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小さな現代ディスタジー(Dystasy)  作者: ださいやさい
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よそ者のアンコール

「メダム・マーシャン!」

ポールを持って走る女の子が、大声で呼んでも、少女は振り返るとがなかった。


風船アーチがある店の前に立たされる。風船アーチに「Tchi Hau2号店 閉店式」と書いてある横断幕が付けられている。オフィススーツを着るエルフ耳の女の子が、両手を背中の後ろで組んで、ずっと立ったままだった。


「惜しいな。この店で一番長く働いてきたのに…」

「ぜんぜん惜しくない。この数ヶ月にここで働いていたら、多くの時間は閑散で暇じゃない?きっとこういう古い建物にドライブスルーを設置できないから、どうしても採算が合わなかったのだろう。ところが、この店で一番長く働いたって言った?あの方よりこの会社に長くいる人なんかいないはず。だって社長はエルフ族だもん」

エルフ耳の女の子が明日から他店舗に移るスタッフの私語を聞いたら、気がきいて無言でちょっと笑った。


「マーシャン法律事務所に属さないメダム・マーシャン!うわわわっ」

やっと少女が声の来た方向に振ってみた。けど、ポールを持った女の子が、慣性で止まらず、ポールを風船アーチに刺さって、窓を割った。窓の割れたあとも、いくつかの風船が破った音で、何秒たっても残響が響く。

「どこからのガキか?」

エルフ耳の女の子が怒ろうとしたが、ポールを手放した髪型の乱れた女の子の胸元を見て、驚く顔が収まらなかった。女の子の付けているペンダントに反応が大きいかった。

三清道祖(さんせいどうそ)のペンダント?『東部大陸語で』どうして姉上のペンダントを持っている?どうして?」

わからない言葉の連発して、さらに自分の肩を強く揺らしてくるスーツ姿のエルフに相手して、冷や汗の止まらない女の子がエルフと目を合わせることすらできなかった。

「すみません。保証書を書くのだから、分割払いにしてほしい。うちは、ジャンヌ=アンヌ・グネルは決して食言しないから。言ったことは必ずやるから…うぅ…」

負けず嫌いのはずだった女の子が今、涙がポロポロ流れる寸前だった。

「グネル…サル女…じゃなくて」

エルフが自分の前髪を上げて、ストレートな後ろ髪をポニーテールにする。目の前の女の子がこういう髪型に反応がほぼなかった。

「扇風機のものまね?うちは扇風機なんか壊していないけど?」


「社長は変じゃない?」

「だから今の若者が…それは数十年前に伝説の女優が出演したとき、劇中でしていた髪型だよ。きっとこの店が彼女とのあいだに深い思い出でもあったのだろう」


「あ、うちを刺さるな!」

蚊を追い払う女の子が自然の成り行きに身を任せるような体術をしていた。

目の前の女の子が自分の姉が創造した「郭式拳法」を自然に使いこなしたことを見たら、エルフは無意識に自分の顔を手のひらで撫でた。エルフが見た目は数十年でも変わらない。数十年ぶりにこんな残酷な事実を再び意識してきた。

「『東部大陸語で』物是人非事事休…これは、きっと神様の思し召しだ」

エルフが髪型を戻した。見分けたとしても、もう「郭式拳法」での体の動かし方をほぼ忘れて、再現できなかった。

「閉店という決定はキャンセルで」

「だけど赤字が…」

資料ファイルに没頭してきたエルフの部下のような人が反発した。

「赤字だったら、直営ではなく、私がフランチャイズと引き継いだら、株主でも理事会でも文句ないだろう」

「社長…」

「社長と知っていたら、私の話は絶対だと分かっているのだろう?」

「(小声で)エルフのババァはボケた…」

「ババァの指示に従わないと、ババァから直々の辞令を受けてもらうよ」

顔は笑っているけど、目が笑っていないエルフが怖い。


「この街の人は、行かれているなぁ…あれ?」

これらのシーンを目撃した少女は、ようやく自分の財布がその女の子の手にあるのを見つけた。

「メダム・マーシャン、ようやく来てくれたね。ん…ちょっと中身の5千リンジー札を5,6枚とっていい?」

「いくら謝礼がいるとしても、5千リンジー6枚はあまりにも多くない?」

「マーシャンちゃん…マーシャンさん、初めてまして、良かったら私の会社に働いてみない?」

「え?これは何のいたずら番組ですか?」

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