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遭遇

 林道を越え、山道に入った。

 山道と行っても入口付近は比較的整備されており、ギリギリ馬車は通れる。

 オオモリとソウタは警棒の先にナイフを装置し、馬車の通行に邪魔な枝を払いながら進んだ。

 時折現れる倒木や、落石と思われる岩も二人は手際よく除去していく。


 しかし、進むにつれて道は次第に細く、荒れていった。

 そろそろ馬車で進むのは困難だとオオモリが提案しようとした時。


 ギャギャギャギャギャギャギャ


 凄まじい獣の声が響き渡った。そしてバサバサと草を掻き分け争うような音がする。

 警戒体制を取るオオモリとソウタ。それと同時に馬車が止まり、三人の教会員が出てきた。

「危ないですよ!中に入って!」

オオモリは声を潜めつつ叫ぶように言った。

「ネズミかもしれません。様子が見たいです」

 忠告を無視するように三人は藪を掻き分け、声の方に向かって行く。

「だから、危ないって・・」

 そう吐き捨てるも、彼らが止まらないのでソウタはやむを得ず先頭に回って進んだ。


「これ以上はダメです!命の保証は出来ません」

 ソウタが手を広げ、進行を止めた。

 その位置を過ぎると藪が疎らになる。

 これ以上進むと、その先で争っている者達に気付かれ、とばっちりを受ける可能性があった。

 そして、それから三人を守りきるのは困難だった。


 その先には、問題の鼠と熊が争っていた。


 鼠は体調50cm程度。猫のような大きさだ。それに対する熊は立ち上がれば成人男性ぐらいの大きさ。熊としては大きい方ではないが、分厚い筋肉と爪、牙は十分驚異だ。

「万一熊が来たら全力で逃げてください。私とソウタで食い止めますが、どれだけ持つか分かりませんので」

 オオモリが言った。武装し、訓練と実戦経験をつんだ二人がかりでも追い払うことすら困難だ。それだけ熊と人には戦力差がある。

「お願いします。でも、そうはならないでしょう」

 彼女は二人に目も合わさず言った。さも、目の前の鼠にしか興味が無いといった様子だ。

「鼠が勝つとでも?!」

 そう言うソウタに対し、彼女ひ人差し指を口に当てる仕草をし、前方を指差した。黙って見てろと言わんばかりに。。


「ギギ!ギギ!ギギ!」

 鼠はまくし立てる。

「ゴアッ!ガーッ!」

 その何倍も野太い声で熊が吠え、一歩前にでる。

 鼠はその分後退した。

「ギギッ!」

 鼠は熊から視線を外さないように、左右に回りこもうとする。それに合わせて熊も向きを変える。

 熊を中心にしたコンパスのように正確に一定距離を保ったまま、鼠は回りながら声で威嚇を続けた。

 

 このまま膠着するのかと思った頃。

「ギギギギギギギギギッ!」

 鼠が熊に対して突進する。 

 熊は難なく片手で払いのけた。鼠は10mは飛ばされたのではないか。

 しかし、すぐに起き上がり、また突進。


「あんなに動けるなら逃げるチャンスなのに・・」

 ソウタが呟く。

「静かに!」

 更に小声でユーリが窘めた。ソウタはバツが悪そうに軽く頭を下げたその時。


「ゴアァァァァッ」

 熊が雄叫びを上げた。

 ソウタが振り返ってみると、熊の頭上にしがみ付いた鼠が、耳に嚙みついている。

 いつの間に飛び乗ったのか?どうやって?ソウタは一瞬混乱したが、すぐにその理由が分かった。

 振り落そうと立ち上がった熊の首にも別の鼠が噛みついている。おそらくこれが最初の鼠だ。

 

 鼠は二匹いる!

 いや、三匹目を目視できた。脇腹に噛みついている。そして脚にも・・・

 

 バサバサバサバサバサッ


 激しく藪を掻き分け、更に数匹の鼠が合流した。


「もっと集まってくるでしょう。そろそろここも危険です」

 教会の一人がユーリに進言した。ユーリは頷くと、ソウタ達に『戻ります』とだけ伝え、踵を返して馬車まで向かった。


 ソウタとオオモリは互いに目を見合わせ、ヤレヤレと首を左右に振った。


「30秒だな」

 馬車に戻るとオオモリが言った。

「あの鼠と交戦になったら、30秒以上はかけられない。仲間を呼ばれる前に仕留める必要がある」

 ソウタは黙って頷いた。


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