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18.新たな日常

ここから第三章になります!

 バーパスとの決闘から1ヶ月が過ぎた。


 俺とアカリのチーム『天差す光芒(クリパスキュラーレイズ)』のレベル3探索は順調だ。

 先日はレアリティの高い魔法道具を手に入れて、かなりの高額報酬を得ることが出来た。なんでも120年前にダンジョンへ喰わせた記録がある腕輪で、『香りを発する』付加能力が付いているそうな。

 それが王族に愛される香りだとかで、俺たちの評価も一気に上がったりした。

 おかげでつい調子に乗ってしまい、アカリに何度催促されても断っていたふかふかのソファーを購入してしまったくらいだ。


 今日もいつものように戦利品を役所に査定してもらい、夕食を屋台で買って家に戻ってみると──。


「リレオンは妾の良さが分かってないのだよ」

「まったくだ、あいつは愚かなんだよ。アカリはこんなに良い女なのになぁ」

「ははっ、バーパスは分かっているではないか」


 買ったばかりのソファーで、俺の悪口を言いながら酒を飲むアカリとバーパスの姿があった。


「おいおい、お前たちは家主を差し置いてなに酒盛りしてんだよ」

「ああ、家主様のお帰りだ。お邪魔してるぜリレオン」


 最近入り浸りはじめたバーパスが、我が家のようにくつろいでいる。


「遅かったなリレオン。おお夕食を買ってきたか、さっさと妾に渡すが良い」


 最近は勝手に飲み屋に行くことも落ち着いたかと思えば……アカリのこの態度よ。


「……ほらよ」

「おお、これよこれよ。このスープにパンを浸して食うのが美味いのだ」

「おお、アカリちゃんは分かってるじゃねえか。ここの屋台のスープは美味いんだよなぁ」

「おいこらバーパス、なに勝手に俺の分のスープまで飲んでるんだよ」

「けちけちすんなよ、俺は酒を持ってきたんだぜ? ほらそこに……って空じゃねーか」

「ああ、とっくに妾が全部飲んだぞ。わははっ!」


 こいつら……まじで勝手に好き放題しやがって。

 結局俺を無視して騒ぎ始めた二人を無視して、俺は保存食の固パンを齧ったんだ。


 ◆


「アカリちゃんは変わった子だなぁ。自分のことを〝ダンジョンだ!″なんて言っちゃってさ」


 酒盛りも終わりアカリが寝てしまった後、バーパスが俺に酒の入ったコップを渡しながら話しかけてくる。


「ああ、アカリはちっとも実家のことを話したがらないんだよ」

「やっぱ訳ありか? 俺が調べてやろうか」

「……頼む。もし分かることがあれば教えてほしい」

「ああ任せとけ。俺は皮肉に貴族に・・・つてがある・・・・・からな」


 確かにバーパスには俺には無い貴族のツテがある。

 とはいえあんまり期待しているわけじゃない。

 アカリと出会ってもう4ヶ月。その間どこかの貴族がアカリを探しているという様子がまったくないのだ。

 俺たちの上位ダンジョン探索は上手く行ってるから、別に無理やりどうにかしようとは思っていないが──気になるっちゃあ気になるよな。


「アカリちゃんのことはぼちぼち調べるとして……なぁリレオン、お前はいつか【原色の悪夢】に挑むつもりなんだろう?」

「ああ。ヤツはまだ討伐されてないんだろ?」

「もちろんだ。ってかお前知らないのか?」

「何をだ?」

「【原色の悪夢】との交戦記録がここ10年無い・・・・・・ってことをだ」


 は? 10年間ヤツとの戦闘がない?

 そんなことあり得るのか?


「どういうことだ、奴は討伐されたか消えたりしたのか?」

「いや、ヤツはまだ居るよ。じゃなきゃレベル4が立ち入り禁止のままなわけがないだろう」


 確かに。ではなぜ戦闘が行われていないんだ。


「レベル4の封鎖が上手く行ってるからか?」

「それもあるが、もっと明確な理由がある。【原色の悪夢】を確実に避ける方法が見つかったからさ」


 あの忌々しい、音を頼りに襲いかかってくるヤツを回避する方法……そんなものがあるのか?


「それがあるんだよ。【原色の悪夢】が出現する際に、【案内人ガイダー】っていう固有ユニークエネミーが現れるんだ」

「ユニークエネミー……なにか特徴があるのか?」

「他と変わらない小鬼型のエネミーなんだがな、突如現れてこう──邪魔してくるんだ」


 バーパスが両手を拡げる。


「なんだそれは?」

「さあ? ただそいつが現れたら、その先には必ずヤツがいる。だから【案内人ガイダー】に遭遇したらすぐに逃げるんだ。そうすれば【原色の悪夢】に遭遇することなく回避することができるってわけだ」


 俺たちの時にはそんな妙なエネミーは出現していなかったけどな。もしかしたら見逃したのだろうか。


「だから10年前に騎士団が壊滅してからは不可侵アンタッチャブルになってる。避けられるなら無駄に犠牲を出す必要も無いしな」

「なるほどなぁ……ダンジョンってのは変なものが出現するんだな」

「誰か原理を知ってるなら教えてほしいぜ」

「だったらアカリに聞いたら分かるかもな」


 なにせ〝ダンジョン″そのものを自負してるんだからな。


「ははっ、アカリちゃんか! 違いねぇ、今度聞いてみよう」


 俺たちは笑いながら酒を注いだ杯を重ねる。

 誰かと杯を重ねるなんて、ここ10年無かったことだ。

 今の俺たちを見たら──ミーティアも笑ってくれるかな。


 ◆


 結局その日もバーパスは遅くに帰って行った。


「あのババアとの契約がまだ残ってるんだよ。だが近いうちに解約するつもりだ。そのときは──」


 バーパスはそれ以上語らなかった。

 俺も特に確認しなかった。

 これはあいつの戦いだ。決着がついた時に話せば良いんだろう。俺たちはそんな関係なんだから。


 翌日──上位ダンジョンをいつもと同じように探索し、ほどほどの成果を得て役所に戻ってくる。


「おや、なんだか役所が騒がしいな」

「本当だな。いつもより人が多く集まっている」


 役所の一角──最近では俺はあまり近寄らなくなった〝回収屋″たちが集う廃棄ダンジョン受付辺りに、妙にたくさんの回収屋たちが集まっていた。

 俺は近くにいた顔見知りの一人を捕まえて尋ねる。


「おい、何かあったのか?」

「ああ【独剣】か。いやなに、貴族様から回収屋向けに面白い高額依頼が出たんだよ」

「どんな依頼なんだ?」

「なぁに、単なる人探しだよ。ただ報酬が一千万ペルと高額なんだ」

「い、一千万!?」


 そんな高額依頼聞いたことがない。

 興味に駆られた俺は、アカリと共に高額依頼が貼られた掲示板へと近づいて行ったんだ。

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― 新着の感想 ―
 順調すぎる仕事と、すっかり溶け込んだ旧友。  不穏な依頼、アカリさん絡みかな。
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