天才という言葉はブーメラン
「マルガリータ一つ」
高校生っぽい少女が扉を開けて、あるバーに入って、カウンターの端っこあたりの席に座って、バーテンダーに免許を見せた。帽子をしているバーテンダーが無言でうなずいた。
「レアンちゃん?どうしてここに?高校生は確かにここに入ってはいけないはず」
少女が選んだ席の隣に、すでにサンドラさんが座っていた。
「市立大学の卒業式の時、サンドラちゃんと同じ列だったけど」
「一緒に卒業したとしても、ここは子供の居場所なんかじゃないよ」
「先月で18歳すぎたもん。大学の時にあなたたちに仲間はずれとされたことは一生わすれないのだからな」
「子供は強情だからねぇ」
「もう子供じゃないだけど!」
「まあ、一歩引いても、私より年下という事実が変わらない」
「まあいい、今回は初仕事が決まった年下が一杯おごってあげよう」
カンパイの音が消えた数分後。レアンさんがサンドラさんのハイボールの泡を見ながら聞く。
「ところで、サンドラちゃんは銀行員だったっけ?」
「そうだよ。4か月で、やっと色々と慣れてきたきがしてきた」
「いいなぁ。私も、ラ・シテに進学しようと思ったら、パトロンの話がうまく行けなかった。そして、この街に定着しようとして、今日でやっと仕事が見つかったの。シティホールに失業登記の延長申請に行く途中で雇われたんだ。話が長くなるから省略しとく」
「やっとマーシャン法律事務所を受け継いだ?」
「ううん、連邦レベルの大企業に勤めることとなった」
「へぇー、どんな企業なの?トロワヴィル?」
「同じ…と思うわ。チー・ハウって知っているのね?」
「この街に知らないやつはいないんだ。私だって馴染んでいて、ほぼ毎日、職場の先輩にチー・ハウへの電話注文が強いられて…でも、味は可もなく不可もなく、庶民の台所代わりにちょうどいい店だから…いきなりあんな企業の中間管理職?やるんじゃない!」
「その…マネジメントじゃなくて、店のスタッフ」
「あははっ…逸話として伝えられている、17歳で大学を卒業した天才少女、4か月かけて見つかった初仕事はファストフードの店員…はははっ、これは別意味での逸話だっははは」
「笑うなよ。」
「ごめんってば。私、今日、すっごく大変なことに遭ったから。レアンちゃんのことを聞いて、ちょっと爽やかになった。ありがとう。」
「って?今度はサンドラちゃんの話をシェアしてくれよ」
「お互いに晒しあう約束はした覚えがないけど?」
「思っていることをぶちまけて言い出すほうは体にいいわ。お酒もこんな時のためだよ」
サンドラさんは次のショットで違うカクテルにした。
「私のいる支店はね、庶民くらいしか客層がないけど、なぜか魔王の印となるバッジが貸金庫に眠っているんだ。そして今日は天井に切り離された痕跡があって、上の人間はそれが魔王の印の狙われた合図と判断して、明日から支店が封鎖されることとなったの。最悪じゃない?それに、その現場の第一発見者は私だけだよ。先輩たちは早退してディスコをしに行っちゃったから。結局、私が倍の報告書を書かされるんだ」
「明日から大きいキッチンで肉団子のあげ方を習う予定を大変だと思い込んだ私と比べたら、お気の毒だ。」
「セ・ラヴィ。カンパイ! 」
レアンさんが酒に酔って眠ったサンドラさんのカバンに手を入れて、クレジットカードを取った。
「勝手に伝票に印字して」
「割り勘じゃなかった?」
帽子で顔をはっきり見えなかったバーテンダはいぶかしいと思う顔を見せた。
「お酒は一杯しか飲めていなかったのだろう?その後の注文ではずっと水っていう身ぶり手ぶりをこそこそしていたのじゃない?無職にバーは贅沢だったから。この一杯はカウンセラー料として」
「確かにそうだけど。マーシャンさんも性格悪いのなぁ」
「人を言う立場か?好きだった子にこんな仕事をする姿を見せたくないから室内でも帽子で顔を隠したバーテンダーさん?▽▽学1の3回目の授業、教授は黒板をすべて消すのを3度目やっている時で、あなたがサンドラちゃんをじーっと見る顔は今と同じだ。あなたの行動パターンもバレバレだった」
「たった1年の時に週に1回同じクラスで、ここまで覚えてくれるのは、さすがに天才少女。これからご飯サンドイッチと肉団子に深く研究する天才少女だな」
「いいから早く勘定しなさいよ。それともこれから彼女を汚したいのか?させないよ」