莉乃が泣き始めた。

 

「ご、ごめんなさい。ごめんな、さ……」

「莉乃、ああいう手合いは無視でいいんだよ。大丈夫だから」

 

 その言葉が逆鱗に触れたらしく、赤髪の少女は結月の胸ぐらを掴み上げる。

 

「喧嘩売ってんのか? アンタ」

「そうだって言ったら、どうするつもり?」

「上等じゃねぇか、やってやるよ!」

 

 二人の間に一触即発の空気が流れ、不可視の火花を散らす。これでは交戦もやむ無しかと結月が腹を括った瞬間、少女の肩に別の少女が手を置いた。

 

(ひびき)、やめて。時間と体力の、無駄」

 

 どうやら赤髪の少女は響という名前らしい。響は一度舌打ちすると、結月から手を離す。

 

「だ、大丈夫、ですか?」

「うん、大丈夫だよ。怖がらせてごめんね」

 

 不安げに問いかける莉乃を安心させ、結月は内心でため息をついた。あまりにも幸先が悪すぎる。今回は下手をすれば、生存率二割を下回るかもしれない。

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