コインランドリーと名乗ったカフェじゃないわよ
「あなたを信じていたのに…なんてこんなにも書類を書かなければならぬんだ!」
「ルールはルールです。今、おじさんが書いてあるのはE-521フォームですわ。成人障害者手当(La Allocation aux adultes handicapés)の…」
朝のコインランドリーに、少女はホームレスが作業台を使って申込書に書き込む姿を見張っている。
「じゃ先書いたあれは?」
「それはL-303フォームですわ。役所が保管しているおじさんの親族関係ファイルを閲覧するための…」
「あとこれは?」
「W…違うわ、あれは出産手当…メモを書けばよかった…そういえばD-90フォームを忘れたわ...ところで、おじさん、10リンジー硬貨を持っていません?」
「チーン」という音が鳴ったとともに、少女は洗濯機から服を取り出してカゴに移した。朝帰りの少女がキャスター付きかごを押して歩く音も、きちんと聞こえてくる。
「フードスタンプなら…というかなんでこんなところで俺を書かせた?」
「仕方ないじゃない!これこそ私のアルバイトのシフトとおじさんの酒酔い体内時計を合わせた最適解ですから」
一夜が漬けて仕事を終えた少女からの怒りの声がコインランドリーで響き渡る。
「しゃーないなぁ、隠し技を教えてあげよう」
ホームレスが回っていない洗濯機と乾燥機の前まで行って、1回ずつ返金レバーを回した。
ホームレスは力ずくでのあげく、合計20リンジーはゲットした。
「おじさんすごい!まるでランプの魔人だわ!」
「ここのマニュアルを示すシールをはがしたら異国語だよ。東部諸国の産品だから。前にデモの時よ、こういう機体を広場の真ん中まで運んで、ビデオカメラの前で解体されたのをみんながやっていたから。確かにコインの通路に一定の確率で小銭が詰まっちゃうんだね」
少女は1台の乾燥機を選んで、服を入れ終わって、硬貨投入口に入れると、数十秒待っても機会が動き出さなかった。
「だから東部諸国の産品よー」
ホームレスが拳を握って機械を叩いても済まなかった。
このとき、少女は天井に覗くと、いつの間にか昼になって付ける必要性も薄くなったつけっぱなしなライトも消えていた。
「スタッフ以外立ち入り禁止」と書かれた扉が急に開かれて、作業着のもふもふな塊が2人の前まで転がってきた。よく見たら、キツネのしっぽを生えた、コインランドリーの運営会社の服を着ていた女の子だった。
「起こしてくれてありがとう…」
女の子が寝惚け眼をしょぼつかせる。しっぽを振ったら、下に隠された半分引っ張られて半分が巻き込まれた配線コードと繋いだ掃除機があった。
「いや、誰も起こしていないわよ。あなたが勝手にスタッフルームから転がって出てきたから」
「そういえばちょっと暗くはない?」
女の子が立ち上げって、スタッフルームに入ってスイッチボックスをいじったら、洗濯機と乾燥機が起動音を合唱した。
「なんだ、東部諸国の産品が悪いのじゃなかったか」
「いっぱい働かないでね。疲れるわよ」
少女はスタッフルームの中の女の子に忠告した。
「ううん、サンドラ姉にサプライズを準備するためのなら…」
女の子がスイッチボックスのフタを強く締めたら、何かが地面に落ちてきた。
「これ、どうやって処理すればいいのだろう?」
「20リンジーは低温じゃ足りないわ…中温にすればいいのかしら?」
「いや、小娘のあなたがスタッフのだろう?...なんっ(De quessé-ça)?」
女の子が2人の前に持ってきたのは、「連邦最後の魔女 飛行魔法墜落事故」と書かれた、ほこりと汚れだらけのビデオテープだった。




