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小さな現代ディスタジー(Dystasy)  作者: ださいやさい
9/22

長い夜のセミつくり話

夜勤初日の後半。

ホールの床の水拭き作業を終わって、少女はうつらうつらと立っている。

「お嬢ちゃん、疲れた?」

トイレを水浸し状態にさせた元凶のおばあちゃんが少女に話しかける。だが、あまりにも酷ったと、少女に敬遠されている。


「まだ1日目だ。こんな仕事、一生勤めたくはない…」

傾いて転がりそうな女の子がしばたたいたり、小声ため息をついたり、つぶやく。

「お嬢ちゃんと喋っていい?」

「私に選択肢はあるの?」

「あるとしてもお嬢ちゃんに捨てられたのよ。あるとしたらここに出会わないもの」

夜はまだまだ長い。


「最近、遺言をまとめているところだ。」

「私に軽くできる話ではない気が…」

「ご心配なく...あなたにあげるものはない。誰でも生まれた瞬間から、死の暗闇の中に滑り込んでいくんだ。年を取っていると、髪や歯が抜け始め、おねしょをするようになる。」

「…」

まともな会話すらならない。


「お嬢ちゃん、名前もマーシャンが入っているのね。マーシャン法律事務所との関係ある?」

「あるけど…私は法律と関わっていないから、法的アドバイスにできないんだけど」

「あははっ、別にお嬢ちゃんの取り分を上げないんだから」


「エンリ・マーシャンとは知り合いだ」

「誰?」

「マーシャン法律事務所を立ち上げた人間だ」

「はぁ…」

「人生において、話題にされることより悪いことがひとつだけある、それは誰にも言及にされないことだ。乗り合い馬車がマーシャン法律事務所の前を通ったら、バスが通らなくなった」

「マーシャン法律事務所はロンシャン通りだよ」

「この店、このテナントはマーシャン法律事務所だった」

「意味がわからない…」

「もう失った人生の時間と若さは去って、永遠に取り戻せない。間違った道を歩んでいたら、当然、途中で望むものに出会うことはない。」

「それはそうだね」

背中をおばあちゃんに向いてテーブルを拭いている少女が適当に調子を合わせたが、ばあちゃんの興奮した表情に気づいていない。

「もう少しで魔王の嫁になるところだった…もう少しで魔王の力を支配するところだった…もう少しだった…カラステングの一族の誇りを捨てて、翼も失って、ここに居候することとなった。さながら夢のようだった」

「カラステング?まだしもそんなとりとめがない話をしているの?そんなことは本当だったら翼くらいは見せなさいよ。」

「友に悲しみを打ち明ければ、悲しみは半分になる。」


おばあちゃんははそうではないと微笑んで首を振った。

「それに、まだおしまいではない。もし初対面の体が弱々しいおばさんが、自分が銀行強盗を陰から操ろうとしていたら、信じる?告発してくる?」

「続けて、小説のタネにも下されば、長い夜を耐えるわ」

「モンタランベール銀行ゴードロー=レ・オーブレ支店の第273号貸金庫に、魔王の印となる物が眠っているんだ」

「ごめん、おばあさん、キッチンに品出しに行くから」

「3つ集めていたら時間でさえ逆転し取り戻せる…ううん、興味がなかったら」

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