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影がどうしても美術館に寄りたいというので、ホラーは影と一緒に街にある美術館まで歩いて移動した。
街の中を歩いている間、いろんな人たちとすれ違った。ホラーと同い年くらいの少女が道端に派手な格好をして立っている。ホラーがなんとなくそんな少女のことを見ていると、ふとその少女が顔を上げてホラーの顔をじっと見つめた。その目にはとても攻撃的な意志が宿っている。
なにか嫌なことをされるかも、と思ってホラーは警戒したのだけど、少女はなにもホラーにしてはこなかった。ただじっとここから早くいなくなれ、と言いたそうな目をしてホラーのことをじっと見ているだけだった。ホラーは早歩きになってその路地を通り向けた。
美術館はとても空いていて、ほとんど誰も館内にいなかった。だけど展示されている絵画はどれも素晴らしいものばかりで、なんでもっとみんなこんなに素敵な絵を見にこないんだろう? と影は不満そうな顔をしながら言った。(でも絵画を鑑賞し始めるとすぐに影の機嫌はとても良くなった)