沼地の少年
泥まみれの少年。
うづくまっている。
彼の腹の当たりにくっついている《《モノ》》。
彼の肉に食い込んで、半ば同化してしまっている。
それで腹だけ膨らんだ餓鬼みたいに見える。
泥に膝をついて痩せた手足で大事そうに抱え込んでいる。
「それは、何」
彼は立ち上がろうとも、こちらを見ようともしない。
ただ、くぐもった声が返ってきた。
「僕の、最初の真実」
「先に行かないの?この薄暗くじめついた進みにくい場所は、もうすぐ暗い水に覆われてしまうよ」
僕はその時僕が知っていた真実を告げた。
光る花を道しるべに曙光の方へと進んで行かなければならないのに、少年の花は彼の横で泥に埋もれ光を失い腐っていた。
少年は、腹を撫でさすった。
「僕は、成長しない」
彼は立ち上がった。
老人のように背を曲げてゆらりゆらりと、暗い水がやって来る方へと立ち去る。
数歩あるくと、陽炎のように揺らめいて見えなくなってしまう。
少年の置き去りにした花は溶けて一瞬光る水と化したが、すぐに泥に混じってしまった。