Tu Me Manques
翌日の夜。
少女はチーハウ2号店のスタッフルームでユニフォームを着ている。ユニフォームはモノクロ調で、パンダをイメージしららしい。
「牢獄の中の父よ、これは、マーシャン家の一員としながら、法律事務所を担ぎ上げない、脱法律関係者への第一歩だわ」
少女は鏡を向いて独り言する。
少女の父はラ・シテで、国会の正門前で、新しく通過された法案を抗議するために、連邦の旗を燃やして逮捕されたから、マーシャン法律事務所は事実上、廃業されている。新聞紙を通しても報道されて、一瞬で、ある意味の有名な家族となった。同じ家族だった少女は、法学でブルティーノ市立大学で1番の若さで卒業したとしても、法律関係の仕事をまったく勤められなかった。
「今日からよろしくね」
「うん…ザボさん」
少女はネームプレートに「リビア・サボ 夜のリーダー」と併記している女の人にうなづいた。
「この店で働いたスタンプは辞めた人も多くて寂しかったけど、なんと閉店の決定が急に撤回された。長く働き続いてくれたらありがたいのね。質問したいことがあったら今のうちに」
「初デビューは夜なんて、想像もつかなかったわ」
「うちは24時間営業だからな。まだ昼は爆忙しいでもないけど、すでに昼でしか働けない白髪のベテランもいたからマーシャンさんを出せない。客が少ない夜から学んでキャリアを積んでいこう」
「…はい」
2人は薄暗い光が照らしたホールに歩き回る。食べたり飲んだり人はほとんどいないが、シートの3分の一くらい人が座っている。
「キッチンを紹介する前に、一応一緒にホールを見て行こう。夜は基本、飲み物1つを頼んで、テーブルを占拠して仮眠するやつは多いから、寝ていたら必ず起こしてあげて」
「どうして?注文したらお客さんじゃないの?」
「レストランであって、ホテルではないから。それに、そこに座っていて寝た人が突然死してしまったら、うちは責任を負わないといけない」
「ならば夜の営業をとりやめたらいいじゃない?」
「24時間営業年中無休というのは、本部の方針だから、安易に変えられるわけがない。それに…」
リビアさんが邪悪な笑みを浮かべて言う。
「慣れたら楽勝な仕事だよ。このくらいの給料が浮いてくる仕事は掃除くらいよりも重労働的なことも多いから、身内から改革することなんて、まだ世の中を知らないガキでしか思いつかないのだろう」
2人がおばあさんの隣にとまった。
おばあさんが座った席で半径1.5メートル以内に誰も座らなかった。きっと近くにいるだけで彼女の匂いがするからだ。
だけど、おばあさんの髪はお店の中の誰かにもよりきれいだった。
「こんな匂いがするのなら、今日は揚げ物の油をあげないよ」
リビアさんがおばあさんに耳打ちして、またすぐ次の席に巡回する。
するとおばあさんがすぐ立ち上がって、トイレの方向に向かう。
「あのばあちゃん、これからシャワー室代わりにトイレを使うね。ちょうど後始末も教えてあげようっか」
「え?ホテルではないと言っているのに?」
「その婆さんは別格だ。何十年もこの店を通ってきた。さらにあのエルフとも知り合っているようだから」
少女はキッチンでリビアさんの紹介を聞いているとき、注文カウンターからお客さんがいたから、リビアがそっちに対応しに行った。このとき、スダッフルームから誰かがキッチンに入ってきた、どうやら夜のスタッフの3人目だそう。女の人のネームプレートに「シェレル・ミノ」と書かれている。
「ミノさんっていいのね?はじめまして?」
死んだ目をしている女の人は少女のあいさつに返事もしなかった。
「注文 揚げ鳥と肉団子の甘いプレートセット1つ、飲み物は大、ブラウン色のソーダ、氷薄め」
注文カウンターから唱えるような声だった。するとミノさんがすぐにも手洗いして、調理用具を手で扱う。
「働きすぎてとても疲れたら、早く倒れて死ねるの?」
とんでもない独り言を少女には聞こえなかったようだ。
「お待たせ、ミノさんが来たから助かったよ。彼女は手が早いから、キッチンは後でもう一度見ておこう」