表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廃棄ダンジョンで拾った、ちょっと変わった貴族令嬢の話  作者: ばーど@ホーリーアンデッド3巻&コミックス2巻10月31日発売!
第四章 原色の悪夢

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/42

30.理由(前編) 〜 ダンジョンとは 〜

「アカリが生まれた来た理由……?」


 鸚鵡返しした俺の言葉にアカリは頷く。


「ヴァルザードルフ伯爵を呼べ、あやつは上位ダンジョンの管理者なのだろう?」


 厳密にはもう引退した【王国宝守隊】の隊長だが──挙げ足取りになるからやめておこう。

 俺は執事を通じて伯爵に声をかける。

 結局、伯爵の執務室で人払いをして話をすることになった。


「アカリ殿、どうした? とうとう儂のことを『お父さん』と呼びたくなった──わけではなさそうだな」


 アカリにギロリと睨まれてしゅんと凹む伯爵、可哀想。


「お主らには、妾が生まれた〝理由″を話しておこうと思ってな」

「さっきから言ってたけど……理由って何なんだよ」

「それを説明するためには、ダンジョンが何か・・・・・・・・から話す必要があるな」


 ダンジョンがなに、か。

 ……なんだか哲学的だな。


「なあリレオンよ、そもそも〝ダンジョン″とは何だと思うか?」

「ダンジョン……道具を喰って魔法道具として吐き出すだけのもんだと思ってたが」

「ヴァルザードルフ伯爵はどうだ?」

「そうですな……正直リレオン殿と似たような認識であったかな。城の学者たちは『自然地形に魔力が集合し完成した超自然現象』だと言っておりましたが」

「お主らは不思議だと思わんかったのか?」

「不思議っちゃあ不思議だが、勝手にそんなもんだと受け入れてたんだよ……違うのか?」

「まあダンジョンが〝自然現象の一つ″という意味では間違っていないな」


 アカリが両手を大きく拡げる。


「この世界には──〝魔力″が溢れている。人や生き物が持っているように──この〝星″も魔力を持っている」

「星とは……空に輝くあの星のことですかな? 儂らが生きるこの地も、空に輝く星のようなものであると」

「そうだな。分かりにくければ伯爵の言うように〝大地や空のこと″だと思えばいい。この星には膨大な量の魔力があった。だが魔力はふわふわと星の中を揺蕩たゆたっているわけではない。少しずつ──集まるようになっていった」


 アカリの手から黄金色の光が漏れる。

 あれは──。


「魔力の光──そうか、アカリ殿の髪が黄金色であったのは御身に宿す膨大な魔力ゆえであったのか……」

「やがて魔力は互いに干渉し合い、大きな渦となった。渦は中芯を持ち──魔力の塊が生まれた」


 アカリの手から放たれた魔力が渦を巻き──やがて中心部に輝く光の玉が出現する。


「星が持つ膨大な魔力が集まったもの。それが──〝ダンジョンの原型″だ」

「ダンジョンとは……〝魔力が集合した塊″であったのか」

「うむ。その成り立ちは〝恒星″の誕生プロセスと似ておるな」

「恒星?」

「空に輝く星のことだ」


 俺には空の星と踏みしめる大地の違いなんて分からない。

 だが──そういうものなのだろう。


「結果として、この星の上にはいくつもの〝魔力の渦″ができた。だが渦は単体で成り立つとは限らず──複数で現れることも多かった。〝廃棄ダンジョン″と〝上位ダンジョン″もそうだ」

「じゃあ、あの二つのダンジョンは〝双子″みたいなもんだってのか?」

「双子──そうだな。妾と上位ダンジョンは、双子のようなものだった。ほぼ同時期にできたのだからな」


 たしかに、この世界に他に存在するダンジョンも複数同時に存在しているものが多いと聞く。


「ダンジョンには、周りの環境やその中に入ったものを吸収して・・・・模倣する・・・・特性がある。ダンジョンは最初洞穴の中で生まれた。ゆえに──洞穴の形状をしていることが多い」

「だけど整備されたブロックの通路とかもあるぜ?」

「あれは人が周りに・・・・・作り上げたもの・・・・・・・を、膨張した際に吸収した・・・・ものだ」


 へぇ……ダンジョンとはそうして・・・・出来上がったもの・・・・・・・・だったのか。


「だが──ダンジョンはいつまでも存在しているわけではない。なにせ常時魔力を放出しているわけだからな、いつかは終わりが来る」

「魔法道具となるために使われる魔力は──無制限ではないってことか」

「そうだな。魔力が減少したダンジョンは、少しずつ中心部の引力が弱まっていく。徐々に不安定になり、魔力が乱れ、やがて──形状を保つことができなくなり、最終的には魔力が弾け飛ぶ・・・・・・・


 アカリが手元で作っていた黄金色の渦が、パンッと弾け飛んだ。


「それが──〝ダンジョンの死″なのか?」

「すぐ死ぬわけではない。だが終焉に向かうことは間違いないな。大半の魔力が飛び散った結果、最後に残った核の部分が、僅かな魔法道具だけを生成し──ゆっくりと消滅へと向かってゆく。その核こそ・・・が──」


 渦の後に僅かに残った光の残骸に、アカリはそっと手を伸ばす。


妾なのだ・・・・よ」


 そうか──アカリは本当に〝ダンジョン″なんだな。

 その事実を受け入れるとともに、俺は廃棄ダンジョンについても理解する。

 過去に大半の魔力が弾け飛んだから、ドロップ率が著しく低くなっていたんだな。

 今の廃棄ダンジョンは、もう多くの魔法道具を生み出すだけの魔力が無くなっていたんだな。

 だが、そうすると──。


「じゃあアカリはその……一度弾け飛んだ・・・・・のか?」

「ああ、そうだ」

「アカリ殿、ま、まさか……246年前に発生した〝死者の氾濫″とは──」

「察しがいいな、そのとおりだヴァルザードルフ伯爵」


 アカリは頷く。


「あれこそが妾が──〝廃棄ダンジョン″が滅びの時を・・・・・迎えた合図・・・・・、すなわち大部分の内包魔力が・・・・・・・・・弾き飛んだ瞬間・・・・・・・だったのだよ」

すいません、思ったより長くなったので分割しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ