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小さな現代ディスタジー(Dystasy)  作者: ださいやさい
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もふもふ残業デー

モンタランベール銀行ゴードロー=レ・オーブレ支店。2人の事務員が話し合っている。

「もうすぐ定刻だね。上がったらどこに行く?ヴァンディエール区のショッピングモール?」

「トルゼ=イズランドにまた新しいディスコハウスができたのじゃない?今日はこれからあそこに行くわ。」

「けどどうやって行く?魔王城の周りを通る?あそこの大通りは今月から行動機械が進入禁止となったよ。あ、お帰り、ブルーグさん。」

手に積む書類の山で顔を隠されて見えない女の人が施錠された銀行のバックドアを開けて、入ってきた。


「シティホールで結構待たされたのよ。それにオノレ大通りのラングラード川を渡るところが通行止めらしいよ。あ、これは市の給付金リスト、良かったら私と一緒に審査…」

「ごめん、私たちまた用事があるから、先に帰るわ。あ、残業しすぎないでね、今日は確かにポスト魔導回線が点検のために切られるから」

「なんで私だけ残業しないといけないの?これは元々私の仕事じゃないの!」

「ごめんってば」

ハイヒールで歩く足音がハイカウンターの後ろに響き渡る。

「もう。まったく頼れない連中だ」

女の人が自分のデスクの前に座って、書類を処理し始めた。


「うぬぬぬ…」

数十分経ったら、バックドアの外から変なささやくの声があった。

「寂しがりやのためのクッキーはいかが?」

バックドアが勝手に開けられた。狐のしっぽの生えた女の子が入ってきた。

「エレナ?クッキーを売るために私を訪ねようと思ったら、外れだ。私は買わないわよ。」

「ガールズ・スカウトのクッキー売り期間は特に終わっているよ」

「それに、いくら経営陣の親族からと言って、ここは部外者が入ってはいけない」

「そんなこと言わないでよ、サンドラ姉。どうぜ同僚に残業をさせられたのだろう?あたしも手伝うから、部外者ではなくなる」

「なんだかうさん臭い気がする、これ絶対、気のせいではないんだ」

「あははっ、ばれたか。もちろんただ働きではないのだ。実はサンドラ姉に、社会学習のファイルにサインしてほしいんだ」

「やっぱり。ティボービル西高校は古くから変わっているのね。他の高校はこんなことがなかったわ」

「そういえば、サンドラ姉はランク・ル・ブーレイ高校を卒業したっけ?」

「笑うな。選ぶときに、実家から近かったから適当に入っただけ。こう見えても私、かなりの優秀賞を得ていたわ」

「あたしがサンドラ姉のピザの切り方を見た限り、優秀賞を得た話は信じがたいけど。」

「あれは手が滑った…」

「そんなことより、書類の処理を集中して。あたしもこれをみようか。サンドラ姉ももし疲れたら、あたしのしっぽを勝手に寄りかかってみな」

突然、明かりが消えた。

「えっと…こういうときはやっぱりホタルパン」

狐のしっぽを生えた女の子が、ほたる火のように光を放つパンを出した。しかし、パンがお尻の形状で凹んでいる。

「バカじゃないの?パンをスペアポケットに入れる人は人を笑う立場がない」

「せっかく助けて上げようとしているのに」

「助けじゃなくて、サインを得るために労働での物々交換、だろう?」


天井からネームタグが落ちてきた。

「オーレリー・レイト。まさか…」

狐のしっぽを生えた女の子がそれを拾って読みだした。読み終わった瞬間、作業着姿の女の人が天井の穴から落ちてきた。ちょうど女の子のしっぽに当たった。

「もふもふなパラシュート部隊」

銀行職員の女が拍手しながら笑い出したら、2人に薄目でにらまれた。

「お姉ちゃん、大丈夫?サンドラ姉はランク・ル・ブーレイ高校卒だから、勘弁してあげてね」

「タイムトラベルしたい人の気持ちが分かってきたわ…」

「え?ランク・ル・ブーレイ高校?僕もだよ」

作業着の女の人が立ち上がった。

「もしかして、落書きの女王のブルーグさん?」

「あ、いや、その…」

銀行職員の女が視線をそらした。

「魔王城の壁まで落書きして警察の追いかけから完璧に逃げ切った、あのサンドラ・ブルーグが、まさかここに働いているのか」

「へぇー、サンドラ姉はこういうワイルドな黒歴史でもあったの?」

「だから残業はいやだわ」

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